31 / 48
第六章 ゲーセン巡りは出張に含まれますか?
朝チュンは、突然に?
しおりを挟む
結局、オレは少しくらいしか眠れなかった。
朝が遅めだったのが救いだったが。
耳を澄ませると、窓の向こうで小鳥が鳴いていた。
これが朝チュンか……何もなかったけどな!
しかし、オレは盛大にやらかしていたのである。
トントントン……。
一人暮らしの家では聞き慣れない音が。独身男性の憧れる音が、キッチンから聞こえてきた。
「おお、起こしてしまったか」
このセリフ! 起き抜けでこのセリフは反則ですよ社長!
世の男子諸君の誰しも憧れた、ギャルゲーでのワンシーンだ。
「もうすぐできるから、顔を洗ってきなさい」
エプロン姿の飯塚社長が、ベーコンエッグを作ってくれていたのである。キャベツの千切り付きで。
「はいっ」
ボーッとしている頭を、温めのお湯で覚醒させた。
トースターが鳴る。「あつつつ」と、社長がトーストを取り出して皿に盛った。
「よし食べよう」
ローテーブルに朝食を載せて、いただきます。
カリッカリのベーコンと目玉焼きを、アツアツのトーストに載せた。二つ折りにして、かぶりつく。
「うまい。ありがとうございます」
「気に入ってもらえて、なによりだ」
社長は丁寧に、お箸を使ってベーコンでキャベツを巻いて食べていた。トーストはバターを塗り、黄身は潰さない派のようだ。
「おっと、黄身が口から垂れているぞ」
ティッシュを出して、オレの口を拭いてくれる。
「ありがとうございます」
「あり合わせで作ってみたから、口に合うかどうか」
「とんでもない。オレ、料理とかホントにやらなくて」
休みの日でも、コンビニへ行って朝飯を済ませたりしちゃう。スーパーは開いていないし、一番早く開くパン屋は、駅前まで歩く必要がある。
「それは、私もだな。早朝ジョギングのついでで寄ってしまうんだ。ついつい肉まんとか買ってしまう」
「買っちゃいますよね!」
社長は買い食いをするたびに、グレースさんから「体調管理がなっていない」と怒られるらしい。
普段から厳しい視線を、飯塚社長は社員へ送っている。が、社長だって完璧じゃないんだ。
朝は軽めに済ませろとか、朝食を取らないことを推奨している経営者もいる。
そんな中で、飯塚久利須は親しみやすくて安心できる人だった。
「ごちそうさまでした。おいしかったです」
「ありがとう。私も、みんなと食べる朝食を経験できて、うれしい」
着替えてくるというので、一旦社長は部屋を出て行く。
オレも身支度をしておくか。
待てよ。
これって、社長とデートになるのか。
一番高い服ってどれだっけ?
ひめにこの衣装を探すんだから、むしろ出張かな? だとしたらスーツの方が。
色々悩んでいると、インターホンが。
『何をしているんだ? タクシーを待たせているぞ』
「すぐに着替えます!」
ええい。高めの服で勝負だ。ドレスコードも考えて、ネクタイも似合うタッチで行こう。
「お待たせしました」
めかしこんだ社長の姿を見て、オレは息を呑む。
ベージュの、襟付きロングスカートだ。
「では行こう」
今日はグレースさんもオフなので、タクシーで移動である。
二人とも、後部座席に座った。
飯塚社長が足を組むと、白い太ももが大胆に露出する。
「どうした?」
オレの視線に気づかず、社長は首をかしげた。
「オシャレですね、その……ワンピース」
会話をしつつ、社長の肌から視線をそらす。
「この服か? ラップドレスというんだ。頻繁に着替える予定だから、一枚でサッと脱げるモノにしたんだ」
細いベルトで、お腹をキュッと絞っている。とはいえ、キャバ嬢みたいに身体のラインが出ていない。下も、フワッとしたフレアスカートとなっている。
「これならお腹も目立たないし」と、社長はおどけてみせた。
「どうだろう? 男性と二人で出かけるなんて初めてだから」
それ一枚だけという極めてラフな格好なのに、キャリアウーマン然とした雰囲気を放つ。Vネックの襟付きだからか。
