3 / 48
第一章 美人社長とゲームを一緒に遊ぶのは辞令ですか?
クビ宣告(?)は、突然に
しおりを挟む
「花咲! まったくどうしようもないな、キミは」
課長の怒鳴り声は、部署じゅうに轟いている。
「すんません」
ぐうの音も出ない。
「みんな給料をもらうために頑張っているんだ。それを、キミときたら、いったい会社をなんだと……」
「はい、はい」
オレは頭を下げっぱなしだった。
同僚たちも、我関せずと視線を合わせようとしない。
「しかも、本社の社長に睨まれるなんて! 私の首にもしものことがあったら、末代まで呪ってや……」
けたたましく、電話の音が鳴り響く。
「なんだ! この忙し……あわわ社長!?」
威張り散らしていた課長の態度が、電話のヌシによって急変する。
一気に縮み上がり、小声で「はい、はい」と返答する機械に変わっていた。
「花咲、本社の社長がお呼びだそうだ」
「あーっ……クビッスかね」
「知らん。とにかく社長室へ行け。場所は知ってるよな?」
「はい」
トボトボと、オレはその場を後にする。
「いつかはこうなると思ってたよ、電太」
道すがら、机に座る太っちょの同僚から冷たいジョークが飛ぶ。
「お前がいなくなると、社内の空気が悪くなるから困るんだけどな。しかし、今回はさすがにフォローできん」
オレもさすがに、苦笑いしか出ない。
「そうですよ。そもそも花咲先輩は、自由人過ぎです。その分、営業先からのウケはいいんですけどねっ。私も何度か助けられたし」
女性の後輩からも、突き放された。
投げつける言葉も、褒められているのか軽蔑なのかよくわからない。
「戻ったら、辞表の書き方を練習しないとな」
「死にたくなったら言えよ。HDのデータはもらってやるから」
「いらん。死ぬつもりなんてないやい」
オレは太っちょに舌を出す。
「電太、いい転職先がある。ゲームライターのギャング梶原が、編集を募集してるぞ。お前ならイケるかも」
ありがたい申し出だが、と断りを入れて、オレは首を横に振った。
「ゲームを仕事にするつもりはないかなぁ。あくまでも遊びというスタンスを貫きたい」
「わかった。戻ったら、何があったか教えてくれ」
「うい」
同僚たちに手を振って、オレは社長室へ。
これが今生の別れになるかも。
エレベーターに乗りながら、気持ちを落ち着かせる。
大昔に見たヒーロー映画に、悪徳エンジニアが出ていたのを思い出す。
そいつは悪いボスに横領がバレて、悪事を働かざるを得なくなった。
彼も、こんな気持ちだったんだろうな。
ノックをすると、「入りたまえ」と威圧的な声が。
「失礼しまーす……」
オレは、木製の扉をあける。
広い。おそらく小さめの柔道場くらいはある。
しかし、テレビドラマでよく見るだだっ広い部屋を連想させた。
気が遠くなる。
窓に視線を向けているのは、タイトスカート姿の女性だ。
飯塚 久里須、オレの勤めるニコラ社のトップである。
壁は、一面が姿見になっていた。
飯塚社長とオレの姿が、鏡状の壁に移る。
遠い。これが、オレと社長の距離である。
相手はオレより、二学年年上だ。
しかし影響力は、三年と一年なんててレベルではない。
二歳しか違わないのに、どうしてここまでの差があるのか。
「花咲 電太、ただいま参りました」
「秘書の麗花・グレースです」
眼鏡をかけた中年の女性秘書が、オレに一礼をした。
左手の薬指に、指輪がしてある。
「花咲さん。本日お呼び立てした理由は、ご存じですね?」
「は、はあ」
クビ宣告ですよねぇ。
もう一度、姿見に視線をそらす。
さらばスーツ姿のオレよ。
生まれ変わったら勇者にでも転生したいよねえ。
「花咲くん」
社長が、オレに振り返る。
「はいっ」
「キミはゲームは得意か?」
「ま、まあまあです。腕は大したことないですね。プロ級ではありませんが、人よりはプレイしている方かと」
正直に答える。
ここでイキって「ゲームなら大得意ですよぉ。シューティングや格ゲーなら、全国一位です!」なんてウソをついてみろ。
虚言が発覚したら、たちまち処刑だろう。
「じゃ、ゲームは好きか?」
「たいだい、どのゲームも偏見なく遊ぶタイプですかね」
好き嫌いは、とにかく遊んでから決める方だ。そう告げた。
それと会社と、何が関係あるのだろう?
「キミに折り入って、頼みがある」
「なんでしょう?」
よかった。クビじゃない。
「この度、我がニコラ社は新しい部署を設けたいと考えている。アミューズメント系だ。そのアドバイザーとして、キミを迎えたい」
「マジですか?」
ゲームが趣味なヤツがなりたい職業、そのトップクラスにオレはなれるのか。すげえ。
「お願いできるか?」
「……条件によります」
何を言ってるんだ。
ここは二つ返事で「はい」だろうが。
ゲームする時間がなくなるのが、そんなに惜しいか?
いや、惜しいのだ。本能ではそう言っている。
「頼む。キミしかいないんだ!」
社長がなぜか、オレにしがみついてきた。
やめてください。色々柔らかいモノがオレの足に当たっているので!
