ゲームの世界に転移して、攻略不可だった最推し「勇者の妹」と旅に出る!

椎名 富比路

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第四章 和風ファンタジーの魔法学校を、オロチから救え

第16話 特訓イベント

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「ありがとうございます。おひとつどうぞ」

 オレたちは、キツネ耳少女のキョーコから、おいなりさんを分けてもらう。

「うまい!」

「ほんとだ。めっちゃおいしい」

 こんな世界でも、いなり寿司を食べられるとは。

「ここのおいなりさんは、大人気なのです。そのため、すぐに売り切れてしまうのです」

 キョーコの印象からして、押しが強いタイプでもなさそうだ。

「学校の購買で食べられなかったら、スーパーで安いおいなりさんでガマンするのです。でも、小さいのです」

 しばらく、昼メシの時間を楽しむ。

「みなさんは、どのようなご用件で、この魔法学校に? 見ない顔ですよね?」

「ああ。オレは、特別講師ってことになっている」

 キョーコ専門の講師として、派遣されている設定だ。

「ミラベルは、見学だな」

 面白いスキルがヤマトの学校にあれば、習得してみるのもいいかもしれない。
 
「あんたは、理事長の孫だって聞いたが?」

「はい。おじいちゃんを知ってるですか?」

 キョーコが、温かいお茶で一息ついた。

 オレたちにも、お茶を振る舞う。
 
「理事長は、あんたを見守ってくれと」

「そうですか。おじいちゃんがいちばん大変なのに。ひょっとして、ここから少し離れた島で、会ったのでは?」

「よく知ってるな」

「実はそこは、オロチの頭が封印されている場所なのです。頭さえどうにかすれば、オロチはしばらくおとなしくなるので」

 オロチの頭を抑え込むため、理事長は傷ついた身体をおして封印を施しているという。

 どうも、オレたちが運んでいた物資は、封印用の道具だったようだ。

 そこまで、仕込まなければならないとは。

「おじいちゃんのおかげで、当分は封印が破られる心配はありません」

 再封印となると、また一度結界を解かなければならないらしいが。

「理事長からは、あんたを鍛えてくれとも言われたぞ。大丈夫そうか?」

「腕のたつ、魔法使いさんたちなのですね。ありがとうございます。こんな私のために」

「いやいや。オレたちこそ役に立つかどうか」

「ご謙遜を。おじいちゃんの、祖父の目は確かです。お二人に指導いただければ、私も強くなるかもしれません」

「そうか。といっても、あんまり期待しないでくれよな」

「はい。よろしくおねがいしますです」


 おっ、クエストログが開いたぞ。


                                      *
 

【クエスト:魔法学校で高い成績を】

 キョーコの成績を上げてください。
 目指すは平均点「八〇」点超え!

 ルール:
 
 座学と実技、両方の平均点を八〇点超えれば、オロチと戦う権利を与えられる。


 魔法学校は、「一日」で「一ヶ月分」の授業を受けたことになる。

 六日、つまり半年の間に、ノルマをクリアすること。
 

 補足:
 
 もし、キョーコがイベントをクリアできなくても、一応オロチ討伐はクリアになる。

 その際は、魔法学校の六割の生徒が犠牲になる。
 
 また、負傷者の中にはミラベルも加わることになる。
 オロチとの戦闘によって、永続的に右腕を失うことになり、今後のイベント攻略が困難になる。

                                      *

 
……これは、まずいな。


「キョーコは、座学の方は何点くらいなんだ?」

「九〇点です。授業も試験も、免除されていますよ。なので、実技の方にすべて出席していいことになっています」

 バチバチ優等生じゃん。

 ならば、座学に関しては気にしなくていいと。

 というか、実技のほうがヤバイんだな。

「実技の方は、どんな感じなの?」

 ミラベルが問いかけると、キョーコは「三〇点です」と告げた。

 これは、ヤバイぞ。
 
「ちなみに、ミラベルのことは測定できるか?」

「できます。座学は八一点、実技は九五点ですね」

 つまりミラベルは、とうにオロチ討伐メンバーというわけか。

 オレはキョーコだけに、指導すればいい、と。
 
 ところで、と、オレはキョーコに尋ねる。

「制服は、余っているか?」

「購買に聞いています。今なら、空いていると思うので」

 みんなで、購買に向かう。

 嵐の後のように、購買の棚はすっからかんになっていた。

「あの、すいません。あまりの制服ってありますか?」

「あんなもん、着たいのかい? 物好きだねえ。まあ、余りもんでよければ着ていきな」

 制服を貸してもらう。

 ただ、特殊な細工が施されているらしい。敷地内どころか外で悪さをすると、学校にその連絡がいきわたるという。
 いたずら目的で着るのを防止する、仕掛けらしい。

 民間人が着用しても、いいわけだ。そんな縛りがあるから、自由に着てもかまわないわけか。
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