おひとりさま男子、カップルYouTuberになる ~他校に進学した優等生JKが婚約者だった~

椎名 富比路

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第四章 ドキドキ動画合宿! BANの危機があるからポロリはナシ!

第24話 やっぱりデート下手くそ勢

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星梨セイナおばさまは?」

「町内会に呼ばれてった。夕方前には帰るってよ」

 フードコートで昼休憩を取る。夢希ムギと二人きりで外食なんて、いつ以来だろう?

「夢希は、何が食べたいんだ?」

「アジフライ定食。こういうところのアジフライとか、絶対おいしい」

 すっかり夢希は、海の幸のトリコになっちまっていた。

快斗カイトは?」

「オレはガッツリ、唐揚げ定食の中盛りだ。腹いっぱい食いつつ、ちょっと抑えようかと思うそ。夜店を回るからな」

 ラーメンもカレーも、海の家で食ったし。

「いただきます! ああ、うまい」

 公園で食った夢希の唐揚げも最高だったが、これもまた格別だ。付け合せのキャベツと食べると、無限に食えそうになる。

 夢希も、アジフライをサクッといただく。

「おふお。おいひいい」

 さすが、我が動画チャンネルで最大の再生数を誇る食べっぷりだ。ホントにウチは、食べる動画が人気である。なぜなのかと思っていたが、夢希の食事を見ているだけで、幸せてなってくるのだろう。オレがそうだからな。

「油がすっごい。その中に入っている旨味が、また」

 さっそく、オレたちはそれぞれのおかずをシェアする。

「はい。あーん」

 オレは、アジフライをかじった。

「ああ。お前の言いたいことはわかる」

「でしょ? 超おいしい」

 これは、メシが進んでしまうやつだ。油っぽいものは、やっぱり白い米でお出迎えスべきかなと思う。

「オレの唐揚げもどうぞ。あーん」

「あーむ」

 箸先ごと、夢希がオレの唐揚げを一口で詰め込む。

「いいのか?」

「いいの。ああ、おいしい! 下処理がいいのかな? 身が柔らかくて、でも衣が噛みごたえがあるから、独特の食感になってる」

 しみじみと、夢希が感想を述べる。

「だよな。田舎のショピングモールとは思えないクオリティだよな」

 ごちそうさまでした。夢希も幸せそうだ。

 ゲーセンに足を運ぶ。
 メダルゲームが、コイン落としとパチスロしかねえ。

「クレーンゲームをやろう」

「よし。このハンディファンなんてどうだ? 店売りだといいものを買おうとすると、二〇〇〇円以上する。クレーンで取ったら、ざっと二〇〇円だ。コスパが一〇倍も違う。

「やってみるぞ……お、よしよしあーっ!」

 奈落へ落下していくハンディファンのハコを見ながら、オレは崩れ落ちた。

「交代。わたしがやってみる……あ、いけそうあーっ!」

 夢希が、小さく悲鳴を上げる。
 コスパを重視したつもりが、余計な金を使ってしまった。

「まあいいじゃん。金魚すくいをニ回やって一匹も取れなかったって思えば」

「……だな」

 これ以上のムダづかいはできない。

 外に出て、動画を撮り始める。自然公園なら、クレームも来ないだろう。

「あと、デートっていったらなにをするんだ?」

「そういえばわたしたち、手を繋いだこともなかったのでは?」

「だよな!」

 なにをやっていたんだ、今までオレたちは。
 デートっつったら、手を繋いで歩くだろうが。

「電気街でも、やろうと思えばできた。しかし、思いつかなかった」

「でもあれは、デートじゃなくて遠出だったから、ノーカンだ」

 公園で歩こうにも、あのときは大雨が降ってしまったからな。

「じゃあ、改めて」

 オレは、夢希に手を差し伸べる。

「エスコートお願いしますっ」

 夢希が、オレの手を掴んだ。徐々に、握力を弱めていく。

 ちょうどいい手の感触になってきたところで、オレたちは歩き始めた。といっても、モールの外周だけだが。

「ただいまー。おっ。ふたりとも仲良くなったわね」

 迎えに来た星梨おばさんに、バッチリ見られてしまった。

 つくづく、オレたちはデート下手である。

 でもいいよな。こういうのも。
 試行錯誤しながら、相手がしてほしいことを手探りしていく。

 車の中で、オレの肩にもたれて眠る夢希を見ながら、オレはそう考えていた。
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