月25万の不労所得を得てセミリタイアした元女上司を宗教勧誘から助けたら、「話し相手」として雇ってくれた

椎名 富比路

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第一章 宗教勧誘から助けた元上司が、ボクに「いっしょに住んでくれ」と頼んできた。

第9話 静かな贅沢 派手な貧困

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「予約だと? そんなことどこにも」

「あ、書いてましたよ。穂村ほむら先輩」

『国宝展示の予約と、ホテルカフェの席の予約は、別です』と、記されていた。
 
「どこにだ、おきくん!?」

「チケットの裏ですね」

「くっ……!」

 結局、ボクたちは数分待たされることに。

「すまん。チケットをちゃんと見ていれば」

「まあ、これから気をつければ……ん? あの人」

 全身量販店の服に身を固めた男性が、予約席に座る。

 予約はちゃんとしているのに、ドレスコードは完全に無視していた。店員さんとも、親しげに話している。常連なのかな?

「ドレスコードとか、お構いなしですね。いい店だ」 

「我々も、似たようなものだな」

 半袖パーカーを、穂村先輩は引っ張る。

 ようやく席が空いたようで、ボクたちは店員さんに案内された。

「抹茶ケーキをください。沖くんは?」

「この、オレンジの皮が乗ったモンブランを」

 せっかくだから、変わり種を食べたい。

「キミは、冒険心が強いな」

 穂村先輩と、ドリンクとデザートを待つ。
 

 ボクは改めて、客層を見てみる。

 パジャマで来ている外国人も、窓際の席で発見した。

「すごいですね。ここって、ドレスコードすごそうなのに」

 さっきのフル量販店おじさんといい、お金持ちって割とこんな人が多いのだろうか?

「沖くん、『静かな贅沢』と『派手な貧困』という言葉を知っているか?」

「知りませんけど、言っている意味はなんとなく」

「キミの思っているとおりだ。静かな贅沢とは、普通人にカモフラージュしている富裕層だ」

 あのフル量販店服のおじさんも、隠れ富裕層ってわけか。

 デザートが出てきた。

 うん。オレンジの皮は、クセが強い。でも、こういうものなのかも。
 
「派手な貧困の方は?」
 
「文字通り、散財している層のことだ。知っているか? 腕時計などのブランド品を出しているメーカーの顧客は、中間層なんだ」

 穂村先輩が、コーヒーと抹茶ケーキを食べる。
 
「富裕層ではないんですね?」

 自分が本当に求めているものなら、富裕層はブランド品だろう量産品だろうと、喜んで金を出す。

 対して中間層は、自分のステータスを見せるために、高級品に手を染める人が多いらしい。そうやって金を際限なく使って、貧困になっていく。

「彼女にいい顔をしようとか、キャバ嬢からおねだりされたりとか。そういう自分の価値観以外で金を使う人は、貧しいと言えるかも知れないな。全員がそうだとは言わないが」

 たしかに。

 観光客がブランドに群がるのも、税金が免除されるからかもだし。あるいは、転売用の仕入れが目的かも知れない。

「お金持ちって、日本製のデジタル時計だっていいますよね」

「いわゆる『チープブランド』だろ? 数千円数万円単位なのに、正確だからという理由で身につけている。富裕層の金の使い方とは、案外そういったものだ」

 料理を食べ終えて、帰ることになった。

「大事な話がある」
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