おっさんとJKが、路地裏の大衆食堂で食べるだけ

椎名 富比路

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第四章 文化祭と秘密とJK

第68話 飲食店経営に調理師免許はいらない問題

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「ダンナの方は? 料理が苦手な女は嫌いか?」
「いや、別に。メシマズは簡便だが、最低限作れるならいい。オレも作るし」

「あんたはコダワリがないんだったな」
 何も言わなくても、大将はラッキョウのビンにトングを伸ばす。孝明の皿に数個のラッキョウを追加した。
 
 どうして、孝明がラッキョウを欲しがっていると分かったのか。


「ところでよ。お前ら、オレの店継ぐか? 食いっぱぐれそうならいつでも言えよ」


「ホント? あたし、行列ができるお店にできるかな?」

「いらねえよ行列なんて」
 洗った皿を拭きながら、大将は手をヒラヒラさせた。
 

「飯を食いに来たヤツらを並ばせるなんてな、一流の店にやらせておけばいいんだ。オレは別にいいんだよ。好きなときに食いに来てくれりゃあ」

 大将らしいポリシーだ。

「でもいいの? あたし、調理師免許なんて持ってないよ」
「調理師免許なんて、いらねえよ」


 飲食店を開業する際に必要な資格は、食品衛生責任者と防火管理者の二つだ。
 それを持っている人が、店に常駐していればいい。


「免許が必要なのは、給食センターとか、社員食堂あたりだな」
「そうだったんだ! それじゃあ、あたしもすぐにお店ができる?」
「ああ。学生でも取れる」

 場合によっては、未成年でも資格は取得できる。



「二万」



 琴子の期待を、孝明はブチ壊す。

「え?」


「講習代だよ。食品衛生責任者が一万円。防火管理者は七五〇〇円。振込手数料や発行代を含めたら、ざっと二万は飛ぶが」


「うう、けっこう掛かるんだね」

 講習さえ受ければ必ず取れるので、文句は言えない。

「ごちそうさま、またねコメくん」
 琴子が店を出た。

 孝明も会計を済ませようとしたのだが。

「アンタ、記者さんなんだな? フードライターだって」
 大将の口調には、若干の重みがある。



「ああ。まあな」
「俺の事を記事にするのかと思ったぜ」
「事情は、聞いてる」

 大将は昔、大きなレストランで働いていた。そのことを言っているのか。

「そうか。この店は、取材対象になりそうか?」
「どちらかというと、人に教えたくない店だな。ついでに言っておくが、ここは取材エリアじゃないから」
「そうか。だったらいいんだ」
「けど、気にはなってることがある」

 この店の営業時間は、朝七時半から十時と、昼の十四時から十九時になっている。
 その時間外に何をしているのか。
 ちょうど孝明が作業をしている時間帯なので、どうしてもチェックしに行けない。

「知りたいか?」
「できれば」


「八時半くらいに来てみれば、分かるよ」
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