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第一章 魔獣少女と単眼魔王先輩
第1話 テメエは魔獣少女じゃ二番目だ
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「てめえは【魔獣少女】じゃ二番目だ」
港のコンテナに腰かけながら、わたしは水面に浮かぶ魔獣少女を見下ろす。
わたしの出で立ちは、ミニ浴衣だ。黒い革製で、フリルが付いている。夜だからわかりづらいだろうが。結構装飾は豪華だ。手には、黒い鞘に収まった日本刀が。
「なんだ? このセイレーンが二番目だって?」
相手は裾にヒレの付いた超ロングスカートをはいたJKだ。まるで人魚姫のような、上半身裸の少女である。しかも、海の上に浮いているではないか。
「あんた、ホントに来栖《クルス》、仁絵《ヒトエ》か? クラスの隅っこにいるような地味子だってのに、えらく大きく出るじゃないか」
そう、わたしはクラスだと地味で目立たない。おかっぱ頭なので、『コケシ』とからかわれているほど。しかしひとたび魔獣少女となると、気が大きくなるのだ。その理由は……。
「ああ。大したことねえな」
「じゃあ、一番は誰だって?」
わたしは、自身の胸に手を当てた。反対の手で、カーテシーを決める。
「お前がだと? いくらかつての魔王といえど、吹いてんじゃないよっ!」
「水の上を走るなんざ、わたしでもできらあ」
実はわたしがしゃべっているわけじゃない。わたしに取り憑いている魔物【狭窄公 バロール】が語っているのだ。魔獣少女となることで、わたしはコイツと人格が入れ替わる。
「あはは! お笑いだ。今さっきあんたは、溺れて死んだところじゃないか!」
そうなのだ。運動音痴のわたしはこうなる直前、海に落ちたクラスメイトを助けるために制服のまま海にダイブした。友だちを助けたまではよかったが、自分が沈んだのである。
その直後、変身して事なきを得たが。
「どうよ。オレの魔王としての力、手助けになったろ?」
わたしの片目、前髪でメカクレ状態になっている眼球が、緑色に光った。これが、バロールの本体である。普段は眠っていて、力を発揮すると光ってわたしを魔獣少女へと変えるのだ。
「なにがどうよ、ですか! あなたがイキっていたせいで死にかけたんでしょうが」
虚空に向かって、わたしは怒鳴る。わたしとバロールは、意識を共有しているのだ。
「うるせえな。だからクラスメイトを助けようとしたテメエを助けてやったんだろうが! 温情ってもんだろうが」
「火種はあなたなんですからね!」
このままだと、永久に口ゲンカが終わりそうにない。
「なにをゴチャゴチャと! もう一回、海に落ちな!」
セイレーンが、口から超音波を発した。
「とうっ!」
飛び上がって、わたしは超音波をかわす。
コンテナが、振動で砂のように崩れ落ちた。台湾バナナの香りが、ムワッと潮風に乗って漂ってくる。中身がそれだったんだろう。
わたしは、海へと落下していく。
「サメのエサになりな!」
また、セイレーンが歌い出す。
B級映画でよく見える背びれが、わたしたちの着地ポイントに近づいてくる。
「ホントにサメが来ましたよ!」
「黙ってろ!」
ブーツのつま先が、海に着水した。波紋が広がっていく。
「そらそらそら!」
なんと、わたしは海をダッシュしているではないか。
「バカな。水の上を走っているだと!?」
「だからテメエは二番手なのさ!」
セイレーンが連続で放つ超音波さえ、狭窄公の力を得たわたしには届かない。
「とうっ」
海から飛び上がって、わたしは抜刀する。
バロールの邪眼から、緑色のビームが放出された。ビームが刀の背を焼く。
「今だ、ヒトエ!」
「邪眼・一文字斬りぃ!」
