百合王子! ~嫁候補の美少女二人が裏で付き合っていたが、オレは一向に構わん!~

椎名 富比路

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第二章 発足、百合テロ同好会

百合王子、絶体絶命?

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 オレが写真に夢中になっていると、魔物の豪腕が襲ってきた。

「うご!」
 腹に、いい攻撃をもらってしまう。
 オレは、天井へ叩き付けられた。
 勢いのまま、ゴミ山へ転落する。

「フハハ、ワシを舐めるからこうなる!」
 魔物が勝ち誇っていた。こちらがほぼ無傷なのも知らずに。

「いってえ」
 背中の痛みを治癒魔法で和らげ、頭を振る。

「なんと。まだ息があるのか。しかも、たいして利いていないだと? どこまで頑丈なのか」

「あいにく、丈夫なだけが取り柄でね」

 オレは防御や治癒、精神攻撃なら得意だ。
 瞬間的にコーヒーの雲で防御障壁を作り、身体全体を覆ったのである。
 おかげで、軽く脳が揺れただけで済む。

 とはいえ、何か打つ手はないか?

 オレには、もっともらしいフィニッシュホールドがない。
 浄化が専門で、相手を殺すつもりがないからだ。
 ジワジワと弱らせて、倒すしかないのか?

「王子、無事!?」

 ソフィとツンディーリアたちが、空き教室に入ろうとした。

「生徒たちの避難は整いましたわ! ついんずさんがついてくれています!」

 でかしたぞ、ついんずよ。

「なんなのコイツ!」
 入り口で、ソフィが後ずさりする。
 しかし、学校を脅かす敵と認識したのだろう。恐れを振り払って中へ。

「今、助けるわ!」

「来るな!」
 オレは手で制しようとしたが、遅い。

「どういうこと? 何があったの?」
 ステッキから光線の刃を発生させて、ソフィが身構える。

「ただならぬ気配を感じますわ!」
 魔法の杖となったステッキをクルクルと回し、ツンディーリアも戦闘モードへ。

「コイツは、キミらに用事があるらしい!」
 ソフィらのを見るや、魔物の目つきが変わった。 

「貴様、ヴェルデの血筋か! それに貴様は、ミケーリの!」
「やはり、ソフィの家族を知っているのか?」

 尋ねると、オレの顔を見ながら魔物は口を歪ませる。

「忘れぬぞ、その自信に満ちた瞳! ヴェルデとミケーリの血族だ! 間違いない! 二人はまさに生き写し!」

 なるほど。ソフィとツンディーリアが結ばれるのは必然だったと。

「あの魔物の狙いは、私たちだとでもいうの?」

 それについては、オレも聞きたいことがあった。

「こういうことだ」
 例の写真を、オレは二人に見せる。

「わたくしたちに、そっくりですわ!」
「おばあさま……ではないわね。こんな古い写真が、存在していたなんて」

 二人も、写真の人物に見覚えはないようだ。肉親であることは間違いないようだが。

「写真の中にいる二人は、この魔物を封じて力尽きた。おそらくキミらの親族か何かだろう」

 もっと調べる必要がある。しかし、今は魔物の退治が先だ。

「となると、この魔物は私たちにとって、因縁の相手というワケね?」

 だろうな。

「会いたかったぞ、我が仇! 封じられた恨みを今こそ晴らす!」

 怒りを増幅させて、魔物がソフィらに突撃する。

「望むところよ! 覚悟しなさい!」

 ソフィと魔物が、斬り合いになった。

「ほほう、昔はそんな器用な技は披露せなんだ。ますます手強くなったなヴェリエの子孫!」
「くっ、強い!」
「魔王のペットの座を、あのファフニートと争った身よ」

 その魔物の名は、以前のヘンタイマント事件でも出てきたな。

「魔王サマが『ファフは虫が食えるから、部屋がキレイに保てる』という理由だけで、ファフに後れを取ってしまったが!」

 心底、どうでもいい。

「だが、実力は伯仲していた。むしろ、ワシの方が凌駕していると言ってよかろう!」

 強烈な横凪ぎによって、ソフィが弾き飛ばされる。

「ソフィ、離れてください!」
 そのスキに、ツンディーリアが火力弾を形成しようとした。

「やめろツンディーリア! キミが攻撃したら、教室が吹っ飛ぶ!」
「ではどうしろと!?」

 足下に向かって、メタルラックの舌が伸びる。

 小型の火炎弾をラックに撃って、ツンディーリアは跳躍、避難した。
 しかし、集中していた魔力は霧散してしまう。

「ここは、任せろ!」

 オレは二人の前に立つ。

「貴様の相手は、このオレだ!」
 コーヒー色の煙を放出し、魔物の行く手を遮った。

 煙に阻まれ、魔物がバウンドする。

「邪魔するな若造! これはワシと女共との戦いなるぞ!」

「百合を穢すヤツは、許さん! 【百合三昧リリー・サマディ】!」

 コーヒー色のシャワーを、魔物に浴びせた。

「ぐう! この程度!」
「しぶといな。では。【百合紀行リリー・ジャーニー!】

 煙を直接、魔物に吸わせてやる。

「けえーいっ! 邪魔だ!」
 オレの必殺技を、魔物はことごとく弾き返す。

「この程度の魔法など……なに、剥がれぬ!」

 コーヒーの色をした雲に囲まれ、魔物は小さくなっていた。
 束縛を振り払おうとして、魔力を大量に使ったせいである。
 煙に身体を拘束されて、身動きも取れていない。

「ごおお、おのれええ、バルシュミーデの子孫めえっ! エラそうなハリボテ王国の分際でぇ!」
 煙に巻き付かれて、魔物がもがく。

 勇者と共に世界の危機を救ったバルシュミーデ国は、コイツがいた時代から方々で恨まれていたようだ。

 確実に、技は利いている。
 が、致命的なダメージは与えられていない。
 コーヒー雲の拘束も、いつまで続くか。


「なあ王子、何をためらってるんや?」
 メイ、いやメイディアが、オレの隣に立つ。
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