「読み合いしましょう」と同じ文芸部の後輩宅に誘われたので自作ラノベを用意したら格ゲーに付き合わされた。読み合いってそういう意味じゃねえから!

椎名 富比路

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第三章 お泊りでも格ゲーかよ!?

第23話 図書館デートで、攻略本読むなよ

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 カリカリカリ、と実代みよがシャーペンの音を走らせる。

 オレたちは約束通り、図書館で勉強していた。

 よく考えたら、こいつが真面目に勉強している姿なんて始めてみたな。
 普段は、眼鏡をかけているのか。
 ずっと計算式を解いている。

 オレも、苦手な英単語を綴り続けた。地味な勉強法だが、静かな環境ではこれが一番である。

 ざっくり二五分集中した後、「ふーっ」と、実代が休憩を始めた。まだ二五分しか経っていない。

 実代はさっさと数学の教科書を閉じて、日本史の教科書を用意した。首や肩を回し、目をつぶって深く呼吸をする。

 まあいいか。オレは構わず英単語をノートに書き記す。

 およそ五分後、実代が動き出した。日本史の教科書を開き、土器の種類や特徴を筆記し始める。

 二五分が経つと、また勉強を止めた。今度は、退席するらしい。

 実代が、オレの肩を叩く。

 オレは勉強中なのだが?

 それでも、実代はオレの顔をじっと見つめる。ついてこいというのか?

 まあいい。オレも疲れてきた。休むとしよう。

 廊下の自販機で、紙コップのアイスコーヒーをすすった。

「ふう。やっぱああいうところで勉強すると捗るなぁ」

 いつもはコーヒーショップの雑踏の中で、読書をしている。家だと執筆をしてしまうから。ふとした声や物音などが心地よいのだ。

 その点、ここは勉学に集中できる。
 インプットもアウトプットも思いのままだ。

「お前さ、一つに集中するんじゃなくて、別々の教科をちょっとずつやるスタイルなんだな?」

 オレからすると、効率が悪そうに見えるのだが。

「ポモドーロ・テクニックっす。知らないっすか?」
 コーラを飲みながら、実代が答えた。
「トマトがなんで、勉強に関わってくるんだよ?」

 英単語を調べていたら、ポモドーロという言葉が出てきたのである。

「知らないんすね」


 ポモドーロ・テクニックとは、二五分集中して五分休むを繰り返す時間管理方法だ。発案者がトマト型のキッチンタイマーを使っていたことに由来する。

「ああ、なんか聞いたことがあるな。頭を切り替える手段に使うんだったっけ?」
「そうっす。紺太こんたセンパイもやってみたらどうっすか?」
「んじゃ、チャレンジしてみようかな」

 コーヒーを飲み終わって、席へ戻る。

 英単語は、もういいか。次は、化学と。酸化に還元……と。

 実代は、漢詩か。国語は大得意だろうに。

 しかし、オレも古文はあまり得意じゃないな。独特の言い回しがしんどく、内容も硬い。

 おお、いつのまにか二五分経っている。次は、なにをするか。世界史だな。

 実代はオレなんていないかのように、自分の勉強に集中していた。

 かっこいいな。

 いつものバカっぽい言動とは打って変わって、真剣に学問に励んでいる。

 なんか妬けるなあ。

 はっ! なにを考えているんだ? 勉強に嫉妬するとか。アホすぎるじゃないか。 

 そんなことをしている間に、一一時半を迎える。

 ああ、結構勉強したな。かなりいいぞ、ポモドーロ・テクニックって。

 実代は席を立ち……本棚に向かった。何を調べる気だ? 郷土史かな? しかし、日本史はさっきやっていたし。

 ん? あのヤロウ、格ゲーの攻略本を持ってきやがった。

 勉強終わりやがったのか。一人だけ抜け駆けとは。まったくよ。

 オレも、小説を借りていくかな。ちょっくら、大人向けを読んでみたかったんだ。映画化されて、気になっていたのが一冊ある。これだこれだ。

 今度はオレが実代の肩を叩き、退館を促す。

 二人で、お目当ての本を借りる手続きを終えた。

「ふーっ。充実したっす」
「お前、ソッコーで勉強やめたろ?」
「息抜きは大事っす。試験範囲はあらかた抑えたので、今日は復習だけっしたから」

 なんという秀才だ。成績上位なのもうなずける。
 朝から晩まで小説のことしか考えていないオレとは、大違いだ。

「じゃあ、お昼行くっす。実は、それが目当てだったんすよ」
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