セイレーンに向けて、刀を振り下ろす。魔獣少女となった、クラスメイトへと。
「アハハ、全然間合いが取れていないじゃないか。届かない武器で私を……ぎゃああ!」
ビームの波動が、刀から発射された。セイレーンの身体を、真一文字に切断する。
この刀は、直接相手を直接傷つける刃が主武器ではない。相手の魔獣少女としての力を斬るのだ。
狭窄公いわく、『バロールの家系に代々伝わる妖刀で、【天裂刀 マサムネ】という』らしい。
わたしも魔獣少女になりたてだから、よくわかっていないが。
「ぎゃわわあああ!」
セイレーンの衣装が、はだけていく。
あわれ、セイレーンは一糸まとわぬ姿に。やがて、クラスメイトの姿に戻っていた。
「おっと」
わたしは、少女を抱きかかえて、地上に戻った。変身も解く。
「着るものは、ないな」
「バナナの葉っぱしかないですよ」
「しかたない。それで隠してやれ」
わたしは、バナナの葉で少女の裸体を隠してあげた。
「こんな調子で、勝てるんでしょうか。わたし」
心の中で、わたしは狭窄公センパイに問いかける。
「勝ってもらわないと困るんだ。オレサマの友人を亡き者にした相手を、探すまでは」
そう。この戦いは、狭窄公の友人を葬った相手を探す、弔いでもあった。
「ヒトエちゃん!」
友だちのユキちゃんが、わたしを呼ぶ。大量のパトランプとともに、姿を見せた。さっき、このセイレーンに捕まっていた子だ。
「ありがとう、ユキちゃん。警察を呼んで来てくれたんだね」
「うわ、海道さんじゃん」
倒れている裸の少女の前に、ユキちゃんが座り込む。
「さっきの化け物に、捕まっていたみたい。ユキちゃんもおじさんに送ってもらうんだよ」
「うん。じゃあね」
適当にでっち上げ、わたしは去っていった。
「ケガはなかったか、ヒトエ」
「大丈夫だったよ」
警察官である父の車に乗る。
父は知らない。わたしが、異界から来た魔獣と契約していることを。
わたしが一番、驚いているんだから。
魔獣の力を操る魔法少女、通称【魔獣少女】として悪い魔女と戦うことになるなんて。
港のコンテナに腰かけながら、わたしは水面に浮かぶ魔獣少女を見下ろす。
わたしの出で立ちは、ミニ浴衣だ。黒い革製で、フリルが付いている。夜だからわかりづらいだろうが。結構装飾は豪華だ。手には、黒い鞘に収まった日本刀が。
「なんだ? このセイレーンが二番目だって?」
相手は裾にヒレの付いた超ロングスカートをはいたJKだ。まるで人魚姫のような、上半身裸の少女である。しかも、海の上に浮いているではないか。
「あんた、ホントに来栖《クルス》、仁絵《ヒトエ》か? クラスの隅っこにいるような地味子だってのに、えらく大きく出るじゃないか」
そう、わたしはクラスだと地味で目立たない。おかっぱ頭なので、『コケシ』とからかわれているほど。しかしひとたび魔獣少女となると、気が大きくなるのだ。その理由は……。
「ああ。大したことねえな」
「じゃあ、一番は誰だって?」
わたしは、自身の胸に手を当てた。反対の手で、カーテシーを決める。
「お前がだと? いくらかつての魔王といえど、吹いてんじゃないよっ!」
「水の上を走るなんざ、わたしでもできらあ」
実はわたしがしゃべっているわけじゃない。わたしに取り憑いている魔物【狭窄公 バロール】が語っているのだ。魔獣少女となることで、わたしはコイツと人格が入れ替わる。
「あはは! お笑いだ。今さっきあんたは、溺れて死んだところじゃないか!」
そうなのだ。運動音痴のわたしはこうなる直前、海に落ちたクラスメイトを助けるために制服のまま海にダイブした。友だちを助けたまではよかったが、自分が沈んだのである。
その直後、変身して事なきを得たが。
「どうよ。オレの魔王としての力、手助けになったろ?」
