上 下
24 / 269
縁日は、罪の味 ~屋台のハシゴ~

クラーケンたこ焼き

しおりを挟む
「ごきげんよう。クリスの仲間で魔術師のヘルトルディス・コットよ」
「はじめまして、シスター・クリスと同期で同室のエメリーン・スミスよ。エマと呼んでちょうだい」

 これは、業深エロい。
 いです。
 一触即発の様相です。
 ワタアメのように、甘くは行かないでしょう。

「聞いたことがあるわ。教会きっての爆乳持ちがいるって。あなた目当てに、信者が増えたとも」
「あたしも、ヘルト・コットの話は知っているわ。魔術を使わず、モンスターを魅了できる女性大魔法使いのウワサを。まさか、こうしてお目にかかれるなんて」

 ドンと二人の巨乳が、大迫力で迫ります。やはり、張り合っちゃいますよねぇ。

「お互い、浴衣は窮屈よね? お察しするわ」
「ええ、そうね。でも汗が抜けてくれるから、すぐ乾いてくれるわ」

 なんか、意気投合しています。

 二人は隣り合って、座りました。

「クリス、この子とは話せそう。しばらくご一緒するわ」
「いいわね。クリス、しばらく一人で屋台でも回っててちょうだい。合流地点はわかるわよね?」

 どうやら、巨乳連合が出来上がってしまったみたいです。

「そうですか。ありがとうございます、エマ。では、自由にやらせていただきます」

 貧乳は、クールに去りましょう。

 さて、誰もいなくなったことですし、欲望を解放いたしましょう。

 ジャンボソーセージ、ジャガバターを購入しました。
 あとは、焼き鳥の串も外せませんね。
 カルビ串はやめておきましょう。ソーセージがありますから、食べ過ぎちゃいます。
 野菜は、キャベツ焼きがありました。これにしましょう。
 おでんもありますが、お腹と相談ですね。

 たこ焼きを売っている、休憩所を見つけました。ここに座らせてもらいましょう。

「おや? シスター・クリスじゃないか」

 魔女のローブを着た女性が、屋台でたこ焼きを作っていました。
 とてもたこ焼きを売るような風貌には見えないのですが。

「それがあなたの今のシノギですか? シスター・ローラ」

 なんと、たこ焼きを焼いているのはシスター・ローラでした。 

「どっちかっていうと、討伐依頼の方かな? さっき退治したクラーケンを、焼いているんだよ」
「そうですか。ここは、海が近いですからね」

 聞くと、花火を打ち上げる島を荒らしていたモンスターを、ローラ先生たちで蹴散らしていたとか。そのときに余ったクラーケンの足を、分けてもらったそうです。

「他の二人は、随分と依頼に手こずっていたようだねぇ。ヒーラーが用事で来られないってんで、アタシがピンチヒッターになったってワケよ」
「すいません、おまかせしてしまったようで」

 わたしは、幼稚舎の引率がありましたので、冒険者の仕事ができませんでした。

「いやいや。お仕事ご苦労さん。ここで会ったのもなにかの縁だ。たこ焼きをタダにしてやるとは言えないが、おまけしておいてやるよ」

 ラムネをおまけでつけてくれました。代金は建て替えてくれるようです。
「それにしても、シスター・ローラ。なにゆえ、たこ焼きに?」
「うまそうに見えるからさ」

 慣れた手付きで、ローラ先生はたこ焼きをひっくり返しました。やはり、こちらが本業に思えます。

「たしかにそうですけれど、ゲソとして売ってもよかったのでは?」

 クラーケンの足なら、姿焼きで出したほうが映えると思うのですが……。

「やだよ気持ち悪い。足がニュって出てるんだよ?」

 露骨に、シスター・ローラが嫌な顔をしました。

「歯ごたえがあって、美味しいじゃありませんか」

 モンスター特有の弾力がたまりません。干物にしてもおいしいです。

「あれの見た目で食うの? 人間って奇妙な生き物だね。アタシの美学には反するよ」

 彼女の美学が、理解できません。

「よし、冷めないうちに食いな」
「いただきます」

 木の皮にたこ焼きを乗せてもらい、テーブルまで運びます。

 席を確保して、いざ実食です!
しおりを挟む

処理中です...