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第二章 完 秋季限定キノコピザは、罪の味 ~シスタークリス 最大の天敵現る?~

決着……?

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 しゅた、と、わたしは華麗に着地しました。

「さすが、クレイマーの血か。いや、エンシェントから修業を受けた賜物か」

 オールドマン侯爵が、口元を吊り上げます。

 エンシェントの名も、知っているとは。

「不思議そうな顔をしているな。クレイマー一族に技を教えたのも、ヘンネフェルトを守りしシスター・エンシェントだ。知らなかったのか?」
「初耳ですね」

 そんな時代から、エンシェントってシスターだったのですね。

「代替わりしても、クレイマーはクレイマーか。一筋縄ではいかぬな」
「本気でいらっしゃると?」
「殺し合いではないゆえ、命までは奪わぬ。しかし、多少の負傷は覚悟してもらおうか」
「望むところです」

 こちらは、秋季限定ピザがかかっていますからね。
 しかも、一流ホテルの特別メニューとあっては、手加減できません。

「いざ参る!」
「勝負ですっ!」

 相手の拳と、わたしの拳がぶつかり合いました。

 攻撃の受け流し合いが続きます。

 一発が、ほぼ致命傷にもなりかねません。

 ドレミーさんも執事さんも、固唾を飲んで見守っています。

「影を実体化するとか、もっと奥の手を使うものだとばかり思っていましたが?」

 案外、正統派な武芸者のようですね。

「相手は、エンシェントの弟子でクレイマーの血統。ハンパな術式など看破されよう。それに」

 真正面から、正拳突きが飛んできました。

「小細工など児戯に等しい!」

 なんだか、うれしそうですね。

「久しいぞ、この感覚は。吾輩の拳や脚をまともに受け止められるのは、クレイマーくらいだった」

 なるほど。これまで正々堂々と勝負できる相手がいなかったと。

「今、その感触が戻ってきつつある。貴公が負けたら、わが眷属となってもらおう」
「わたしたちシスターの血液は、あなた方には毒では?」

 我々聖職者の血は、神によって清められています。
 アンデッドにならないためと、アンデッドの眷属にならないため。

 その分だけ、相当の修行と節制が求められますが。

「シスターの血なんぞいらん。吾輩の側に仕えるのだ」
「勝てたら、考えて差し上げます」

 もちろん、勝てたらの話ですが。

「貴公は、望みの品はあるか?」
「ドレミーさんをあきらめてくだされば、他には何も」

 わたしの欲望は強いですからね。この魔王でさえ、対応できますまい。

「よかろう。吾輩も男だ。約束は守ろうではないか。だが、貴公では吾輩には勝てぬ!」
「それは勝ってからおっしゃいなさい!」

 殴り合いは、数分に及びました。

 結果どうなったかというと……。


「飽きた」

「わたしもです」

 どちらも、拳を収めました。

 燃え尽きたといいましょうか。
 一生分の打ち合いの後、両者とも攻撃の手を止めました。

「やはり、慣れないことはするものではない」

 執事さんにハンカチを用意させ、侯爵は手を拭きます。

「まったくです」

 息を整えながら、わたしも汗を拭いました。

 わたしは本来、回復や浄化が主な仕事です。
 本来こんなガチンコ殴り合いは、性分ではありません。
 ミュラーさんや、シスターエンシェントの方が適任です。

 対して、侯爵はおそらく絡め手が専門でしょう。
 小細工はお嫌いだそうですが、真っ向勝負が得意とは言えません。
 ドラゴンを手篭めにできるほどの魔力を、所持しているのです。
 存分に使えばいいものを、わたしに合わせてくださいました。

「おそらく、このままでは千日手になるかと」 
「それでも、決着とは言えぬな。術式を制限している貴公は、対ヴァンパイア戦の攻め手に欠けている。そんなものは、フェアプレイとは呼べぬわ」

 お互い戦闘に不慣れな職なのに、魔法を使わず拳だけで戦ったのです。こうなることは、目に見えていました。

「先代はどうやって、あなたと戦ったのです?」
「同じだよ。戦闘をして、その後はこちらが料理を振る舞った。食えたら勝ち。残したら負けというルールでな」

 ほほう。大食い勝負でしたか。
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