わたしの片目、前髪でメカクレ状態になっている眼球が、緑色に光った。これが、バロールの本体である。普段は眠っていて、力を発揮すると光ってわたしを魔獣少女へと変えるのだ。
「なにがどうよ、ですか! あなたがイキっていたせいで死にかけたんでしょうが」
虚空に向かって、わたしは怒鳴る。わたしとバロールは、意識を共有しているのだ。
「うるせえな。だからクラスメイトを助けようとしたテメエを助けてやったんだろうが! 温情ってもんだろうが」
「火種はあなたなんですからね!」
このままだと、永久に口ゲンカが終わりそうにない。
「なにをゴチャゴチャと! もう一回、海に落ちな!」
セイレーンが、口から超音波を発した。
「とうっ!」
飛び上がって、わたしは超音波をかわす。
コンテナが、振動で砂のように崩れ落ちた。台湾バナナの香りが、ムワッと潮風に乗って漂ってくる。中身がそれだったんだろう。
わたしは、海へと落下していく。
「サメのエサになりな!」
また、セイレーンが歌い出す。
B級映画でよく見える背びれが、わたしたちの着地ポイントに近づいてくる。
「ホントにサメが来ましたよ!」
「黙ってろ!」
ブーツのつま先が、海に着水した。波紋が広がっていく。
「そらそらそら!」
なんと、わたしは海をダッシュしているではないか。
「バカな。水の上を走っているだと!?」
「だからテメエは二番手なのさ!」
セイレーンが連続で放つ超音波さえ、狭窄公の力を得たわたしには届かない。
「とうっ」
海から飛び上がって、わたしは抜刀する。
バロールの邪眼から、緑色のビームが放出された。ビームが刀の背を焼く。
「今だ、ヒトエ!」
「邪眼・一文字斬りぃ!」
セイレーンに向けて、刀を振り下ろす。魔獣少女となった、クラスメイトへと。
「アハハ、全然間合いが取れていないじゃないか。届かない武器で私を……ぎゃああ!」
ビームの波動が、刀から発射された。セイレーンの身体を、真一文字に切断する。
この刀は、直接相手を直接傷つける刃が主武器ではない。相手の魔獣少女としての力を斬るのだ。
狭窄公いわく、『バロールの家系に代々伝わる妖刀で、【天裂刀 マサムネ】という』らしい。
わたしも魔獣少女になりたてだから、よくわかっていないが。
「ぎゃわわあああ!」
セイレーンの衣装が、はだけていく。
あわれ、セイレーンは一糸まとわぬ姿に。やがて、クラスメイトの姿に戻っていた。
「おっと」
わたしは、少女を抱きかかえて、地上に戻った。変身も解く。
「着るものは、ないな」
「バナナの葉っぱしかないですよ」
「しかたない。それで隠してやれ」
わたしは、バナナの葉で少女の裸体を隠してあげた。
「こんな調子で、勝てるんでしょうか。わたし」
心の中で、わたしは狭窄公センパイに問いかける。
「勝ってもらわないと困るんだ。オレサマの友人を亡き者にした相手を、探すまでは」
そう。この戦いは、狭窄公の友人を葬った相手を探す、弔いでもあった。
「ヒトエちゃん!」
友だちのユキちゃんが、わたしを呼ぶ。大量のパトランプとともに、姿を見せた。さっき、このセイレーンに捕まっていた子だ。
「ありがとう、ユキちゃん。警察を呼んで来てくれたんだね」
「うわ、海道さんじゃん」
倒れている裸の少女の前に、ユキちゃんが座り込む。
「さっきの化け物に、捕まっていたみたい。ユキちゃんもおじさんに送ってもらうんだよ」
「うん。じゃあね」
適当にでっち上げ、わたしは去っていった。
「ケガはなかったか、ヒトエ」
「大丈夫だったよ」
警察官である父の車に乗る。
父は知らない。わたしが、異界から来た魔獣と契約していることを。
わたしが一番、驚いているんだから。
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