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第四章 魔獣少女とお嬢様! 本当の敵は!?
第29話 お嬢様のルーツ
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遠足の当日を迎えた。
わたしはあまり、眠れていない。バスで爆睡してしまった。
「ヒトエちゃん、着いたよ」
「おっふ」
ユキちゃんに起こされて、目を覚ます。
「おお、涼しい」
夏直前だというのに、風が気持ちいい。山の中だからか、空気が澄んでいる。
列を組んで、穏やかな川沿いを歩く。
わたしたちの班は、一番うしろだ。それも、かなりみんなと距離を置いている。何が起きてもいいように。
各クラスの周辺には警察が。わたしたちの班には亜希《アキ》さん及び、イヴキ様のボディガードがついている。目には見えないが、気配だけは感じた。
そんな気配さえ感じさせないほど、イヴキ様は優雅に歩いている。ジャージ姿でさえ、艶やかだ。
「わたくしのそばにいれば、百人力ですわ。ご安心なさい。飛んでくる銃弾さえ、受け止めて差し上げましょう」
「いやいや死ぬから」
イヴキ様とマナさんが、漫才を始める。最近この二人が揃うと、毎回こうなるなぁ。
「落ち着いてください、イブキ様」
「そうそう。楽しみだからって、オヤツは逃げないから」
臨也さんとユキちゃんに図星を突かれたのか、イヴキ様はおとなしくなった。
「ま、まあ。お二人が言うならそういたしましょうか」
大げさに咳払いをして、ずんずんと先を急ぐ。
なんて体力オバケだろう? お嬢様というから、てっきり数メートルも歩けば「おうあるけませんわ」とか言い出すと思ったのに。
「どうかなさいましたか、来栖さん? ひょっとしてわたくしのことを、ちょっと歩けば『もう歩けませんわー』とか言い出すワガママなお嬢様だとでも思っていらして?」
「そ、そんなことありませんわー」
わたしは、イヴキ様から視線をそらした。
この人、心でも読めるのか? ほぼ一言一句正解だったが。
おっと、そんなことをしている場合じゃない。
一応、魔獣少女の気配がないか、バロール先輩にも確かめてもらっている。
「バロール先輩は、魔獣少女の気配って感じられないんですか?」
『一度見たやつなら、わかるぜ』
わたしのとなりに、地雷バンギャ系二頭身メカクレ少女が現れた。
『だが、戦ったことがないとわからねえ仕様なんだよ』
「どうしてです?」
『不意打ちできない仕組みだからだ』
相手を魔獣少女だとわかって、生身の状態で攻撃を仕掛けると、反則になるのだという。「正々堂々と戦えないモヤシ」とみなされるらしい。また、九尾の狐が不意打ちで殺された一件もあり、「変身しない限り、魔獣少女の能力は発動すらしない」ことになった。
それもあって、対戦するときは前もって自分が魔獣少女だと周囲に明かす必要があるのだ。
「では、えっと、アキレスでしたっけ? あの魔獣少女を襲撃した相手は、反則扱いになるんじゃ?」
『それが、ならねえんだよ』
お互いに面識がある同士なら、不意打ちはノーカウントとなる。手の内を知っているからだ。
「厳しいルールですね。面倒」
『だろ? だからヤなんだよなー。この手の戦いでルールを覚えるのってさー』
バロール先輩が、わたしの横であぐらをかく。
心配事をよそに、お昼の時間となる。
川沿いの草むらにビニールシートを敷き、お弁当を広げた。
もっともやばかったのは、イヴキ様だ。やたら茶色いモダン焼き一品だけ。焼きそばと目玉焼きのコントラストも、素晴らしいではないか。
「お好み焼きは完全食ですわ。お肉も野菜も炭水化物も、すべて摂取できます」
その理屈は正しいが、おかしい。発想が異次元すぎる。
だが、体に悪いは絶対にうまい。イヴキ様のたくましさが、わたしにはうらやましかった。
「B級グルメが、本当に好きなんですね?」
たしかイヴキ様の会社は、フード業界のはず。
