百合王子! ~嫁候補の美少女二人が裏で付き合っていたが、オレは一向に構わん!~

椎名 富比路

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第三章 魔王襲来! 百合王子のドキドキ試練!

尊い兄妹

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 今日は、球技大会である。
 一年生の種目は、ドッジボールのクラス対抗戦だ。

 やる気なさそうに、メイディアは適当にホイッスルを吹く。

 オレも、「球技で団結力が身につく」とは思っていない。
 他の生徒も同意見だろう。単にダルいだけだ。

 ティファのクラスは、ツンディーリアのクラスに大差を付けられて敗退した。

 オレのクラスは勝ち残り、決勝に上がっている。
 
 正直、オレも休みたかった。

 しかし、我がクラスの女帝が黙っていない。

「さて、この調子でガンガンいきます!」

 ソフィが、一人だけ張り切っている。
 ツンディーリアと試合できるのがうれしくてしょうがないらしい。

「お兄ちゃーん」

 早々と敗退したティファが、見学スペースからトーモスに手を振る。

「任せろティファ。お兄ちゃんが華麗にシュートを決めてのわあ!?」

 言ってる側から、トーモスが場外へ。何をやっているんだか。

 ライバラか、撃ってきたのは。
 あいつ、トーモスを目の敵にしていないか?
 同じフード業界だから、思うところがあるのかも知れない。

 それにしても、我が妹にあんな尊い友垣がいるとは。
 将来有望だな。百合の優等生の称号を授けたい。

「おいユリアンッ! 前、前!」

 向かいの外野から、トーモスがオレを呼ぶ。

「んあ?」

 オレの眼前に、ドッジボールが飛び込んできた。
 当たっても顔面セーフだが、鼻を撃つのは避けたい。

「おっと」

 両手にすかさず、コーヒー色の雲を召喚した。正面から受け止めて、ボールを掴む。

「オレにボールを投げたのは?」
「ライバラだよ!」

 向かいのコートに視線を移す。

 ライバラが、無表情でボールを投げたポーズで固まっていた。
 相当強い力で投げたらしく、硬直したまま動かない。

 味方側の外野にいるトーモスが、ライバラを指す。
 向こうの陣地にはもう、ライバラしかいない。
 他の生徒は外野に回っていた。

「やるなぁ、ライバラ。しかし、オレを敵に回したことを後悔させてやろう!」
 アンダースローで、オレはボールを投げ返す。

 両足を肩幅より大きく広げ、ライバラは腰を低くした。
 あれは、居合いの構えである。

「気をつけろ! みんなそいつでやられたぞ!」
 トーモスからアドバイスが飛ぶ。

 その刹那、ズンとオレの腹に重い一発が。

 ゴムボールをキャッチした瞬間に、投げ返したのか。早いな。

 今のは、カバーしきれなかった。
 オレの足下に、ボールが跳ねる。

「むう、見事だ。しかし!」

 そんなことくらい、オレは計算済みだった。その場を跳躍する。「背後にいる味方」が、球を捕りやすいように。

「ソフィ、今だ!」

「やあっ!」
 足下に向けて、ソフィがボールを超低空に放った。

 ライバラは居合いの姿勢で硬直している。
 回避は不可能だった。
 爪先にボールが当たり、ゲームセット。

「いやあ、見事なカウンターだった。諸刃の剣とはいえ、追いつけなかったぞ」

 オレは、ライバラと手を握り合う。

「そちらこそ。二人いたことはわかっていたが、対応は難しかった」

 ライバラの方も、強い力で握手を返す。
 細いながら力がある上に、骨張っていた。
 
 授業が終わり、昼食の時間となる。

 オレたちは学食に向かうが、校庭にライバラがいたのを発見した。

「すまん、先に行っていてくれ」
 ベンチに一人座るライバラに、オレは近づく。

「何の用だ?」
 頭や手で覆い、ライバラは中身を隠す。

「いや、特には。それは弁当か?」

 ライバラの手には、弁当箱が。食べ盛りの少年が摂取するには、小さかった。

 いわゆるキャラ弁というヤツで、海苔で兄と妹が描かれている。

「妹の手作りだ。変だろ? 俺はいいというに、渡してくるのだ」

 卑屈なライバラの言葉に、オレは首を振った。

「とんでもない。簡素ながら、作り主の丁寧さが窺える。実に尊いぞ」
「バカにするわけでは、ないのだな?」

 なるほど。からかわれると思っていたのか。

「この弁当を笑うヤツらは、相手にしなくてよい。人の愛情をおちょくるヤツは、その程度の人間だ」
「……感謝する」
「長居すると食べづらいようだな。失礼する」

 オレはライバラに背を向けて、学食へ。
 
 全工程が終わり、終わりのHRが始まった。

「皆さん、次回はいよいよ、中間試験でぇす」

 試験は、班ごとに行動する。

 ダンジョンに潜り、指定の魔物を倒すこと。

 マップを記載する係、ワナの解除係、アタッカーなど、生徒にはそれぞれ役割がある。

 この試験をパスできないと、補習を受けることになる。
 試験休みが潰れてしまうのだ。
 また、「成績下位のモノは、部活動謹慎」という支障が出る。

 オレ、トーモス、ソフィが同じ班となった。万全ではないか。

 この試験は、クラス対抗戦ではない。
 有事の際は、よそのクラスと協力してもよいのだ。
 むしろ勝手判断は、生存率が低くなるため減点対象になる。

 我々はツンディーリアたちと共同で、ダンジョン試験を攻略しようとなった。

「本格的な戦闘訓練って、初めてじゃない?」
「うむ。緊張してきたぞ」

 試験内容は、難しくしているという。
 魔族の出現に伴い、実践力が必要だと学校側が判断した。
 生半可ではないだろう。
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