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第二章 魔獣少女と、サキュバスギャルとの熱烈な密着!

第13話 体育の授業を超越したバトル

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 道場が、ザワつく。

「何を言っておる? 御堂は先生がお相手しますぞ。彼女も有段者ですじゃ」

 年老いた空手家教諭は、穏やかではあるが反論をした。

 先生の言うとおり、マナさんは空手二段の腕前がある。いじめっ子も、空手で撃退していたそうだ。

「警察官のお嬢さんで剣道の使い手と、空手の有段者。二対一で結構、と申したのです。それくらいのリスクを味わいたいのです」
「リスク? それだけ危険な目に遭いたいと?」
「でなければ、財閥のトップには立てませんわ」

 空手教諭は、呆れている。

「危なくなったら、いつでも止めますぞ」
「結構。マナさん、前へ。どなたか、御堂さんにもプロテクターを貸して差し上げて」

 マナさんがプロテクターを付けた直後、試合が始まった。

 二人並んで、イヴキ様と向かい合う。

「お待ちになって」と、イヴキ様がこちらに歩み寄る。わたしたち二人の間に向かって、手を払った。

 何事かわからず、わたしたちは棒立ちに。

「お二方、場所をお開けになって」

 なんとイヴキ様は、わたしたちの間に入って試合を開始するというのだ。どこまでオス度が強いのよ、この人。

 わたしとさんが向かい合い、その間にイヴキ様が立っている状態だ。

「いつでもどうぞ。できれば、お二人同時に」

 イヴキ様の合図で、試合が始まる。

 わたしは挟み撃ちで、イヴキ様に殴りかかった。

 マナさんは、ハイキックを背後から繰り出す。

 イヴキ様は後ろからの蹴りをヒジでガードしつつ、わたしの拳を払う。

「え?」

 ヒジを曲げて、わたしのノドを抑え込んだ。そのまま、後ろへ押し込む。

 ドンと押し込まれて、わたしは尻餅をつく。

「コイツの技、空手じゃない! シラットだ!」

 シラットとは、東南アジアで普及した、王宮を守るための格闘術ではないか。

 体育の授業でシラットとか、どんだけ殺意高いんだ! 型稽古でいいじゃん。

「このやろう!」

 マナさんはヤケになって、ミドルやハイを徹底的に繰り出す。相手がいくらヘッドギアを被っているとはいえ、ちょっと過激すぎないか? 脳は揺れてしまう。

「動きが雑になってきましてよ、御堂さん!」

 しかし、イヴキ様は意に介さない。ミドルはヒザで崩し、ハイは足をつかんで投げ飛ばす。

 わたしもちょこちょこ攻めにかかるが、二度とも腹へのキックで押し倒される。

 異次元の戦いに、道場内は言葉を失っていた。生徒の安全を守るはずの教諭が、この戦闘を止められずにいる。

 といっても、両者ともギリギリを攻めていた。殺意こそ高めだが、踏み込んではいけない領域は心得ているようだ。そこはやはり、格闘家としての誇りだろう。

 こちらも、負けるワケにはいかない。剣道場の看板を背負っている。

 わたしは殴りかかった。

 再び、腹へのケリが襲ってくる。

 相手のキックに対し、わたしは拳の握り方を変えて弾き飛ばす。

 イヴキ様の顔が歪んだ。即座に、足を引っ込める。

「古武術、ですわね」

 足のシビレを気にしつつ、イヴキ様がこちらに意識を向けた。

「剣術って、剣が手から離れたときの対処法も教えるので」
「あなた、やっぱり面白いですわ。わたしが探し求めていた方かも」
「……?」

 イヴキ様が、本気になったのがわかった。カウンター一辺倒だった攻撃が、一気に攻めへと転じる。

 わたしも古武術で対処した。

「やりますね。さすがですわ!」
「それほどでも」
「謙遜なさらなくても。相手を受けつつ攻撃する手足にダメージを与えて、スキあらば自分から仕掛けてくるその姿勢、見事ですわ!」

 えらいわたしを買ってくれるなあ、イヴキ様は。

 しかし、慣れないアジア格闘術に翻弄され、思うように反撃ができない。プロテクターをしていない箇所を狙われ、手も足も動かなくなってきた。

 この人、そこらの魔獣少女より強くない!?

「とどめですわ。来栖さん!」

 前蹴りが、わたしの胸にめり込んだ。

 重力に引き寄せられるかのように、わたしは抵抗もできずに後ろへ倒れ込んだ。

 ああ、これは死んだか?

 倒れた私に、イヴキ様が馬乗りになる。拳を振りかぶった。

 やべ、反撃を――。

「そこまでだ!」

 マナさんが、試合を止める。

 そこで、わたしは意識を手放した。
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