「頭を上げてください社長」
できれば、振りほどきたい。
が、ケガをさせるわけにもいかないよな。
オレはなすがままに。
「私と一緒に、ゲームを遊んでくれないか!」
「はあ……」
状況が、理解できない。
課長の怒鳴り声は、部署じゅうに轟いている。
「すんません」
ぐうの音も出ない。
「みんな給料をもらうために頑張っているんだ。それを、キミときたら、いったい会社をなんだと……」
「はい、はい」
オレは頭を下げっぱなしだった。
同僚たちも、我関せずと視線を合わせようとしない。
「しかも、本社の社長に睨まれるなんて! 私の首にもしものことがあったら、末代まで呪ってや……」
けたたましく、電話の音が鳴り響く。
「なんだ! この忙し……あわわ社長!?」
威張り散らしていた課長の態度が、電話のヌシによって急変する。
一気に縮み上がり、小声で「はい、はい」と返答する機械に変わっていた。
「花咲、本社の社長がお呼びだそうだ」
「あーっ……クビッスかね」
「知らん。とにかく社長室へ行け。場所は知ってるよな?」
「はい」
トボトボと、オレはその場を後にする。
「いつかはこうなると思ってたよ、電太」
道すがら、机に座る太っちょの同僚から冷たいジョークが飛ぶ。
「お前がいなくなると、社内の空気が悪くなるから困るんだけどな。しかし、今回はさすがにフォローできん」
オレもさすがに、苦笑いしか出ない。
「そうですよ。そもそも花咲先輩は、自由人過ぎです。その分、営業先からのウケはいいんですけどねっ。私も何度か助けられたし」
女性の後輩からも、突き放された。
投げつける言葉も、褒められているのか軽蔑なのかよくわからない。
「戻ったら、辞表の書き方を練習しないとな」
「死にたくなったら言えよ。HDのデータはもらってやるから」
「いらん。死ぬつもりなんてないやい」
オレは太っちょに舌を出す。
「電太、いい転職先がある。ゲームライターのギャング梶原が、編集を募集してるぞ。お前ならイケるかも」
ありがたい申し出だが、と断りを入れて、オレは首を横に振った。
「ゲームを仕事にするつもりはないかなぁ。あくまでも遊びというスタンスを貫きたい」
「わかった。戻ったら、何があったか教えてくれ」
「うい」
同僚たちに手を振って、オレは社長室へ。
これが今生の別れになるかも。
エレベーターに乗りながら、気持ちを落ち着かせる。
大昔に見たヒーロー映画に、悪徳エンジニアが出ていたのを思い出す。
そいつは悪いボスに横領がバレて、悪事を働かざるを得なくなった。
彼も、こんな気持ちだったんだろうな。
ノックをすると、「入りたまえ」と威圧的な声が。
「失礼しまーす……」
オレは、木製の扉をあける。
広い。おそらく小さめの柔道場くらいはある。
しかし、テレビドラマでよく見るだだっ広い部屋を連想させた。
気が遠くなる。
窓に視線を向けているのは、タイトスカート姿の女性だ。
飯塚 久里須、オレの勤めるニコラ社のトップである。
壁は、一面が姿見になっていた。
飯塚社長とオレの姿が、鏡状の壁に移る。
遠い。これが、オレと社長の距離である。
相手はオレより、二学年年上だ。
しかし影響力は、三年と一年なんててレベルではない。
二歳しか違わないのに、どうしてここまでの差があるのか。
「花咲 電太、ただいま参りました」
「秘書の麗花・グレースです」
眼鏡をかけた中年の女性秘書が、オレに一礼をした。
左手の薬指に、指輪がしてある。
「花咲さん。本日お呼び立てした理由は、ご存じですね?」
「は、はあ」
クビ宣告ですよねぇ。
もう一度、姿見に視線をそらす。
さらばスーツ姿のオレよ。
生まれ変わったら勇者にでも転生したいよねえ。
「花咲くん」
社長が、オレに振り返る。
「はいっ」
「キミはゲームは得意か?」
「ま、まあまあです。腕は大したことないですね。プロ級ではありませんが、人よりはプレイしている方かと」
正直に答える。
ここでイキって「ゲームなら大得意ですよぉ。シューティングや格ゲーなら、全国一位です!」なんてウソをついてみろ。
虚言が発覚したら、たちまち処刑だろう。
「じゃ、ゲームは好きか?」
「たいだい、どのゲームも偏見なく遊ぶタイプですかね」
好き嫌いは、とにかく遊んでから決める方だ。そう告げた。
それと会社と、何が関係あるのだろう?
「キミに折り入って、頼みがある」
「なんでしょう?」
よかった。クビじゃない。
「この度、我がニコラ社は新しい部署を設けたいと考えている。アミューズメント系だ。そのアドバイザーとして、キミを迎えたい」
「マジですか?」
ゲームが趣味なヤツがなりたい職業、そのトップクラスにオレはなれるのか。すげえ。
「お願いできるか?」
「……条件によります」
何を言ってるんだ。
ここは二つ返事で「はい」だろうが。
ゲームする時間がなくなるのが、そんなに惜しいか?
いや、惜しいのだ。本能ではそう言っている。
「頼む。キミしかいないんだ!」
社長がなぜか、オレにしがみついてきた。
やめてください。色々柔らかいモノがオレの足に当たっているので!
「頭を上げてください社長」
できれば、振りほどきたい。
が、ケガをさせるわけにもいかないよな。
オレはなすがままに。
「私と一緒に、ゲームを遊んでくれないか!」
「はあ……」
状況が、理解できない。
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました
黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。
彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。
戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。
現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと!
「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」
ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。
絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。
伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進!
迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る!
これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー!
美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。
人生、逆転できないことなんて何もない!
『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』
まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。
朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。
「ご主人様の笑顔が見たいんです」
その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。
全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!?
甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~
Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」
病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。
気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた!
これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。
だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。
皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。
その結果、
うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。
慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。
「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。
僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに!
行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。
そんな僕が、ついに魔法学園へ入学!
当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート!
しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。
魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。
この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――!
勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる!
腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる