おひとりさま男子、カップルYouTuberになる ～他校に進学した優等生JKが婚約者だった～

第五章 収益化と言われても……

第28話 アナリティクス？

「えー、どうも。ムゥカイチャンネルへようこそ。あたしは、カイカイとムゥのマネージャーです」

　今回の動画はいつもと違って、星梨セイナ叔母さんが仕切っていた。

「本日は趣向を変えまして、この動画のアナリティクスを、調べようと思います」

　なんだって？

「アナ……とか、放送コード的に大丈夫なのか？」

「アナリティクス！　どんな視聴者層に見られているか、チェックしましょーって言ってるの！」

　そうなのか？

「どんな人が、どれくらいの頻度でうちの動画を見ているのか、調べるの」

　いったいどんなページが見られているかも、調査できるらしい。
　それは楽しみだな。

「文字通り、ケツの穴まで見られちまう感じだな」

「だから、アナ……から頭を離れて。アカウントが消されてしまうわ」

　気を取り直して、夢希ムギと一緒にアナリティクスとやらを調べる。

「えっと、ひとまず動画サイトの収益化する上での前提なんだけど、二人は一応高校一年生、つまり【未成年】なの。だから、責任者であるあたしのチャンネルとして、登録をしているの。でないと、収益化はできないわ」

　オレたちが一八歳以上にならないと、自分のチャンネル権を得られない。

「収益化の条件は、 アクティブな動画公開・アップロードが、過去90日以内で3回。公開動画の総再生時間数が、過去一年間で三〇〇〇時間必要なの。ちなみに、ショート動画だと視聴回数は過去九〇日以内で三〇〇万回数必要よ」

　これは、クリアしている。ショートは一応ボチボチ公開していたが、そこまでの条件は達していない。つまり、動画の再生時間で到達したことになる。

「さらに、チャンネル登録者数が五〇〇人も必要だったわ。これのクリアが一番大変だったんだけど、二人は見事にクリアしたわ。しかも、エロ釣りや炎上、一切ナシで。それも、三ヶ月で達成したわ」

　おばさんが、一人で拍手をした。

「その驚異的な記録を支えてくれた人が、どんな人たちなのか、気にならない？　はいムゥちゃん？」

「とっても気になります」

「素直でよろしい！　では、調べてみましょうか？」

　まずは、集客だ。

　視聴者層が、円グラフで表示される。

「たいていは一〇代ね。ネタのほとんどが、一〇代向けだからいいんだけど。あと案外、四〇代が多いわね」

　そうなのだ。独身の中年がよく見てくれている。コメントやマシュマロをくれるのも、たいていそんな層だ。

「コメントであったんだけど、『未婚だけど、自分の子どもを見ている感じ』って印象があるみたい」

「わかる。マジそれな」

　おばさんが、夢希を指差す。

「二人はねえ。見守っていたい欲求をくすぐるのよ」

　ヘタにアダルト路線へ行かなかった分、健全な人が多いらしい。

「二〇代はそんなにいないな」

「青春真っ只中だし、いいんじゃない？　刺激的な動画を見たい層には、響かないっぽいわね。響かせるつもりもないけど」

　二、三〇代にウケるためには、今よりかなりイメージを変える必要があるという。

「結局、マジメな人が一番続くのよ。メンタル弱いくせして炎上ネタに走って伸びなくて脱落ってコ、ウチのチャンネルでも数名いたわ。後処理、大変だったんだけど。リスト回して、『要注意』って触れ込みしておいた」

「大変だな、運営ってのも」

「あれだけエゴサすんなっていってんのに、自分で勝手に病んでチャンネルの方向性を変えて自爆とか。飲まなきゃやってられないわ」

「あのマネージャーさん、放送中です」

「はい。炭酸でガマンします」

　自重しているのか、おばさんが普通のジュース缶を開ける。

　で、どのような動画が受けているのかと言うと、やはり食べるシーンばかりらしい。

「意外だな。ムゥの水着姿とか、一番見られている感じがしたが」

「顔見せなしの女の子だと、ちょっとセクシー路線はムリっぽいのよね」

　バーチャル配信者なら、多少のイメージが湧くのでいいのだが、生身だと顔がほしいようだ。

「ムゥちゃんはエッチなのより、食べている場面が一番見られているわ」

「餌付けしたい、って書いてあるな」

「あ、それあたし」