「ええ。祖父がお好み焼きの屋台から、起業を始めたからでしょうね」
イヴキ様のルーツが、お好み焼きだったとは。
わたしはあまり、眠れていない。バスで爆睡してしまった。
「ヒトエちゃん、着いたよ」
「おっふ」
ユキちゃんに起こされて、目を覚ます。
「おお、涼しい」
夏直前だというのに、風が気持ちいい。山の中だからか、空気が澄んでいる。
列を組んで、穏やかな川沿いを歩く。
わたしたちの班は、一番うしろだ。それも、かなりみんなと距離を置いている。何が起きてもいいように。
各クラスの周辺には警察が。わたしたちの班には亜希《アキ》さん及び、イヴキ様のボディガードがついている。目には見えないが、気配だけは感じた。
そんな気配さえ感じさせないほど、イヴキ様は優雅に歩いている。ジャージ姿でさえ、艶やかだ。
「わたくしのそばにいれば、百人力ですわ。ご安心なさい。飛んでくる銃弾さえ、受け止めて差し上げましょう」
「いやいや死ぬから」
イヴキ様とマナさんが、漫才を始める。最近この二人が揃うと、毎回こうなるなぁ。
「落ち着いてください、イブキ様」
「そうそう。楽しみだからって、オヤツは逃げないから」
臨也さんとユキちゃんに図星を突かれたのか、イヴキ様はおとなしくなった。
「ま、まあ。お二人が言うならそういたしましょうか」
大げさに咳払いをして、ずんずんと先を急ぐ。
なんて体力オバケだろう? お嬢様というから、てっきり数メートルも歩けば「おうあるけませんわ」とか言い出すと思ったのに。
「どうかなさいましたか、来栖さん? ひょっとしてわたくしのことを、ちょっと歩けば『もう歩けませんわー』とか言い出すワガママなお嬢様だとでも思っていらして?」
「そ、そんなことありませんわー」
わたしは、イヴキ様から視線をそらした。
この人、心でも読めるのか? ほぼ一言一句正解だったが。
おっと、そんなことをしている場合じゃない。
一応、魔獣少女の気配がないか、バロール先輩にも確かめてもらっている。
「バロール先輩は、魔獣少女の気配って感じられないんですか?」
『一度見たやつなら、わかるぜ』
わたしのとなりに、地雷バンギャ系二頭身メカクレ少女が現れた。
『だが、戦ったことがないとわからねえ仕様なんだよ』
「どうしてです?」
『不意打ちできない仕組みだからだ』
相手を魔獣少女だとわかって、生身の状態で攻撃を仕掛けると、反則になるのだという。「正々堂々と戦えないモヤシ」とみなされるらしい。また、九尾の狐が不意打ちで殺された一件もあり、「変身しない限り、魔獣少女の能力は発動すらしない」ことになった。
それもあって、対戦するときは前もって自分が魔獣少女だと周囲に明かす必要があるのだ。
「では、えっと、アキレスでしたっけ? あの魔獣少女を襲撃した相手は、反則扱いになるんじゃ?」
『それが、ならねえんだよ』
お互いに面識がある同士なら、不意打ちはノーカウントとなる。手の内を知っているからだ。
「厳しいルールですね。面倒」
『だろ? だからヤなんだよなー。この手の戦いでルールを覚えるのってさー』
バロール先輩が、わたしの横であぐらをかく。
心配事をよそに、お昼の時間となる。
川沿いの草むらにビニールシートを敷き、お弁当を広げた。
もっともやばかったのは、イヴキ様だ。やたら茶色いモダン焼き一品だけ。焼きそばと目玉焼きのコントラストも、素晴らしいではないか。
「お好み焼きは完全食ですわ。お肉も野菜も炭水化物も、すべて摂取できます」
その理屈は正しいが、おかしい。発想が異次元すぎる。
だが、体に悪いは絶対にうまい。イヴキ様のたくましさが、わたしにはうらやましかった。
「B級グルメが、本当に好きなんですね?」
たしかイヴキ様の会社は、フード業界のはず。
「ええ。祖父がお好み焼きの屋台から、起業を始めたからでしょうね」
イヴキ様のルーツが、お好み焼きだったとは。
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