手には、ペールブルーのトートバッグを持っていた。「皇室御用達」との触書があるそうだが、単にエコバッグ代わりだという。
「ホントは演奏会などに持っていくハンドバッグが合うんだ。が、今日は買い物だからな」
機能性を重視したらしい。
クツも、リボンの付いたローヒールだ。歩き回るからだろう。
「オレにもオシャレはさっぱりで。でも、すごくキレイなことはわかります」
「ありがとう」
その後、会話が微妙に途切れてしまった。
「いやー、タクシーに乗るなんて、何年ぶりだろうなー?」
大げさに伸びをしながら、会話を引き延ばす。でないと、こんな美人の隣なんていたたまれない。
「私も、久しぶりだ。いつもはグレースが乗せてくれるから」
「最後に乗ったのは、前の会社で新歓ですね」
そのときは、一番下の後輩が入ったばかりだった。飲み会でへべれけになった後輩を、家まで送ったっけ。
「あのときは後輩が何度もエズいて大変でした。オレが飲めないから、付き添いに駆り出されちゃって」
その後輩も酒に強くなって、もう送迎の心配もなくなった。
「あいつら、どうしてるかな……」
「気になるか?」
「いや、あいつらにあいつらの人生がありますから」
同期がいないのは、確かに寂しい。なんだかんだ言って、彼らはオレを慕ってくれていた。
とはいえ、オレは一人じゃない。今の方が、社員との繋がりを感じている。
朝が遅めだったのが救いだったが。
耳を澄ませると、窓の向こうで小鳥が鳴いていた。
これが朝チュンか……何もなかったけどな!
しかし、オレは盛大にやらかしていたのである。
トントントン……。
一人暮らしの家では聞き慣れない音が。独身男性の憧れる音が、キッチンから聞こえてきた。
「おお、起こしてしまったか」
このセリフ! 起き抜けでこのセリフは反則ですよ社長!
世の男子諸君の誰しも憧れた、ギャルゲーでのワンシーンだ。
「もうすぐできるから、顔を洗ってきなさい」
エプロン姿の飯塚社長が、ベーコンエッグを作ってくれていたのである。キャベツの千切り付きで。
「はいっ」
ボーッとしている頭を、温めのお湯で覚醒させた。
トースターが鳴る。「あつつつ」と、社長がトーストを取り出して皿に盛った。
「よし食べよう」
ローテーブルに朝食を載せて、いただきます。
カリッカリのベーコンと目玉焼きを、アツアツのトーストに載せた。二つ折りにして、かぶりつく。
「うまい。ありがとうございます」
「気に入ってもらえて、なによりだ」
社長は丁寧に、お箸を使ってベーコンでキャベツを巻いて食べていた。トーストはバターを塗り、黄身は潰さない派のようだ。
「おっと、黄身が口から垂れているぞ」
ティッシュを出して、オレの口を拭いてくれる。
「ありがとうございます」
「あり合わせで作ってみたから、口に合うかどうか」
「とんでもない。オレ、料理とかホントにやらなくて」
休みの日でも、コンビニへ行って朝飯を済ませたりしちゃう。スーパーは開いていないし、一番早く開くパン屋は、駅前まで歩く必要がある。
「それは、私もだな。早朝ジョギングのついでで寄ってしまうんだ。ついつい肉まんとか買ってしまう」
「買っちゃいますよね!」
社長は買い食いをするたびに、グレースさんから「体調管理がなっていない」と怒られるらしい。
普段から厳しい視線を、飯塚社長は社員へ送っている。が、社長だって完璧じゃないんだ。
朝は軽めに済ませろとか、朝食を取らないことを推奨している経営者もいる。
そんな中で、飯塚久利須は親しみやすくて安心できる人だった。
「ごちそうさまでした。おいしかったです」
「ありがとう。私も、みんなと食べる朝食を経験できて、うれしい」
着替えてくるというので、一旦社長は部屋を出て行く。
オレも身支度をしておくか。
待てよ。
これって、社長とデートになるのか。
一番高い服ってどれだっけ?
