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第四章 突然のセミリタイアしくじり
第30話 最終話 流れ星
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話した途端、穂村先輩があたふたする。
「違うんだ。別に発情してしまったわけじゃないんだ。これはだな。まあ、取り繕っても仕方がないな。沖くん。交際したいとは、ずっと以前から考えていたんだ」
「はい」
「キミは節約家に対して偏見もないし、努力が間違っていたら修正もしてくれる。キミといると、安心するんだ」
「ありがとうございます」
「ただ、私からキミに何をしてあげられるのか。それがまったく思いつかなかったんだ」
穂村先輩が、プールへと沈んでいく。顔半分だけ出して、ぶくぶくと息を吐いた。
「そんなことくらいで、悩んでいたんですか?」
「キミはそう言ってくれるが、私からすると死活問題だ。ただ私へのメリットだけでしか、沖くんといっしょになりたいと考えられない。メリットなんてなくても、交際したいけど」
「はあ」
たしかに。ボクもいっしょにいて疲れる人の側にいるのは辛い。
「穂村先輩は、いっしょにいると楽しいですよ」
「ありがとう。けど、私はキミに、なにもしてやれない」
「妥協結婚だって、ボクは全然構わないですよ。好きな人と、いっしょに過ごせるので」
穂村先輩の体温が、グンと上がる。
ボクも、熱っぽくなっているのを自覚した。
「ホントにキミは、テレもせず言うよなあ」
先輩が、顔を手で隠す。
「いいじゃないですか。ボクはダメな先輩も、全部好きですよ」
「ホントに、本気にするぞ」
「なってください」
「いやあ、あのな。ちょっと。マジで本気になるぅ」
穂村先輩は、「ううう」とうめきながら、ボクに抱きついてきた。
「こんなことしかできんが、許してほしい」
「最高です」
「こういうのがいいのか? 安いもんだな」
「ずっと憧れていた先輩に、抱きしめてもらっているんです。うれしいに決まってますよ」
「キミも、私を思っていてくれたのかぁ」
ボクを抱きしめる、先輩の力が強くなる。
「これは今夜、ちょっとがんばらないとな」
しれっとドキッとするようなことを、言わないでほしい。
「ありがとうございます。でも、子どもはまだ先にしましょう」
「どうした? キミは、DINKSがいいのか?」
DINKSとは、「意図的に、子どもをもうけない夫婦関係」のことを差す。
「違います。子どもはほしいんですけど。ボクたち、インプラントを始めるじゃないですか。感染症リスクなどもあるので」
「そうか。そういうことを言っているのか。なんだあ。私との子作りはイヤなのかと」
「イヤじゃないです。でも、もう少し金銭的に余裕ができたらのほうがいいですね」
「なんだか、急に現実に引き戻されたなぁ。アハハ。さっきまで、燃え盛っていたのに」
「こうでも言わないと、何をするかわからないくらい、心の中は取り乱してるんですよ。余裕ないです」
「そうか、そうか。アハハ」
ボクはガキのように、先輩から背中をポンポンされる。
「あっ流れ星だ」
ボクたちは、流れ星にお願いした。
「欲しいものをお願いした」
「金金金、ですか?」
「いや楽楽楽、って」
「まるでガクブルって、震えているみたいじゃないですか」
ボクの名前をお願いしてくれたのは、うれしいけど。
「それもそうだな! アハハ!」
酔っているのか、先輩はめちゃくちゃバカ笑いする。
「そういう楽くんは、なにをお願いしたんだ?」
「亜紀子って、三回唱えました」
「テレもせず、呼び捨てするなよぉ。ホントに」
亜紀子さんが、胸をポカポカしてきた。
(おしまい)
「違うんだ。別に発情してしまったわけじゃないんだ。これはだな。まあ、取り繕っても仕方がないな。沖くん。交際したいとは、ずっと以前から考えていたんだ」
「はい」
「キミは節約家に対して偏見もないし、努力が間違っていたら修正もしてくれる。キミといると、安心するんだ」
「ありがとうございます」
「ただ、私からキミに何をしてあげられるのか。それがまったく思いつかなかったんだ」
穂村先輩が、プールへと沈んでいく。顔半分だけ出して、ぶくぶくと息を吐いた。
「そんなことくらいで、悩んでいたんですか?」
「キミはそう言ってくれるが、私からすると死活問題だ。ただ私へのメリットだけでしか、沖くんといっしょになりたいと考えられない。メリットなんてなくても、交際したいけど」
「はあ」
たしかに。ボクもいっしょにいて疲れる人の側にいるのは辛い。
「穂村先輩は、いっしょにいると楽しいですよ」
「ありがとう。けど、私はキミに、なにもしてやれない」
「妥協結婚だって、ボクは全然構わないですよ。好きな人と、いっしょに過ごせるので」
穂村先輩の体温が、グンと上がる。
ボクも、熱っぽくなっているのを自覚した。
「ホントにキミは、テレもせず言うよなあ」
先輩が、顔を手で隠す。
「いいじゃないですか。ボクはダメな先輩も、全部好きですよ」
「ホントに、本気にするぞ」
「なってください」
「いやあ、あのな。ちょっと。マジで本気になるぅ」
穂村先輩は、「ううう」とうめきながら、ボクに抱きついてきた。
「こんなことしかできんが、許してほしい」
「最高です」
「こういうのがいいのか? 安いもんだな」
「ずっと憧れていた先輩に、抱きしめてもらっているんです。うれしいに決まってますよ」
「キミも、私を思っていてくれたのかぁ」
ボクを抱きしめる、先輩の力が強くなる。
「これは今夜、ちょっとがんばらないとな」
しれっとドキッとするようなことを、言わないでほしい。
「ありがとうございます。でも、子どもはまだ先にしましょう」
「どうした? キミは、DINKSがいいのか?」
DINKSとは、「意図的に、子どもをもうけない夫婦関係」のことを差す。
「違います。子どもはほしいんですけど。ボクたち、インプラントを始めるじゃないですか。感染症リスクなどもあるので」
「そうか。そういうことを言っているのか。なんだあ。私との子作りはイヤなのかと」
「イヤじゃないです。でも、もう少し金銭的に余裕ができたらのほうがいいですね」
「なんだか、急に現実に引き戻されたなぁ。アハハ。さっきまで、燃え盛っていたのに」
「こうでも言わないと、何をするかわからないくらい、心の中は取り乱してるんですよ。余裕ないです」
「そうか、そうか。アハハ」
ボクはガキのように、先輩から背中をポンポンされる。
「あっ流れ星だ」
ボクたちは、流れ星にお願いした。
「欲しいものをお願いした」
「金金金、ですか?」
「いや楽楽楽、って」
「まるでガクブルって、震えているみたいじゃないですか」
ボクの名前をお願いしてくれたのは、うれしいけど。
「それもそうだな! アハハ!」
酔っているのか、先輩はめちゃくちゃバカ笑いする。
「そういう楽くんは、なにをお願いしたんだ?」
「亜紀子って、三回唱えました」
「テレもせず、呼び捨てするなよぉ。ホントに」
亜紀子さんが、胸をポカポカしてきた。
(おしまい)
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