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第三章 魔王襲来! 百合王子のドキドキ試練!

百合王子、驚異のパワーアップ!?

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「王子、無事なの!?」
 空間を切り裂こうとしてか、ソフィが賢明に剣を振り回す。

 しかし、何の反応もなし。見えない壁に跳ね返された。

「なんとかな。しかし、ここはどこなのか?」

 立ち上がって、周辺を確認する。
 どうやら、全員がそれぞれ別空間に閉じ込められたらしい。

 こちらからも、ソフィたちと接触を図ろうとする。
 だが、見えない壁に阻止されて先に進めない。

「宝箱じゃなくて、部屋そのものがトリックだったとはな。見落としていたぜ」
「ごめんなさい、みなさん」

 地べたに腰を落とし、ついんずが頭を下げる。

「気にするな。誰にもわからんかったのだからな。出口はあっちか。出られる可能性は低いが、行ってみよう」
「みんなバラバラになるけれど、いいの?」

 一瞬だけ、ソフィの視線がツンディーリアに。

 偶然か。ツンディーリアの方も、忌々しげに透明な壁をバンと手で叩く。

 ああ、尊い。離ればなれになっても続く友情とは、かくも。

「にらみ合うなって、二人とも」

 トーモスの言葉に、オレは現実に引き戻された。


 どうやら、トーモスは女子同士が火花を散らしているように見えたようである。距離的に、ついんずを挟んでいるためか。

 ナイスだトーモスよ。この尊さはオレだけのモノとなった!

「まてよ。このシチュエーションこそ試練と言えぬか?」
「言えてるわね。自分の力だけで切り抜けろってことかしら?」
「うむ。ソフィの言うとおりだ。これも試練なら、きっと突破口はあるぞ」

 未知なる世界が相手では、オレの百合魔法も作用するかどうか……。

「オレだけが、犠牲になっても構わん。たとえ、一人になっても脱出するんだ」

「そんな、王子!」と、ツンディーリアがオレに大声で呼びかける。

「いざとなったら、メイドを呼ぶ。行くんだ」

 本当に最悪の事態になったときだが。

「すぐ戻るから、持ちこたえなさいよ!」

 ソフィは、立ち尽くすツンディーリアの腕を強引に引っ張った。

 さて、どうするか。

 段々と、景色がぼやけてきた。
 いよいよ本格的なダンジョンへと変貌を遂げたらしい。
 いったい、どこまでが真実でどこからがウソなんだろう?

 先には進めそうだ。暗い中を突き進むしかないか。
 これも防犯装置の一環だとすれば、とんだ泥棒よけだ。

「また、鍾乳洞じゃないか」

 オレは再び、開けた道に出る。

「ワープエリアか。なるほど」

 さっきの部屋から、瞬間移動で地下へ移動したのか。


 オレに何をさせる気だ?

「なあ、そこにいる人物よ?」


 目の前に、冒険者風の人影が立っていた。
 ボロの上下をまとい、みすぼらしい。
 しかし、手にする得物からは強い魔力を感じる。
 襟の長いコートで全身を覆って、つばの広い帽子を深く被っていた。
 まったく、顔は見えない。

「新たな希望が欲しければ、汝の力を示せ」
 謎の冒険者が、サーベルを抜く。

「勝負か。いいだろう!」

 冒険者とオレが、同時に動いた。

 サーベルの突きをかわし、ショートソードでノドを狙う。
 こいつは幻影だ。危険な攻撃を出しても支障はない。
 
 ソードには魔力を付与してある。
 不確定存在にもダメージが行き渡るはずだ。

 ソードが、首筋にヒットした。
 血液ではなく、瘴気が放出される。

 しかし、相手は構わずにオレの手からサーベルを弾く。
 丸腰になってしまった。

「なんの、百合魔法!」

 コーヒー色の煙を散布し、目をくらませる。

 だが、冒険者は的確にオレへと突きを繰り出した。

「うわっと!」

 紙一重でかわすが、サーベルがオレの頬を軽くかすめる。

 少し出血したおかげで、頭がのんびりモードから覚醒した。

「ふん。おかげで目が覚めたぞ」

 対峙してみてわかったが、相手は瘴気の塊である。
 発生源はわからないが、魔力が形を取って動いていると判明した。

 隠れるのは、ムダか。それなら。

 煙で両腕を包み、グローブ代わりにする。これで、相手のサーベルのいなせるぞ。

 グローブで、サーベルと打ち合う。
 こちらは徒手空拳だが、日頃からメイと鍛え合っているのだ。
 後れは取らない。

 悔しいが、やはりメイの教え方はウマかった。
 相手は相当な実力を持っているが、オレも負けてない。

 冒険者に、焦りの色が見える。

「いい夢を! 【百合紀行リリー・ジャーニー】!」

 コーヒー色の煙に抱かれて、眠るがよい。

 しかし、冒険者は煙の拘束を力だけで引きちぎった。
 寝心地が悪かったとでも?

「生半可な百合魔法では、昇天させることもできぬか」

 では、オレの究極奥義が火を噴くときだ。
 しかし、それをやるとこの一帯が破壊されるかもしれない。

「一か八か。ここでオレが死ねば、魔族が世界を滅ぼしかねない。他のメンバーを信じて、放つ!」

 くらえ、オレの全身全霊を賭けた必殺技を!

「奥義、【百合宮殿リリー・パレス】!」

 エリア全体に、百合の花が咲き乱れる。
 花粉が女体を形取り、冒険者をなで回した。

 空間を百合空間で埋め尽くし、戦意を喪失させる。
 倉庫に現れた魔物にさえ、放つのをためらった奥義だ。

 冒険者も反撃を試みた。
 が、百合の花粉から分泌される精神魔法によって、弱体化している。
 
 やがて、冒険者はサーベルを落とす。
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