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第一章 『読み合い』って格ゲーの意味かよ!?
第1話 後輩女子の部屋が、子ども部屋おじさんみたいだった
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『紺太センパイ、ヒマっすよね? 読み合いしましょう!』
後輩の相川 実代から、電話で呼び出された。
読み合いか。そういえば、もうすぐネット新人賞の締め切りだな。
今日は土曜日で、学校は休みだ。文芸部もない。
よし、オレは重い腰を上げた。
手に持ったのは、書きかけのラノベである。
新人賞に送って一次も通らなかったものを、更に改稿した。
オレは城浦 紺太という名前だ。が、実代はみんなが見ていない中では下の名前で呼んでくる。
まあ、ちょっとうれしいけれど。
とにかく、すごい緊張する。
「センパーイ、こっちっす」
待ち合わせ場所のコンビニ前で、実代が手を降ってきた。
ショートカットの茶髪で、クリーム色のシャツに黄色いカーディガンという出で立ち。
下は短い赤茶色のスカートで、茶色のストッキングである。
手をふるたびに、少し大きめの胸が揺れた。
「お前、バレてないか?」
「なにがっすか?」
「他のクラスのヤツとか、部員に見られたちは」
「顔知らないっす。教室ではずっとラノベ読んでるんで」
なんてヤツだろう。誰も声をかけてこないのか?
「無防備すぎだろ。ちゃんと周りを見ろよ」
「周りを見たら、緊張しちゃうじゃないっすか。死ぬっす」
コイツ、見た目は陽キャだ。
しかし中身は、バリッバリの筋金入り陰キャである。
部員たちにも声をかけられない。
そんなやつがオレとだけは普通に話しているんだから、わからないものだ。
お菓子を買い込んで、いざ出発である。
実代の家は、ごく普通の一般的な家屋だ。二階建ての一軒家である。
「どうぞー」
「お邪魔します」
お菓子類を両手に持って、実代についていく。
「こっちがあたしの部屋っす」
実代が、ドアを開けてくれた。
「うっわああ」
超がつくほど、オス度の高い部屋だ。
男友だちの部屋が、まさにこんな感じである。
ゲーミングPCなんて、男友だちの部屋でしか見たことがない。
それでもレアケースである。
よほどやり込んでいないと、ここまでこだわるかどうか。
まさに『子ども部屋おじさん』みたいだ。
なのに、男の匂いや気配はまったくしない。
完全に、実代の私物だろうと思えた。
色合いがすべて、ピンク系だったからだ。
「アニキか弟と、部屋を共有しているとか?」
「してないっすよ? あたし一人っ子なんで。イトコのねーちゃんも年が離れてるっす。その人は車好きなんすよね」
たしか実代のやつ、高一なのにやたらディテールにこだわったドライブ日常物を書いてきたことがあったっけ。
「このシートも、そのイトコに選んでもらったっす」
高そうなオフィスチェアに、実代は腰を沈めた。勢いをつけて、クルクルクルーと回る。
『ゲームプレイ配信者の部屋です』と言われたら、信じてしまいそうだ。
「やっぱ、ガッカリしたっすか? 女のコの部屋っぽくないから」
オレの反応を見て、実代がチェアの回転を止めた。
「いや。いいんだ。偏見よくない。いつも言っているだろうが」
オレと実代は、我が文芸部でも数少ないネット小説愛好家である。
狭い視野で物事を見ないようにしようと、オレたちは誓い合った。
それをオレが破ってどうする。
「ありがとうっすセンパイ」
スタッと、実代が立ち上がった。
「おっとっと……」と、よろける。
「危ねえぞ」と、オレは背中を持ってやった。
「あ……」
実代の顔が、だんだん赤くなっていく。
オレの方も、顔が熱くなった。
「そ、それよりほら、読み合いっすよ。読み合い! さっそく始めるっす!」
実代は、こたつテーブルにあるノートPCに視線を向ける。
「おう、そうだな。今回はさ、自信があるんだ。まあ見て……」
しかし、実代はノートPCを開かない。
隣にあったゲームコントローラーを握って、テレビの電源をつけた。
オレの父親が遊んでいた当時の古い格闘ゲームが、画面に映る。
「ほら、センパイの分っすよ」
言われて、オレもコントローラーを差し出された。
「なんのマネだ? 読み合いだろ? 小説の」
「はあ? 何を言ってるんすか? 読み合いっ釣ったら格ゲーでしょうが!」
「お前こそ何を言ってんだ!?」
読み合いって格ゲーのことかよ!?
後輩の相川 実代から、電話で呼び出された。
読み合いか。そういえば、もうすぐネット新人賞の締め切りだな。
今日は土曜日で、学校は休みだ。文芸部もない。
よし、オレは重い腰を上げた。
手に持ったのは、書きかけのラノベである。
新人賞に送って一次も通らなかったものを、更に改稿した。
オレは城浦 紺太という名前だ。が、実代はみんなが見ていない中では下の名前で呼んでくる。
まあ、ちょっとうれしいけれど。
とにかく、すごい緊張する。
「センパーイ、こっちっす」
待ち合わせ場所のコンビニ前で、実代が手を降ってきた。
ショートカットの茶髪で、クリーム色のシャツに黄色いカーディガンという出で立ち。
下は短い赤茶色のスカートで、茶色のストッキングである。
手をふるたびに、少し大きめの胸が揺れた。
「お前、バレてないか?」
「なにがっすか?」
「他のクラスのヤツとか、部員に見られたちは」
「顔知らないっす。教室ではずっとラノベ読んでるんで」
なんてヤツだろう。誰も声をかけてこないのか?
「無防備すぎだろ。ちゃんと周りを見ろよ」
「周りを見たら、緊張しちゃうじゃないっすか。死ぬっす」
コイツ、見た目は陽キャだ。
しかし中身は、バリッバリの筋金入り陰キャである。
部員たちにも声をかけられない。
そんなやつがオレとだけは普通に話しているんだから、わからないものだ。
お菓子を買い込んで、いざ出発である。
実代の家は、ごく普通の一般的な家屋だ。二階建ての一軒家である。
「どうぞー」
「お邪魔します」
お菓子類を両手に持って、実代についていく。
「こっちがあたしの部屋っす」
実代が、ドアを開けてくれた。
「うっわああ」
超がつくほど、オス度の高い部屋だ。
男友だちの部屋が、まさにこんな感じである。
ゲーミングPCなんて、男友だちの部屋でしか見たことがない。
それでもレアケースである。
よほどやり込んでいないと、ここまでこだわるかどうか。
まさに『子ども部屋おじさん』みたいだ。
なのに、男の匂いや気配はまったくしない。
完全に、実代の私物だろうと思えた。
色合いがすべて、ピンク系だったからだ。
「アニキか弟と、部屋を共有しているとか?」
「してないっすよ? あたし一人っ子なんで。イトコのねーちゃんも年が離れてるっす。その人は車好きなんすよね」
たしか実代のやつ、高一なのにやたらディテールにこだわったドライブ日常物を書いてきたことがあったっけ。
「このシートも、そのイトコに選んでもらったっす」
高そうなオフィスチェアに、実代は腰を沈めた。勢いをつけて、クルクルクルーと回る。
『ゲームプレイ配信者の部屋です』と言われたら、信じてしまいそうだ。
「やっぱ、ガッカリしたっすか? 女のコの部屋っぽくないから」
オレの反応を見て、実代がチェアの回転を止めた。
「いや。いいんだ。偏見よくない。いつも言っているだろうが」
オレと実代は、我が文芸部でも数少ないネット小説愛好家である。
狭い視野で物事を見ないようにしようと、オレたちは誓い合った。
それをオレが破ってどうする。
「ありがとうっすセンパイ」
スタッと、実代が立ち上がった。
「おっとっと……」と、よろける。
「危ねえぞ」と、オレは背中を持ってやった。
「あ……」
実代の顔が、だんだん赤くなっていく。
オレの方も、顔が熱くなった。
「そ、それよりほら、読み合いっすよ。読み合い! さっそく始めるっす!」
実代は、こたつテーブルにあるノートPCに視線を向ける。
「おう、そうだな。今回はさ、自信があるんだ。まあ見て……」
しかし、実代はノートPCを開かない。
隣にあったゲームコントローラーを握って、テレビの電源をつけた。
オレの父親が遊んでいた当時の古い格闘ゲームが、画面に映る。
「ほら、センパイの分っすよ」
言われて、オレもコントローラーを差し出された。
「なんのマネだ? 読み合いだろ? 小説の」
「はあ? 何を言ってるんすか? 読み合いっ釣ったら格ゲーでしょうが!」
「お前こそ何を言ってんだ!?」
読み合いって格ゲーのことかよ!?
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