おっさんとJKが、路地裏の大衆食堂で食べるだけ

椎名 富比路

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第四章 文化祭と秘密とJK

第53話 ポップコーンの謎フレーバーはワナ問題

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「あたしもパパが吸うから、大丈夫なの。でも他人が吸うのは、悪いけど許容できないかな。ゴメンね差別なんだけど」

 大将も、休憩しているときは吸っていた。

 未だに分煙という概念がない店は多い。
 馴染みの大衆食堂が珍しいのだ。あそこは時間制である。
 昭和チックな店は、そこが売りなのかも知れなかった。だから仕方ないのだろう。

「謝ることなんてないさ。別の店に。おっと」
 見知った看板を見つけ、孝明が足を止める。

 
 ちゃんぽん麺のチェーン店だ。



「おお。困ったときはココに限るな。オーダーしたらすぐ出てくる。案外、店のサイクルも早くて席がすぐに空く」
「いいねー。野菜たっぷりでお腹にも優しいよっ!」

 善は急げ。二人は店に入る。

 ちゃんぽんを味わい、気を取り直して映画館へ。

「デートでチェーン店とか、ゴメンな」
「コメくんと一緒だったら、カップ麺でもおいしいよ」

 思わず、孝明は琴子を抱きしめたくなった。往来でなければ、迷わずそうしただろう。



「ポップコーン買うね」
 琴子は売店に並ぶ。

「あ、このイチゴキャラメルフレーバーって、食べてみたい!」
 子どものようなことを、琴子が言い出す。実際子こどもだが。

「ポップコーンって塩味だぞ。そんなフレーバーなんて入れたら、甘塩っぱくて飯が食えなくなる」
「それもそうか。じゃあ、あの生ハムメロンフレーバーって?」

 微妙なチョイスだ。近日公開のギャング映画仕様のフレーバーらしい。

「欲しいなら買ってみろ。で、後悔するがいい」

 琴子はフレーバー付きのSサイズをオーダーした。
 
 孝明はバターなしの塩を保険として購入する。

 フレーバーポップコーンを一口含んだ瞬間、琴子がフリーズした。
 映画情報を宣伝するアニメキャラクターばりに、かくかくした動きになっている。

「甘さが際立ってます」
「だから言ったのに」

 孝明も、マズイと分かっていて一口もらう。
 味を確認し、二度と手を付けない。


「でも、もったいないから捨てません!」

 無理してでも食べるつもりだ。

「ちょっと分けろ。手伝うから」
「すまんのう」

 自分の塩味と、琴子のフレーバーを交換する。

 確かに、人間が口にしていい味ではなかった。
 不味くはないが、ポッポコーンが出していい味わいではない。

 その後の恋愛映画も、微妙の一言だった。

「やるせなかったね」
「どっちが?」
「どっちも」

 映画もポップコーンも、最終的には甘ったるいエンドというオチである。

「食い直そう」

 やはり、自分たちは冒険しない方がいいらしい。

 いつもの大衆食堂に、気がつくと足が向いていた。 
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