百合王子! ~嫁候補の美少女二人が裏で付き合っていたが、オレは一向に構わん!~

椎名 富比路

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第三章 魔王襲来! 百合王子のドキドキ試練!

ドキドキ中間試験!

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 中間試験の会場は、山奥の洞窟である。

「さっそく合流できたな」

 我らメンバーは、ソフィ、ツンディーリア、ついんずだ。

「まさか、お前まで参戦してくれるとはな」

 最後のメンバーは、なんとライバラである。

 道中の山道は、獣道と形容してもいいくらい鬱蒼としていた。

「くるぞ!」
 先頭を歩くトーモスが、土着モンスターとエンカウントした。

 いっても、ポヨンポヨンスライムが跳ねる程度だが。

「戦闘力は皆無だが、油断するな。集団になると窒息攻撃をしたりするからな」
「任せろ!」

 武器を手に、ソフィやトーモスが大活躍する。
 オレのアドバイスなど、必要ないな。

 ちなみに、ツンディーリアには戦闘を自粛してもらった。
 森の中を抜けるので火を放てない上に、彼女自身もまだ火力調節がうまくいかない。
 広い平野ならともかく、狭い屋内で戦えば山を吹き飛ばしかねなかった。

 この戦闘訓練で、何かを掴んでくれたらいいが。

 オレも、トロントやコウモリを百合魔法で眠らせて無力化する。

「後ろですわ王子!」
 いきなり、オレの横っ面めがけてツンディーリアが杖を振り上げた。

「うわっと!」

 オレがしゃがみ込むと、杖の先端が何かを打ち抜く。

「カッキーン」と軽快な音が鳴って、物体が吹っ飛んだ。
 そのモンスターは木にぶつかって、目を回す。

 よく見ると、角の生えたウサギだった。

 後方からオレのノドをめがけて突撃してきたらしい。


「危機一髪でしたわ」
 腕で汗を拭い、ツンディーリアがやりきった顔をする。

 オレは全身薄いコーヒー雲で膜を作っているから、ダメージは気にしなくてもいいのだが。
 とはいえ、殴りメイジか。やるな、ツンディーリアも。

「ナイスよ、ツンディーリア」
「わたくしだって、やればできますわ」

 ハイタッチで、ソフィとツンディーリアがお互いをたたえ合う。

「お見事ですが、ツンディーリア王女。いつの間にお二方は仲良くなられたので?」
「へ?」

 ついんずは、二人の事情を知らない。
 実は、両者が陰で交際をしているなど。

「あ、いや。部活を立ち上げたでしょ? その間は、休戦しましょとなりました」
「そ、そうですわそうでしたわ! はははは」

 乾いた笑いを浮かべて、両名はごまかす。

「ちょっと待ってくれ。なんか強そうなのがいるぜ!」
 トーモスの前に、フクロウの頭を持ったクマが出没した。

「オウルベアだ!」

 四体のオウルベアに、囲まれてしまう。

「結構、大物だな」
「それにコイツら、授業で習ったよりデカくね?」

 トーモスの言うとおり、眼前のオウルベアは普通のクマサイズではない。まるで岩の壁だ。

 大木のような腕が、振り下ろされる。

「甘い!」
 オレは、特大の雲を展開した。

 攻撃の勢いが強いほど、敵は大きくバウンドする。

「お待たせだ、ツンディーリア!」
 大きく打ち上がった怪物を指さす。

「はい、でやあああ!」
 待ち焦がれていたとばかりに、ツンディーリアが杖に魔力を流す。
 バ火力ブレスを、上空のオウルベアに打ち込んだ。

 チリ一つ残さず、魔物は燃え尽きる。

 だが、敵さんに怯む様子はない。むしろ、仲間を撃退されて興奮していた。

 一体が、ついんずに飛びかかる。

 オレに向かってくるのは、二体だ。

「いい夢を見させてやろう。魔物も百合の夢を見るのかな?」

 精神操作を喰らわせるため、オレは魔力を練り込む。

 しかし、オレの手から百合魔法が放たれることはなかった。

 ソフィが、一体をカウンターで仕留める。

 もう一体は、白目を剥いてドシンと前のめりに倒れた。

 オウルベアの背後には、刀を収めたライバラが。

「無事か?」
 小さい声で、ライバラが呼びかけてくる。

「問題ない。強いな。太刀筋が見えなかった」

 残るはトーモスたちだけだ。

 ついんず妹のイモーティファが、オウルベアを投げ飛ばす。
 兄トーモスが長剣で、落ちてきた魔物の心臓を突き刺した。
 危なげなく、ことは終了する。

「一丁上がりだ」

「ですが、どの魔物も瘴気が強すぎます。食材にはなりませんね」
 ティファは、もう食べることを考えていたとは。
 
 二時間ほど歩いて、ようやく目的地に辿り着いた。

「お疲れさまでしたぁ。うわあ、なんかボロボロじゃないですかぁ」
 担任のポロリーヌ先生が、オレたちを労う。

「他のクラスは、みんなアイテムを取ってきましてぇ、お昼ごはん中でぇす」

 あとは、オレたちだけらしい。

「質問だ先生。生徒の戦闘レベルに応じて、放った魔物に違いはあったりするか?」
「ええ? どういう意味でしょうか?」

「実は」と、オレは事情を説明する。

「それは大変ですねぇ! 確認しておきますよぉ!」
 ポロリーヌ先生が、他の教師と相談し合った。

「さすがに安全面も考慮して、中止にしましょうかぁ?」
「いや。最後までやり遂げるつもりだ」
「そうですかぁ。でも、無理はしないでくださいねぇ。先生、ここでみんなの帰りを待ちますのでぇ」

 言いながら、先生の腹が鳴る。

「ごはん食べておいてくれ、先生。やりにくい」

 先生がこんな調子なので、オレたちは先に昼休憩を挟んだ。
 さすがに、疲労もたまっている。
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