カリスマ女社長から「キミしかいないんだ」とせがまれて、月収三〇万でポンコツ美人社長のゲームコーチに配属された。これは辞令ですか?

椎名 富比路

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第六章 ゲーセン巡りは出張に含まれますか?

イーさんの、水着差分

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 駅前のデパートに到着した。
 休日だからか、人で賑わっている。それも、カップルばかり。

「なんだか、ドキドキするなぁ」
「そうですね」

 意識するまいと思っていたが、二人きりなんだよな。

「とにかく、店に入ってしまおう」
「承知しましたっ」

 デパートの中へ入ると、一気に高級感に包まれた。本格的な服飾ばかり扱う、セレブ御用達の店ばかりが並んでいる。

「こういう店は、初めてか?」
「そうですね。洋服なら、近所にある量販店ばかりになってしまいます」

 高級デパートなんて、あまり利用したことがない。営業先に渡す用のお菓子を、買いに来るくらいだな。実際に食って選んでいたから、何度も財布が吹っ飛びそうになったっけ。

「すいません。だっさい格好で」
「いや。落ち着いていて、似合っているぞ。男性はオシャレに背伸びをすると、余計に滑稽な姿になるんだ。ジャラジャラしたアクセサリーなんかを付けないだけ、マシだよ。高めの時計くらいあるといいんだろうが、それでも自分が好きな形で身の丈にも合った物がいい」

 金に物を言わせた服装がもっともカッコ悪いと、社長は主張した。

「先に、水着を見ましょうか」
「そうだな。行くぞ」

 エレベーターを使い、水着コーナーへ向かう。

 水着コーナーだけでも、セレブの風がビンビンだ。アダルティな柄のウェアが揃う。さすがに露出を抑えた、撥水性のパーカーが多い。

「むー。よっと地味だな。こういうのが、時代的には刺さるんだろうけれど」

 控えめの水着差分は、ぴよぴよさんが描いてしまったという。ラッシュガードに、デニムのホットパンツだという。

「確かに、それだといかにもイマドキのファッションですね」
「だろ? 物足りないんだよ」

 社長的には、もっと大胆な差分があってもいいのでは、と考えているらしい。

「あんまり際どいデザインは、お断りだけれどな」

 水着を選びながら、飯塚社長は冗談を言う。
 オレも、メンズコーナーを回った。適当にサイズだけを見て決める。

「男性は楽でいいな」
「露出を求められてませんからね」
「そうだな。いいカンジの水着を見つけたから、着替えてくる」

 社長が、更衣室へと消えた。
 待っている間、自分のウェアを精算する。

「軽く数点チョイスしたから、好きなのを選んでくれ」

 シャーッと、カーテンが開く。

「ハイレグですか」

 まずは、食い込み具合がヤバいワンピースである。ワンショルダーのアンシンメトリーデザインだ。ピッチリしすぎて、胸を完全に隠し切れていない。むしろ、膨らみをより強調してしまっている。

「密着度が、競泳水着みたいですね」
「スポーツ用品店の本格的なものを買った方が、興奮するんだろうか?」
「特殊性癖ですよ。競泳なんて」
「でもキミは、グッと切れ込みのあるハイレグが大好きみたいだが」
「どこで見たんですか!?」

 自分の好みがバレて、オレはたじろいだ。

「いや、本棚にそういうフィギュアが飾ってあった」
「あれはそういうデザインなの! 戦闘服なの!」

 確かに、オレは格ゲーのフィギュアを飾っている。しかし、あれは資料用だ。

「とにかく、オレ基準で考えるのはよしましょう。もっと他の男性の意見を取り入れた方がいいですね。それこそ、ぴよぴよ夫さんとか」
「スク水第一主義と言われて、連れてこなかったんだ。今でもたまに、奥さんに着せてると聞いてドン引きしたぞ」

 ですよねー。

「それはそうと、どうだ?」
「アウトです。オレが許しても、世間が許さないでしょう」

 たしかにオレ好みではあるが、ちょっとデザインが複雑すぎる。絵師にはまずウケないだろう。

「わかった。これは無理だと思っていたからいいんだ。本命は後に取ってあるからな」

 また、社長が着替えを始めた。
 カーテンが再び開かれた。今度は、白ビキニだ。

「まあ、定番ですね」
「うむ。普通だな」

 凄く似合っている。フリフリもカワイイ。だが、そこまでだった。

「たしかに世の男性は、こういったわかりやすさを求めています。シンプルなデザインなので、絵師へのカロリーも低い。しかし、ひめにこって宇宙人じゃないですか」

 単にアイドルが着用するなら、「まあ、こんなもんかなー」と思える。しかし、実際に着るのは宇宙人だ。月並みの衣装ではパンチが弱くて、キャラクター性を発揮できない気がした。

「言いたいことはわかる。ひめにこっぽさがないんだよな?」
「はい。守りに入りすぎている印象を受けました」

 社長の言うとおり、「宇宙人ならコレを選ぶ!」という確信めいた主張が足りない。「宇宙人なりの女子力や感性」というものが。

「そう思って、最後は攻めてみた」

 最後の水着は、クリームホワイトの下に紺色という重ね着だ。レイヤード・ビキニという。ホルターネックタイプで、胸元はねじれている。

 いかにも、巨乳のアニメキャラが身につけそうなファッションだった。

「地味か? それとも攻めすぎだろうか?」
「いや、ちょうどいいと思います。地球の文明をよくわかってない感じも出てますよ。不思議度が、二割増しでアップしている印象を持てます」

 宇宙人差を出すなら、変に無難なフェミニズムを強調しない方がいい。地球人の好みに合わせて大胆な水着を選ぶ方が、ひめにこらしいと思える。

「よし、ではこれにしよう。普段使いもこれでいく!」

 社長は即決で、この水着を選んだ。出張にも着るという。

「えっ。ちょっと艶っぽすぎません?」

 自分が着るなら、さっきの白ビキニでいいような。

「プライベートビーチだから気にするな。寝泊まりも別荘のロッジだし」

 うわあ。夢が拡がリングだ。
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