ひめにこの衣装を探すんだから、むしろ出張かな? だとしたらスーツの方が。
色々悩んでいると、インターホンが。
『何をしているんだ? タクシーを待たせているぞ』
「すぐに着替えます!」
ええい。高めの服で勝負だ。ドレスコードも考えて、ネクタイも似合うタッチで行こう。
「お待たせしました」
めかしこんだ社長の姿を見て、オレは息を呑む。
ベージュの、襟付きロングスカートだ。
「では行こう」
今日はグレースさんもオフなので、タクシーで移動である。
二人とも、後部座席に座った。
飯塚社長が足を組むと、白い太ももが大胆に露出する。
「どうした?」
オレの視線に気づかず、社長は首をかしげた。
「オシャレですね、その……ワンピース」
会話をしつつ、社長の肌から視線をそらす。
「この服か? ラップドレスというんだ。頻繁に着替える予定だから、一枚でサッと脱げるモノにしたんだ」
細いベルトで、お腹をキュッと絞っている。とはいえ、キャバ嬢みたいに身体のラインが出ていない。下も、フワッとしたフレアスカートとなっている。
「これならお腹も目立たないし」と、社長はおどけてみせた。
「どうだろう? 男性と二人で出かけるなんて初めてだから」
それ一枚だけという極めてラフな格好なのに、キャリアウーマン然とした雰囲気を放つ。Vネックの襟付きだからか。
手には、ペールブルーのトートバッグを持っていた。「皇室御用達」との触書があるそうだが、単にエコバッグ代わりだという。
「ホントは演奏会などに持っていくハンドバッグが合うんだ。が、今日は買い物だからな」
機能性を重視したらしい。
クツも、リボンの付いたローヒールだ。歩き回るからだろう。
「オレにもオシャレはさっぱりで。でも、すごくキレイなことはわかります」
「ありがとう」
その後、会話が微妙に途切れてしまった。
「いやー、タクシーに乗るなんて、何年ぶりだろうなー?」
大げさに伸びをしながら、会話を引き延ばす。でないと、こんな美人の隣なんていたたまれない。
「私も、久しぶりだ。いつもはグレースが乗せてくれるから」
「最後に乗ったのは、前の会社で新歓ですね」
そのときは、一番下の後輩が入ったばかりだった。飲み会でへべれけになった後輩を、家まで送ったっけ。
「あのときは後輩が何度もエズいて大変でした。オレが飲めないから、付き添いに駆り出されちゃって」
その後輩も酒に強くなって、もう送迎の心配もなくなった。
「あいつら、どうしてるかな……」
「気になるか?」
「いや、あいつらにあいつらの人生がありますから」
同期がいないのは、確かに寂しい。なんだかんだ言って、彼らはオレを慕ってくれていた。
とはいえ、オレは一人じゃない。今の方が、社員との繋がりを感じている。
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界召喚されたけどスキルが地味だったので、現代知識とアイテムボックスで絶品料理を作ったら大商会になっちゃいました
黒崎隼人
ファンタジー
手違いで剣も魔法もない異世界に召喚された、しがない日本のサラリーマン、湊カイリ。
彼に与えられたのは、無限に物が入る【アイテムボックス】と、物の名前が分かる【鑑定】という、あまりにも地味な二つのスキルだけだった。
戦闘能力は皆無。途方に暮れるカイリだったが、異世界の食事が絶望的に不味いことを知り、大きなチャンスに気づく。
現代日本の「当たり前」の知識は、この世界ではとんでもない「宝」なのだと!
「醤油?味噌?そんなものがあれば、この世界の食文化はひっくり返るぞ!」
ひょんなことから出会った没落貴族の美少女・リリアナと共に、カイリは現代知識と地味スキルを駆使して屋台から商売をスタート。
絶品料理で人々の胃袋を掴み、さらには便利な生活用品を次々と発明していく。
伝説の神獣の幼体「フェン」やドワーフの鍛冶師など、頼れる仲間たちも加わり、彼らが立ち上げた「サンライズ商会」は瞬く間に大躍進!
迫り来る悪徳商会や腐敗した貴族の妨害も、現代のマーケティング術と知恵で痛快に打ち破る!
これは、平凡なサラリーマンが異世界の常識を覆し、食と生活に革命を起こして一代で大商会を築き上げる、痛快成り上がりファンタジー!
美味しい料理と、もふもふな相棒、そして仲間との絆。
人生、逆転できないことなんて何もない!
『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』
まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。
朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。
「ご主人様の笑顔が見たいんです」
その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。
全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!?
甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~
Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」
病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。
気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた!
これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。
だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。
皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。
その結果、
うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。
慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。
「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。
僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに!
行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。
そんな僕が、ついに魔法学園へ入学!
当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート!
しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。
魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。
この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――!
勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる!
腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる