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第一章 『読み合い』って格ゲーの意味かよ!?
第12話 好き嫌い
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昼になり、いつものようにメシをごちそうになる。
「毎回悪いな」
「いいんすよ。今日はナポリタンす」
赤いパスタが、こたつテーブルに並ぶ。
輪切りにされたピーマンが、ドサッと山盛りになっている……。
「いただきます!」
オレは手を合わせて、ナポリタンをフォークで巻いた。ケチャップのいい香りが、食欲をそそる。
「はむ……これは最高だな!」
お上品なトマトソースなんかではない。
まごうことなく、ケチャップの味わいだ。これがたまらん。
「ありがとうっす!」
安心したのか、実代もハバネロをドバかけして、ナポリタンを箸で食う。
「お前、箸派なのな」
「はい。ナポリタンはおかずなので」
実代の皿には、当然のように茶碗があった。実代はまたしても当然のごとく、オンザライスをしてナポリタンを貪る。
「くうう、これっすよ。ナポリタンと言ったら!」
すごく満足げに、実代はパスタとライスを同時に食う。
「たしかに、メシがあるとうまそうだな」
「やってみるっすか?」
「試していいか? オレに合うかわからないから、半ライスで頼む」
「んじゃあ、持ってくるっす」
数分後、半ライスを持ってきた。
うん。これはおかずだ。ナポリタンに、こんな一面があったなんて。
「マジでウマイよ、実代。これって、自家製のパスタソースなのか?」
用意してもらったナポリタンには、玉ねぎとピーマンがやたら追加されていた。市販ではあまり見ないよな。
「違うっす。市販のソースだと物足りないので、ピーマンは大量に追加したっす」
「そ、そうか」
オレは、ピーマンをどけた。
「やっぱり、今回の相撲キャラといい、この間のお話とかも聞いて思ったことがあるっす」
「この間の話って?」
「センパイのお姉さんとご友人のお話っすよ」
ああ、百合を書く参考にするって言ってたっけ。
「やっぱ、好き嫌いはダメっすよ」
言いながら、実代がピーマンごとパスタをバリボリ食べる。
「お、おう」
「偏見はよくないっすね。そうすると、もっと色々試せると思うんすよ。格ゲーも、小説も」
皿の脇にどけていたオレのピーマンを、実代はスススっとオレの方へ寄せる。
「ま、まあ、ムリはよくないんじゃないかなって思うけどな」
オレはナポリタンからピーマンをどける。
「誰だって、苦手なものがあるだろ? ほら、衣笠部長とか」
衣笠とは、我が校の文芸部で部長を務める三年の女子だ。
教師から生徒会に推薦されたのに、文芸部を優先したほどの文芸ガチ勢である。
「あー。あの人は誰も寄せ付けない感じっすよねー」
せっかくオレがどけたピーマンを、実代は再び寄せてきた。
「我が道を行く感じだろ? オレ、苦手なんだよ」
苦手なピーマンを、再び皿の隅に集める。
「お前、部長とはよく衝突するよな?」
先日の、衣笠部長とのやり合いを思い出していた。
いつにも増して、激しい口論をしていたが。
「まあ。そうっすね。仲良くはないっす」
またしても、実代はピーマンをオレのパスタにオンザパスタした。
「気に食わないか?」
「ほめないで指摘だけってスタイルは、性に合わないっす」
それは、オレも思う。
いい面に気づかない部員もいるだろうし。
そこは誘導してあげてもよさそうだが。
「衣笠部長の指導方法は、全体的に古いっす。ずっとやってきたことが染み付いているというか」
「だなぁ。しかし、誰も何も言えないからな」
あの方法が、すっかり定着してしまっているのは確かかも。
「でも、歩み寄っていくのも大切かもしれないっす」
箸を口に含みながら、実代はナポリタンをゆっくりと咀嚼する。
ピーマンの苦味を確かめるかのように。
「ムリして合わせる必要性も、感じないぜ?」
「言われてみれば、そうっす。とはいっても、相手の懐に飛び込む勇気も、必要なのではナイかなっと」
ううむ。
「だから、センパイ」
「なんだよ?」
「ピーマン食べてくださいっす」
やはり、バレていたのか。
「なんというか、ガキの頃から苦手意識があるんだよ」
給食でも、食えなくて残していたっけ。さすがに捨てはしなかったが、克服できてはいない。
「あたしも昔、苦手だったんすよ。でも、ナポリタンのピーマンだけは好きになって。そこから平気になったっす」
「そっか。じゃあ、食ってみる」
仕方なく、オレはピーマンを一気に口の中へ。
バリバリっという音と苦味が、ドッと押し寄せてくる。
「うん。うん……ん?」
なんだろう? ケチャップとからまっているおかげか、わずかならがうまみがある。
「これくらいの量なら、いけるっしょ?」
「ああ。うまいかといわれたらわからんが、嫌いではないな」
いい感じのアクセントになっているというか。
「苦手は克服できそうっすか?」
「まあ、な」
苦手を、乗り越えるか。それもいいかもしれないな。
実代と遊びつつ、そんなことをずっと考えていた。
帰る時間となり、オレは靴を履く。
「次回作は、ちょっとやり方を変えてみるかな。いつもパターン化していて、ちょっとマンネリ気味だったし」
「イヤっすよ。おっさんばかりになるっす」
「違う。そっちの路線を抑えようかなって思ったのっ」
ハードボイルドよりな作風から、もう少し歩み寄っていこうかなと思ったのだ。
帰るなり、オレはプロットを立ち上げた。
いつものスタイルに戻りつつあるところを抑えながら。
「毎回悪いな」
「いいんすよ。今日はナポリタンす」
赤いパスタが、こたつテーブルに並ぶ。
輪切りにされたピーマンが、ドサッと山盛りになっている……。
「いただきます!」
オレは手を合わせて、ナポリタンをフォークで巻いた。ケチャップのいい香りが、食欲をそそる。
「はむ……これは最高だな!」
お上品なトマトソースなんかではない。
まごうことなく、ケチャップの味わいだ。これがたまらん。
「ありがとうっす!」
安心したのか、実代もハバネロをドバかけして、ナポリタンを箸で食う。
「お前、箸派なのな」
「はい。ナポリタンはおかずなので」
実代の皿には、当然のように茶碗があった。実代はまたしても当然のごとく、オンザライスをしてナポリタンを貪る。
「くうう、これっすよ。ナポリタンと言ったら!」
すごく満足げに、実代はパスタとライスを同時に食う。
「たしかに、メシがあるとうまそうだな」
「やってみるっすか?」
「試していいか? オレに合うかわからないから、半ライスで頼む」
「んじゃあ、持ってくるっす」
数分後、半ライスを持ってきた。
うん。これはおかずだ。ナポリタンに、こんな一面があったなんて。
「マジでウマイよ、実代。これって、自家製のパスタソースなのか?」
用意してもらったナポリタンには、玉ねぎとピーマンがやたら追加されていた。市販ではあまり見ないよな。
「違うっす。市販のソースだと物足りないので、ピーマンは大量に追加したっす」
「そ、そうか」
オレは、ピーマンをどけた。
「やっぱり、今回の相撲キャラといい、この間のお話とかも聞いて思ったことがあるっす」
「この間の話って?」
「センパイのお姉さんとご友人のお話っすよ」
ああ、百合を書く参考にするって言ってたっけ。
「やっぱ、好き嫌いはダメっすよ」
言いながら、実代がピーマンごとパスタをバリボリ食べる。
「お、おう」
「偏見はよくないっすね。そうすると、もっと色々試せると思うんすよ。格ゲーも、小説も」
皿の脇にどけていたオレのピーマンを、実代はスススっとオレの方へ寄せる。
「ま、まあ、ムリはよくないんじゃないかなって思うけどな」
オレはナポリタンからピーマンをどける。
「誰だって、苦手なものがあるだろ? ほら、衣笠部長とか」
衣笠とは、我が校の文芸部で部長を務める三年の女子だ。
教師から生徒会に推薦されたのに、文芸部を優先したほどの文芸ガチ勢である。
「あー。あの人は誰も寄せ付けない感じっすよねー」
せっかくオレがどけたピーマンを、実代は再び寄せてきた。
「我が道を行く感じだろ? オレ、苦手なんだよ」
苦手なピーマンを、再び皿の隅に集める。
「お前、部長とはよく衝突するよな?」
先日の、衣笠部長とのやり合いを思い出していた。
いつにも増して、激しい口論をしていたが。
「まあ。そうっすね。仲良くはないっす」
またしても、実代はピーマンをオレのパスタにオンザパスタした。
「気に食わないか?」
「ほめないで指摘だけってスタイルは、性に合わないっす」
それは、オレも思う。
いい面に気づかない部員もいるだろうし。
そこは誘導してあげてもよさそうだが。
「衣笠部長の指導方法は、全体的に古いっす。ずっとやってきたことが染み付いているというか」
「だなぁ。しかし、誰も何も言えないからな」
あの方法が、すっかり定着してしまっているのは確かかも。
「でも、歩み寄っていくのも大切かもしれないっす」
箸を口に含みながら、実代はナポリタンをゆっくりと咀嚼する。
ピーマンの苦味を確かめるかのように。
「ムリして合わせる必要性も、感じないぜ?」
「言われてみれば、そうっす。とはいっても、相手の懐に飛び込む勇気も、必要なのではナイかなっと」
ううむ。
「だから、センパイ」
「なんだよ?」
「ピーマン食べてくださいっす」
やはり、バレていたのか。
「なんというか、ガキの頃から苦手意識があるんだよ」
給食でも、食えなくて残していたっけ。さすがに捨てはしなかったが、克服できてはいない。
「あたしも昔、苦手だったんすよ。でも、ナポリタンのピーマンだけは好きになって。そこから平気になったっす」
「そっか。じゃあ、食ってみる」
仕方なく、オレはピーマンを一気に口の中へ。
バリバリっという音と苦味が、ドッと押し寄せてくる。
「うん。うん……ん?」
なんだろう? ケチャップとからまっているおかげか、わずかならがうまみがある。
「これくらいの量なら、いけるっしょ?」
「ああ。うまいかといわれたらわからんが、嫌いではないな」
いい感じのアクセントになっているというか。
「苦手は克服できそうっすか?」
「まあ、な」
苦手を、乗り越えるか。それもいいかもしれないな。
実代と遊びつつ、そんなことをずっと考えていた。
帰る時間となり、オレは靴を履く。
「次回作は、ちょっとやり方を変えてみるかな。いつもパターン化していて、ちょっとマンネリ気味だったし」
「イヤっすよ。おっさんばかりになるっす」
「違う。そっちの路線を抑えようかなって思ったのっ」
ハードボイルドよりな作風から、もう少し歩み寄っていこうかなと思ったのだ。
帰るなり、オレはプロットを立ち上げた。
いつものスタイルに戻りつつあるところを抑えながら。
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