メカクレ根暗少女が、サイクロプス魔王と契約して魔獣少女になり、魔界の頂点を目指す! でも、キャットファイトだなんて聞いてませんが!?

椎名 富比路

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第三章 今度の敵はバイク! 魔獣少女の夏

第26話 魔獣少女の本能

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 弟たちは外傷こそなさそうだが、熱中症にかかったように目を回している。生気を失われた感じといえばいいか。

「うーん、ショタショタ! ショタの情熱って、とっても濃厚ね! 若いだけあって!」

 指をピースサインにして、魔獣少女は腰をカクカクさせている。見た目は、特攻服。彼女がまたがっているのは、オフロードのバイクだ。バイクに刺さった大漁旗には、【飽喪失】と書かれている。読めない。

「私はケンタウロスの王、アキレス! 世界のショタは、わたしのものだ!」

 手を演劇風に大きく広げて、グラウンドの面々にアピールをする。ああ、【飽喪失アキレス】と読むのか。わかりづれえ。

「バロール先輩、ケンタウロスの王だと、ケイローンでは?」

 賢者ケイローンのほうが、ケンタウロス王としてしっくり来そうだが。

「実際、ケイローンに育てられた経緯があるから、いいんじゃね?」

 まあ、自分の足ではなくバイクで疾走している時点で、史実無視だし。

 かくいうバロール先輩も、史実ではサイクロプスと縁もゆかりもない。

 それより、弟を助けないと。

「ジローを助けに行きます!」
「おう、行けヒトエ! 他のガキたちは任せろ」

 ユキちゃんや臨也イザヤさんには、保護者たちの避難を先導してもらう。

「ビースト・クロス!」

 誰もいないのを確認して、変身した。

 マナさんも魔獣少女に変身して、バイクにまたがる。

「バイク対決か! いいねえ! やってやらあ!」
「ヒトエ、アイツはあたしがひきつける。そのウチに!」
「はい! お願いします!」

 マナさんとアキレスのバイク対決が始まった。

 わたしは少年たちを肩に担いで、日陰へと連れて行く。

「ほいほい」

 相手チームも分け隔てなく、日陰の方へ寝かせた。後は監督さんに任せる。

「どうでしょう?」
「気絶しているだけだ。体を冷やしておきます」
「お願いします」

 最後は、弟のジローを助けるだけ。

 しかし、そこでアクシデントが。マナさんがスリップしたのだ。

「アハハ! オンロードで砂まみれのグラウンドなんて走るからだ! タイヤを取られるなんてね!」

 アキレスが、勝ち誇っている。

「おとなしく二対一で戦っていればいいものを、情にほだされてガキのお守りなんて任せるから」

 呆れ果てながら、アキレスは吐き捨てた。

「ふごおお!」

 わたしは、鞘のままアキレスの横っ面をぶん殴る。

「じゃあ、期待どおりにしてやるよ」

 いつもの口調を捨てて、わたしは思う存分魔獣少女を痛めつけた。

「とうとうやる気になったね、魔獣少女バロール! けど、もうあんたの快進撃はおしまいだよ!」

 魔獣少女がバイクを吹かす。真正面から、わたしを跳ね飛ばそうと加速した。

 わたしは、動かずに刀だけを構えて腰を落とす。

「バカな! 居合斬りで対処なんてできるわけないだろ! おとなしくショタ共を渡すんだよ。夢の世界へ連れて行ってやろう。ちょっとそこの茂みに誘導するだけだから!」
「夢の世界へは、一人で行け」

 わたしは刀を抜く。後ろ向きに。

「なあ!?」

 一瞬、アキレスも何をしたかわからなかっただろう。その前に、吹っ飛んでいったから。

 わたしは、刀の鞘を車輪のスポークに突き刺したのだ。

 スピードが乗った状態で車輪を破壊されたから、オンロードは激しく前のめりになって回転をした。タイヤは外れ、魔獣少女も地面へ投げ出される。 

「すごい、どうしてわたし、こんなに怒っているのでしょう?」
『どうやらお前の本能は、仲間や家族に被害が及んだときに発動するようだな』
「本能が?」
『ああ。オレサマたち魔獣少女は、お前らの本能を引き出す作用がある。お前の場合は、家族や友情を大切にしているようだ』

 それを脅かされた時、わたしは真の力を発揮するそうだ。

『正直なトコロ、オレサマもビビってる』
「え、やだあ」

 急に正気に戻る。
  
「ひい! なんだコイツ! 情報と違うぞ!」

 情報? どういうことだ?
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