おひとりさま男子、カップルYouTuberになる ~他校に進学した優等生JKが婚約者だった~

椎名 富比路

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第九章 おひとりさまYouTuber ふたりきり

第61話 デカ盛りラーメン制覇

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 その後も、ひっきりなしに大食いがやってくる。

 店員数人がかりで、店主はデカ盛りを作り続けていた。

 オレたちはと言うと、夢希ムギとモミジの三人がかりで、未だ完食できていない。

「それにしても、女の子がこんなラーメン屋に入りたいって思うかな?」

「むしろ、女子だから入りたいんだけど?」

 夢希が、オレの意見に反論してきた。

「そんなもんなんだろうか?」

「女子だってさ、たまには恥じらいを捨てて、ラーメンにかじりつきたいときがあるんだよね」

 女の子はわからん。

 夢希は遅いながら、モシャモシャと麺をすする。

 モミジはあと、モヤシを残すのみだ。やたら食うのが早い。

「ズビズバーってラーメンするるのってさ、学食でもやりづらくて。共学だからかな? 女子はみんな、ちゅるちゅるって食べてやんの。おしとやかにさー」

「ウチも。食べ方は、女子校でも同じかなぁ。そもそも、ガッツリラーメンなんて食べないや。おうどんも、体調を崩した子が食べてる印象」

 生徒の昼食は、ほとんどが親の作った弁当らしい。

「わたしは、そっちの方がうらやましいんだよね。共働きだから、あんまり作ってもらった印象はないかな。だから、運動会の時は楽しかった。久々に家族で食べられるから、おにぎりの形が悪くてもうれしかったよ」

 微笑ましいエピソードだ。

「だから、ムゥは料理上手になったのかもな。オレは親なんて煩わしいなって思っていたから、体育祭とかも来なくていい。仕事を優先してくれって頼んだくらいだからな」

「それは、突き放しすぎじゃね?」

「早く自立したかったんだよ。両親は嫌いじゃないんだけど」

 それにしても、話しながらわかったことがある。

 モミジは、会話の引き出し方がうまい。

 オレたち二人だったら、黙々と食って終わっていただろう。

 女子がひとり交じるだけで、会話が弾む。

 とはいえ、アテにしてばかりはいられない。

「ミニチャーハン、どうぞー」

 チャーハンの乗ったレンゲを、夢希がオレの口に近づけてくる。

 おおう。チャーハンも残しそうな予感が。

「わかった。あーん」

「残ってるの、全部食べて。ラーメンはこっちで消費するから」

「よしよし。あーん」

「さっきの動画主さんが言っていた食べ方で、あーん」

「おう。ラーメンスープのついたチャーハンを、あーん」

 これにて、完食した。

「ご、ごちそうさまでした」

 もう、何も入りそうにない。が、めちゃめちゃうまかった。口の中が、幸せで満たされている。

 店内を見渡すと、なぜかオレたちに注目が集まっていた。

「な、なんだ?」

「いやあ。あんなの見せつけられたら。ねえ」

 モミジが、客たちに同意を求めている。

 これは、早々と退散したほうがよさそうだ。

「モモ、モミジ。昼食はいいから、次のカップル修行に行くぞ」
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