失業暗黒騎士、勇者の姪である姫が作った街の門番に転職するも、姫様のほうが明らかに強い

椎名 富比路

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第三章 元暗黒騎士、副業する

第32話 副業、決定(ドラゴン姫の見張り)

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 俺は、ジリーク姫の監視を言い渡された。

 ジリーク姫は、ここに拠点を置く。誰かが、見張っていなければならない。

「見張りを、俺が?」

「はい。ボディガードではありませんから、気楽でしょ? 一度倒したのですから」

 そうだけど。

「同じドラゴン族の、ピーザンじゃダメなのか?」

「あたいだと、寝返っちゃうかもだろー? あたいだって、ドラゴンの生活に未練がないわけではないんだぞ。十分な身分を渡されたら、簡単に裏切る可能性だってあるんだぞ」

 同じドラゴン族だからこそ、協力関係になる可能性がある。

 種族として姫がコケ下ろしている上で、強い人材でなければ、姫の相手は務まらない。

「お前に限って、身分を与えられてヒナ王女の元を離れる気配は感じないけどな」

「今のところはなー。あたいだって、リベンジの機会を伺っているんだぞ。姫と、共闘するかもだぞ」

「二対一で戦うようなやつじゃねえよ、お前は」

 いつでもヒナ王女を戦う準備はできているといえど、だ。どちらかというと、姫さえも敵に回すだろう。王女を倒すためなら。

「あなたが適任なのです、モン・バン」

 なるほどねえ。
 
「ジリーク姫、あなたもそれでいいですよね?」

「ええ。わたくしを倒したシモン・セルバンデスなら、申し分はございませんわ。しっかり監視なさって」
 
 
「よかったじゃないですか、モン・バン。役割が、決まりましたよ」
 
 俺が呆然としている間にも、ジリーク姫は配下に指示を送って荷物を持ってこさせていた。塔の領域ギリギリの場所に、もう一つの塔を建てている。明らかに、ヒナ王女を意識していた。

「なんで、そこまでデカい塔が必要なんだ?」

「監視塔ですからね。【おふぃす】とも、いいます。これも、異次元の技術ですわ」

 塔の内部は、背広を来たドラゴン族が、いそいそと書類の整理をしている。

「今後外交が必要なときは、わたくしを通してくださって?」

「もちろんです。私では角が立ちますからね」

「では、よろしく」

 ジリーク姫が、ヒナ王女と握手を交わす。あれだけ嫌っていたはずの、異形の怪物と。

「あんた、それでいいのか?」

「なにおっしゃっていますの? 実質、間接的にこちらの文明を拝借できるのですわよ。まったく問題ありませんわ」
 
 利害さえ一致すれば、それでいいってわけか。

「書類を作って、こちらに所有権を許可していただければ、こちらはヒナ王女を倒さなくても構わないのです」

 合理的な、考え方だ。

「で、最上階がやけにスッカラカンだが? ここにはなにが入るんだ?」

「決まっているではありませんか。愛の巣ですわ」

「……え」

「あなたは、わたくしの主夫になるのです」
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