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激辛カレーライスは、罪の味ィィィィィ! ~オタカフェの激辛カレーライス~

カレーライスは、罪の味

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「お待たせいたしました。ビーフカレーのお客様」

  そうこう言っている間に、カレーライスができあがったようです。
 二人一組で、メイドさんが凝ってきてくれました。

「うわあっ! これは!?」

 なんと、カレーとライスが別に運ばれてきましたよ。
 容器も独特です。一気にリッチ感が!

 メイドさんは、ルーを持ってくる人と、お皿に盛ったライス担当と分かれています。

「これがカレーライスと、ライスカレーとの違いよ。ライスカレーだとルーがかかっているでしょ? 対してカレーライスは、ルーとライスが別なの」

 この銀色の容器は、【カレーソースポット】というのだそうですね。

 それにしても、中身の肉が大きいです。
 ただ、じゃがいもやニンジンなどは見当たりません。溶けてしまったのでしょうか?

 個人的には、お野菜も欲しいところですね。
 キャンプのときにニンジンを星型に切ってあげると、幼稚舎の園児たちが喜ぶので。

「あの、お水にスプーンが刺さっているのですが?」

 お水の入ったグラスに、銀色のスプーンが浸してあります。

「ライスがスプーンに付着するのを防ぐためとか、食器を効率よく運ぶだとか、諸説あるそうだけれど、わからないのよね」

 諸国を練り歩いた子爵でも、わからないことがあるのですね。 

「いただきまーす」

 わたしはお笏を持ち上げて、ルーをドバがけしようとしました。
 すると、メイドさんが「お待ちください」と止めに入ります。

「少しずつルーをかけて、お召し上がりください」

 メイドさんが、食べ方をレクチャーしてくださいました。

「え? 一度にかけてしまうとマナー違反だとか、そういう感じですか?」

 わたしとしては、一度にドバッとかけてしまいたい衝動に駆られるのですが。
 謎マナーはご遠慮願いたいですぅ。

「ちょっとずつかけてライスからルーをすくって食べると、お皿を汚さないっていうマナーがあるみたいね」

 カレーラス子爵が、そう教えてくださいます。合理的な食べ方ですね。

「でも、アタシだってカレーは豪快に食べちゃうわね」
「あたしも」

 さすが師弟。ヘルトさんも子爵も同意見の様子でした。

「では改めて、いただきます」

 ルーを少しずつかけて、ライスからでしたね。

 うおおおおお。これは、罪深うまい!

 ああ、なんといいましょう? このコク、この程よい辛さ。

 キャンプで子どもたちと食べるカレーとは、また違った世界が広がります。
 あれはあれでジャンクっぽくて最高なのですが、ちょっと趣を変えただけで、ここまで上品な味わいになるとは。

 まだまだ、わたしの知らない世界があるようです。
 
 特にこの、ゴツゴツとしたお肉が素晴らしい。
 どれだけ煮込んだのでしょうか?
 脂っこい見た目なのに、口の中に入れるとホロホロと崩れてスッキリとします。

「牛の肩ロースです。コラーゲンたっぷりなんですよ」
「なるほど。おいしいです」

 キャンプだと、ブタのバラを使いますね。
 牛すじを使いたいところですが、子どもが食べるものですから、クドくて固いスジは合いません。

 ルーには、お野菜の味もちゃんとします。ニンジンは、さすがに星型とはいきませんが。

「……アレ? みなさんお肉の種類が違いますね」

 ルーの色も随分と変わっています。

「アタシはチキン風よ。辛いのが好きだから、味付けもかなり強めにしているわ」
「あたしは、ポークなの」

 ヘルトさんのカレーは、豚バラを使っていますようですね。

「みなさんの分も、おいしそうです。せっかくルーが分かれているのですし、シェアしてみませんか?」

 わたしは、提案してみます。

「え、ええ。いいけれど。どうするヘルト?」
「やめたほうがいいわ師匠!」

 ところが、お二方は難色を示しました。

「チキンはほんとに美味しいから安心して」

 しかし、根負けしたのか、子爵からルーを分けてもらえます。ホントに少しだけ。



「では、チキンを……っ! ヴオオオオオオオオオオオッ!」




 これは……天罰《から》い!
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