ゲームの世界に転移して、攻略不可だった最推し「勇者の妹」と旅に出る!

椎名 富比路

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最終章 魔王の娘との戦い! さらば、推しよ!?

第28話 最強の技は……合体!?

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 魔法少女ルックのミラベルと、ラストダンジョン【イクスコム城】へ向かう。

                                      *

 
【最終ミッション:魔王の娘 討伐】

 魔王の娘である、【イクスコム・アバドン】とバトルしていただきます。

 このミッションを終えると、ゲームクリアとなります。

                                      *
 
 クエストログも、あっさりだ。

 魔王の城に近づくにつれて、空が紫色に染まっていく。
 本家ゲームと、同じ演出だ。
 
 ただ、イクスコム城はお化け屋敷みたいな様相である。
「子どもが考える、恐ろしい化け物の巣」という感じに、アレンジされていた。
 本家魔王城は、もうちょっと本格的である。
 こちらは、テーマパークのアトラクションのようだ。

「ベップおじさん」
 
「ああ。魔王の娘メスガキは、この中にいる」

 扉を開けて中に入ると、すぐに王座に辿り着いた。
 細かい過程をすっ飛ばして、いきなりボス部屋へワープさせられたらしい。
 まあ、城も小さかったし、特に真新しいイベントもなさげだった。
 最強装備も、手に入れているしな。

「よく来たわね。逃げずに、このイクスコムと最後の戦いにくるとは」

「魔王の好きなようには、させないよ!」

 ミラベルが、ステッキを構える。

 対するイクスコムも、黒いドレスアーマーを着込んでいた。
 あれが、彼女の最終装備か。
 各部位に、歴代のボスキャラの特徴を持たせている。

「くらいなさい! 【スパイダーネット】! からの、【ヒュドラ】!」

 クモの糸で足を絡め取って、オロチの炎でこちらを火炙りにしようとした。

「ミラベル、鬼火で対抗!」

「はい!」

 足に絡みついた糸を、鬼火で焼く。
 続いて、オロチの炎をジャストガードで跳ね返した。

「反撃開始だぜ!」

「【ハートビート・キック】!」

 ミラベルが、ハート型のファイアボールを撃ち込む。火球に追いつくほどのダッシュ跳躍をして、ケリを放った。足刀蹴りの状態で、火球と一体になる。
 格闘と火属性魔法の、合せ技だ。

 さらに、

「こいつはどうだ? 【トルネード・スピン】!」

 ミラベルの周囲に竜巻を起こす。

 ハートビートが、回転を始めた。

 キックを止めようとする糸を引き裂き、ヒュドラの身体もズタズタにしていく。

「ぶちかませ、ミラベル!」

「てえええい! えっ!?」

 だが、ミラベル渾身の蹴りも、巨大なカメのシールドによって阻まれた。

「やるわね。防御モードに設定したのに、破壊されるなんて」

 カメの甲羅型シールドが、粉々に砕け散る。
 同時に、イクスコムを包んでいたドレスアーマーも、吹っ飛んだ。
 
 イクスコムは、いつものボンテージ姿に。
 しかし、身を挺した防御によって、イクスコムにダメージは入っていない。

「本番は、これからよ!」

 イクスコムの戦闘スタイルが、変わった。
 ヒュドラに似たオーラを伸ばし、ミラベルやオレに向けて撃ち込んでくる。
 第二形態があるのか。

「それぇ!」

 イクスコムが、怒涛のような攻撃を繰り出してくる。
 見た感じヒュドラに近いが、攻撃力はヒュドラなんて比ではない。
 八回連続攻撃によって、オレたちは防御を余儀なくされた。

 オレが防いだとしても、ミラベルにまで攻撃が振ってきてしまう。

「わあああ!」

 ミラベルの脇腹に、ダメージが入ってしまった。

「ベップおじさん、あの子、めちゃくちゃ強いよ!」

 自分に治癒魔法を施し、ミラベルが立上がる。
 
「攻撃特化の分、防御は紙切れ同然になっているはずだ。やっちまえ!」

「でも! うわ!」

 絶好のチャンスだったのに、ミラベルは攻撃を外してしまった。
 
 ミラベルの攻撃には、ためらいがある。
 攻めきれていない。

「どうしよう。思っているように戦えないよ。あの子だって、魔王の力でこんなことをしているだけだって、わかっちゃった」

 ミラベルは、優しい子だ。本心から悪意を向けられていないとわかると、たちまち戦えなくなるとは。

「そうか。どうすれば……」

 オレのスキルログに、とんでもない技の内容が。

【合体】

【合成魔法】と【アイテム合成】、両方のスキルを会得した者にだけ扱える、究極の技。

 ミラベルと、合体できる。


 おいおいおいおい! 冗談だろ!?

 オレとミラベルが、一つになるなんて。

『なにを、グズグズしているの、ベップ? 早く、ミラベルと一体になるのよ!』

 オレを召喚した妖精「ピーディー」が、再びオレの前に。

「だって、一つになるんだぜ? こんなの、実質結婚みたいなもんじゃないか!」

「ちょっと発想がキモいわね。でも、合体しないとあいつは倒せないわよ。ネタバレすると、あんたたちが合体しないと倒せないような設定なの」

 魔王アバドンが、イクスコムをそう設定したらしい。
 オレの性格を察知して、「どうせできないだろう」と見越したからだ。

 ちくしょう。そのとおりだぜ。魔王のやつ、まるでオレのようなヤロウだ。

「魔王の目的は、ミラベルと【合体すること】よ!」

「子作りするってことか?」
 
「違うわよ! 合体をそういう解釈をしていたの!?」

 オレの発想力は、健全な成人男性なんだよ。
 
「いい? 魔王アバドンの目的は、あの子の身体を乗っ取るつもりなの!」

 勇者に、自分を攻撃させないために。
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