おひとりさま男子、カップルYouTuberになる ~他校に進学した優等生JKが婚約者だった~

椎名 富比路

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第八章 おひとりさまYouTuber、登録者一万超え!?

第47話 勉強動画

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「あの、ほぼ無音声の?」

 夢希ムギが、星梨さんに聞く。

「そうよ。夏休み、ウチに帰省したときに公開したでしょ?」

 オレの実家に帰省したときに撮った、動画のことである。

「そんなこともあったな。『夏休みだと、どうしても勉強に集中できない』という視聴者からの声を、ムゥは気にしていたんだよな」 

 たしかに、ゲームは新作が出るし、プールにも行きたいよな。

 そこで、二人で向かい合って勉強しているだけの動画を、一二時間ぶっ通しで流したのだ。

 もちろん、個人が特定されるような内容は映さない。学校の範囲などを映しただけで、所属学校を特定する者もいるという。なのでオレたちは、赤本を使って勉強をしていた。宿題はどっちも終わらせていたからな。

 五教科一時間ずつを、二セット。時々一時間の食事休憩を挟んだ。「三〇分描いては五分休む」のローテーション、いわゆる「ポモドーロ・テクニック」ってやつだ。クイズ番組の問題を作るクイズ作成者のチームも、同じような動画をつい最近上げていた。考えることは、どこも一緒だな!

「シャーペンがノートを走る音が心地よい」

「紙がめくれる音は、やはり癒やされる」

 との声が多数あった。

「わかる。わたしも家だと本は紙で読みたい。だから、図書館が解禁されたのがうれしい」

 視聴者からの感想に、夢希もわいわいと答える。

「五分休憩の間に、読書感想文のコツとか英会話のちょっとした小ネタも挟んだよね」

「そっちも大好評みたいだ」

「マジで読書感想文は、自分が好きな本を探すことから始めた方がいい」

 推しのタレントさんが推薦している書籍でもいいから、自分で読めるモノを見つけて読むことが先だ、と、夢希は主張していた。

「読書に興味を持ってから、感想文は取り掛かったほうがいい。って、力説していたよな」

「うん。でないと、読書の習慣が身につかないから」

 学校推薦図書とかは、マジでオススメではない。あれは読書感想文を書くために読むものだから。
 学校推薦図書とかは、マジでオススメではない。あれは読書感想文を書くために読むものだから。
 本自体に問題があるわけじゃない。やらされている感じ満載な読書の姿勢が問題なのだ。
 思い入れのない本を読めば、それこそ感想文どころが、本を読むこと自体が嫌いになる。

「アルゴリズム的には、二人が黙々と勉強してる場面が再生数が多かったわよ」

 星梨おばさんが、オレたちを現実に戻す。
 オレたちがコラボ動画を流している間に、勉強動画が伸びに伸びたそうだ。

「ほとんど、オレたち関係ねえじゃん」

「そうなのよー」

 勉強動画だったら、視聴者からすればなんでもよかったらしい。それがたまたま、オレたちだっただけで。

「コラボもあんまり、意味がなかった感じ?」

「伸びてるわよ。でも、これから上がっていくみたい。まだ、認知はされていないわね」

 コラボ先のファンからすると、コラボ相手はよほど面白くないと見に行かないらしい。つまり、オレたちは不合格ってわけだ。

「複雑……なんかわたし、そのときホットパンツ穿いてたよね? ピッチピチの」

 たしかにそのときの衣装は、やや長めのボクサーブリーフとスポブラだったっけ。ほぼ下着姿に近かった。

「太ももとかが受けただけのような、気もする」

「ないない、ムゥちゃん。そういうのが目当ての視聴者は、始めからエッチな切り抜きとかショート動画に行くから。素人のそういうエッチ系は、ちまたにはもっと刺激的なものが溢れているのよ。ムゥちゃんはかわいいけど、視聴者がムゥちゃんに性的な路線を求めているとは考えにくいわ」

 星梨おばさんの分析では、ラッキースケベ的なことは夢希に求められていないらしい。

「……でも、これからだろ。オレたちは」

「そうだよねっ。会話内容も、当たり障りのないネタばっかりだったもんね」

「だな。オレたちが高校生なばっかりに、過激な発言ができねえし。炎上と常に隣り合わせだからな」

 本来なら、YouTuberってだけでも、学校に睨まれてもおかしくないんだ。

「ムゥんところは、学校は大丈夫なのか?」

「ウチは学校で大人しくしていたら、わりと自由」

「同じ感じだな」

「だけどこの間、補導された子が出たって」

「マジか……」

 どうも、夜中にナンパされた生徒たちがいたらしい。

「その子たち、『チクタク』で夜景をバックにダンス動画を撮ろうとしたんだって」
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