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第三章 魔王襲来! 百合王子のドキドキ試練!

百合王子、ダンジョン攻略

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「凄まじく、雰囲気が出ているな!」
 腕を組みながら、ダンジョンの入り口に仁王立ちした。

 オレたちが入る迷宮は、いつからあるかわからない古代遺跡である。大木の根に入り口があった。
 といっても、さして貴重な財宝や文献が遺っているわけでもないらしい。古代人の墓でもありそうな外見だが。

「以前は、ただの観光地だったそうですよぉ」

 大昔に住んでいた魔法使いの住居に、大木が根付いただけ。
 ポロリーヌ担任が言うには、そんないきさつがあったとか。
 いわゆる廃墟だな。

「この奥に宝箱がありまぁす。魔法装備や魔法の力が籠もった宝石・鉱石があるので、取ってきてくださぁい」

 この古い洞窟には、魔道士の隠し財産が山ほどあるという。
 種類は、自身の魔力や魔法の熟練度、戦闘経験などで変わるらしい。
 ウルトラレアがあるとか。

 他の生徒の様子も伺う。

 大半の生徒が「ハズレア」、いわゆるハズレのアイテムを手にしていた。
 中にはウルトラレアの【ミスリルの鉱石】や【聖剣】が出たと、喜んでいる女子もいる。
 しかし、そんな超貴重レアなどはめったに出ないらしい。
 期待しても損をするだけか。

「何が出るかは本人の魔力と運次第ですぅ。でも、運を味方に付けることも、訓練の一環かとぉ。だからぁ、宝箱を設置した教師のせいにするのはよくないと思いまぁす!」

 おそらく、クレームが後を絶たなかったのだろう。

「うむ、承知した。とにかく行くか」

 何が出るかわからないアイテムに一喜一憂しても仕方ない。

「他の生徒は、下山させておきますよぉ」
「よろしく頼む」

 ポロリーヌ先生に生徒たちを任せて、オレたちは暗い洞窟へ。

 各々が明かりを付けて、周辺を探る。

「狭いわね。くっつかないでよね」
「わかっているが、早く進んでくれ」
「急いでいるんだけど、警戒して前進しているから簡単にいかないわよ?」

 ソフィも、注意しながら足を速めた。

「待って王子。段々、明るくなってきたわ」

 開けた場所まで出ると、明かりが灯った場所まで着いた。

「どこです、ここ? こんなに広いエリアなんて、マップには載っていませんよ?」

 地図を広げて、ツンディーリアが首をかしげる。

「どこかで迷ったのか、自動生成のダンジョンなのか」
「おそらく、後者ですね。ここは、侵入者の魔力に応じて形を変えるそうです」

 イモーティファが、壁に掛けられた注意書きを見つけた。

「どうしてそんな構成になっているのだ?」
「防犯措置って書いてますね。『せいぜい苦しめウヘヘー』とか、イヤミも添えられています」

 よっぽど、空き巣に困っていたらしい。

 それにしても、恐ろしい執念だ。
 未だに、ここまでの影響力を及ぼすとは。

「魔物だ!」

 大コウモリや、泥人形が行く手を遮る。

「なんのこれくらい!」

 オレだって、戦闘くらいやれるのだ。
 ショートソードで泥人形の首をはね飛ばす。

「ですよねー」

 泥人形はノーダメージで、身体を再生させた。
 その後、何度斬りかかっても同じである。

「コアは……ないか。一体一体に術が施されているぞ」

 ただ闇雲に、オレは攻撃をしていたわけじゃない。
 相手の特性を探っていたのだ。

「となると大元は、あっちね!」

 ソフィが、上空の大コウモリを指さす。

「ツンディーリア、あいつを撃ち落とせるか?」
「任せてください!」

 小型のファイアーボールを、ツンディーリアが手の平に作り上げた。上空にフワリと放り投げる。

「一撃で仕留めます!」
 杖を展開して、ツンディーリアは先端の宝玉でファイアーボールを打ち抜いた。

 快音が、洞窟内に鳴り響く。

 見事、大コウモリの丸い腹にブチ当たる。

 直後に、泥人形たちがタダの土くれへと変わった。

「やはり、魔力は上から来ていたか」

「ちょっと待って。一旦留まりましょう」
 先を急ぐオレたちを、ソフィが制する。

「まだ、何かあるのか?」
「この部屋を覆っていた魔力の質が、変わったわ」

 トーモスが聞くと、ソフィはそう答えた。

 さっきまで開けていた場所が、一気に縮んでいく。
 まるで部屋を覆っていた泥が落ちていくかのように。
 鍾乳洞だと思っていたのは、玄室だったようである。
 一見すると、普通のリビングみたいだが。

「見て。宝箱よ」

 五人分の箱が、部屋の隅に置いてあった。

「ワナは、かかっていないみたいです」

 仕掛けがないか、ついんずが確認する。どうやら安全らしい。

「王子は……どういうことなの?」

 ソフィが箱の中身を見て、硬直した。

「中身が、ないぞ」

 宝箱には、何も入っていない。

「あ、あんたはもう十分に強い……って意味じゃないのかしら?」
「そうですよ! これまでも、王子はわたくしたちの危機を救ってくださいましたわ!」

 みんな、オレを慰めてくれている。
 その優しさが、逆に辛い。

「オレだけ失格か」
「いや。全員だ」

 ライバラが言うとおり、ついんずもソフィもツンディーリアも、宝は空だった。

「おかしい。こんなことがあるのか?」

「俺とイモーティファならともかく、成績上位のソフィさんたちまで何もナシなんてな」
 トーモスも、首をかしげる。

「……離れろ、王子!」

 ライバラが、オレの肩を押した。

 しかし、見えない壁に行く手を阻まれる。
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