おひとりさま男子、カップルYouTuberになる ~他校に進学した優等生JKが婚約者だった~

椎名 富比路

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第二章 おひとりさま男子、婚約者と同居を始めます。

第10話 料理動画、再び

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 あれから、オレたちは色々と動画を試してみた。
 その一つが、Tボーンステーキを頼むというもの。
 あれは迫力があって、割と好評だった。といっても、五〇〇再生くらいだが。

「視聴者は、食に飢えているのかも」ということで、今回も料理動画をやってみることに。とにかく今後は、ネタに困ったら料理・食事動画に頼ることにした。

「よお、カイカイだ」

「よお。ムゥだ。今回は、じゃん!」

 たこ焼き器を、夢希ムギがスマホの前に置く。

「ムゥが見せてくれたように、今回は、タコパだ! たこ焼きを焼いていくぞ! たこ焼きなら、女の子でも大量に食べられるだろう。ではさっそく、生地づくりからやってみるか」

 買い物動画も撮ってみるかを、相談してみた。

 相談相手の星梨セイナおばさんからは、ダメ出しを食らう。スーパーで居所が得てエイサれるかも知れないとのこと。また、スーパーには音楽がかかっているので、著作権に触れる恐れがある。なにより、他のお客さんの顔を晒すわけにはいかない。

 で結局、買い物は録画なしで行った。

「というわけで、生地はオレが担当する。ムゥは、具材を切っていくぞ」

「よし。下処理は任せろ。あと、明日は休みだからな。すっごいの作るぞ」

「すっごいのって、なんだろうな。楽しみだ。とはいえ、最初は生地だよな! さて、こねていくぞ」

 生地に、調味料などを入れて下味をつける。ソースで食うから必要ないかもと思ったが、生地に味をつける文化もあるという。

「色々な食い方があって、タコパって面白いんだよな」

「そうそう。だから具材もちょっと代わったものを入れていくぞー」

 夢希が切っているのは、タコの足だけではない。

「お前、ゲソまで切っているのか?」

「そうだぞ。ゲソとタコの味って、変わるのかなって思ってな」

 ゲソって言ったら、そのまま食うかスーパーのお惣菜コーナーにある「ゲソ天」が印象的だが。

「ゲソ天うまいよな」

「あれ、自分でやったら油が飛ぶんだよ。怖すぎ」

 イカは、油で跳ねるんだよな。

「それはそうと、エビとかあるな。タコパで使うにはでかすぎるんじゃねえのか?」

 こんなに具材が大きいと、ひっくり返せないぜ。

「大丈夫。これは別の料理で使うから」

 まだ、なにをするかは秘密らしい。
 あとは生地を焼いていき、刻んだキャベツとネギ、タコを入れていく。

「ホタテとか、ぜいたくだなー」

「これは当たりとして、食おう」

 イイ感じに、生地が焼けてきた。

「ちょっとひっくり返しが甘かったか。歪な形になっちまった」

 でもいいか。この方が、手作り感が出る。

「ではいただきます」

 カリ、トローっという食感が、たまらない。

「生地は薄めに味付けして、味わいはソースだけのシンプルな感じなんだけど、これがまたいいな!」

「焼き加減もちょうどいい。形はともかく。おいしい」

 夢希も、「んふふ」と含んだ笑みで美味しさを表現する。口の中が熱いためか、しゃべれない様子。

 続いて、ホタテを一口。うん。食感はタコの方に軍配は上がる。だがこれはこれで、コクがあるからうまい。というか、一番うまいんじゃねえか?

「ホタテ、いいな。MVPかもしれん。ゲソは、タコとあまり変わらないな。若干硬い感じがするぜ」

「まあまあ、ゲソはゲソで、いい感じの料理になるから」

 といって夢希は、プレートに直接ゲソを打ち込む。エビ、キノコ、トマトなど、たこ焼きに使わなかった具材もドバっと。ニンニクもきかせた。明日学校が休みだからか。

「生地がもうないぜ」

「いいのいいの。ここにオリーブオイルをドバーっと」

 オイルが、熱でプクプクと言い出す。

「はい。アヒージョの完成だ」

「アヒージョなんて、生まれて初めて食べるぜ。いただきます」

 アッツアツのゲソを、オイルと一緒に。

「うんっ……ま!」

 オイルに、海産物の旨味が染み込んでやがる。

「あああああ、これ飲める。この油は飲みたいぜ」

「そうおもってな、フランスパンも」

 バゲットを切って、夢希がオレに分けてくれた。

 さっそくバゲットに、熱いオリーブオイルを染み込ませて。

「飲んでる。このオイルはノドに来るな」

 熱さとニンニクのガッツリさが、ノドを刺激してきた。

 たこ焼きとは違った、深みのある味わいだ。ゲソは、たしかにアヒージョ向きかも知れない。あのグニグニ感は、素揚げ向きなんだろうな。

「いやあ、最高だったな。ごちそうさまでした。みんなもこうやって、食べてみてくれよな。タコパはお一人様でもテンションは上がるし、友だちを呼んでやってみてもいい。楽しみ方は人それぞれだ。じゃあな」

 動画を取り終えて、オレは風呂へ向かう。

 ヤバい。タコのタウリンとニンニクのせいか、頭がギンギンになってて眠れそうにないぜ。

 風呂でさっぱりすれば、多少は疲れて眠れそうだ。
 しかし、オレの思惑は脆くも崩れ去る。さらにオレをガチガチにするハプニングが起きたからだ。

「一緒に入るぞ、カイカイ」

「ファッ!?」

 バスタオル姿のムゥが、防水処理をしたスマホを片手に入浴しに来たのである。

 オレが入っているにもかかわらず。
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