失業暗黒騎士、勇者の姪である姫が作った街の門番に転職するも、姫様のほうが明らかに強い

椎名 富比路

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第三章 元暗黒騎士、副業する

第35話 条件付き結婚

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 今回の戦いで、俺に至らない部分があるとわかった。
 こんなことでは、ヒナ王女には届かない。
 フィジカル面に至っては、まだまだである。

「シモン・セルバンデス。それは、侮辱ですの? あなたは、わたくしに勝ちました。それでは、不満であると?」

「大いに、不満だね。あれは、武器の強さだ。異次元から取り寄せた、とっておきの武器ばかりを使った。本当は、使いたくなかった」

 できれば自分の手で、ジリーク姫を倒したかった。今の俺では、武器頼みになる。
 
「俺は、弱い。つまり、もっと強くなれる」

「ええ。あなたには、伸びしろはありますわ」
 
「特にプロテクターに変換できるあんたのオーラは、興味深い」

「あれは、竜族特有のスキルですわよ。魔族で習得できるかどうか」

「擬似的なものでいい。使えるようになれば、まだまだ強くなれる」

 せめてあのオーラを極められるまで、強くなりたい。

 これが、初夜の条件だ。

「承知しました。明日からガッツリ鍛えますので、そのおつもりで」

「ありがとう。ジリーク姫」

「ジルと呼んでくださいませ」

 体をねじりながら、ジリーク姫がおねだりをする。

「ジル?」

「ジリーク姫なんて、他人行儀な。わたくしは家族から、ジルと呼ばれております。それで」

 ジルは他の者達にも、そう呼べと告げた。
 
 自分がここの家族になったと、認めたわけか。
 
「わかった、ジル」

「はひゃあ」

 俺が呼ぶと、ジルは角まで赤くした。

「俺もモン・バンと名乗っている。モンでいいからな。じゃあ、おやすみジル」

 今のうちだ。俺はそそくさと、退散しようとした。

「お待ちなされませ、モン」

 俺の足は、強固な縄によって止められる。
 縄の正体は、ジルのシッポだった。

「いい感じにお話を進めて夜伽を回避、とはそうは参りませんわよ。モン。据え膳食わぬは男の恥、と申すではありませんか」

「それ、女性のセリフかよ?」

「問答無用。ささ。モン、参りましょう」

 口笛を吹きながら、ズンズンとジルが俺を外へ引っ張っていく。
 
「待ってください、モン・バン」

 俺たちを、ヒナ王女が呼び止めた。

「出ていく前に、一つだけ教えて下さい。あなたはどうして、ジリーク姫との勝負を買って出たのです?」

「……姫に勝負を挑まれたときのアンタ、すげえ顔していたぜ」

 あのときのヒナ王女は、描写しづらいものだ。

 世界すべてを巻き添えにしてでも、ジルをぶっ殺そうと思っていたに違いない。

「アンタに任せたら、塔がぶっ壊れちまうと思ったからな。俺が代理を務めたってわけだ。納得したか?」

「ホントに、あなたは面白いですね。では、おやすみなさい」

「おう」

 もう少し話をして、ジルのスキを伺いたかったのだが……。


(第三章 完)
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