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第六章 ゲーセン巡りは出張に含まれますか?
レトロゲーセンのレトロクソゲー
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「では、昼食にしよう」
ついてきてくれたお礼にと、やや高めのランチをご馳走になった。これも初の経験である。
天ぷら御膳が、運ばれてきた。少し早めの夏野菜とエビの天ぷら、から揚げである。社長はお吸い物とかやくごはんセットを、オレはソバのセットを頼んである。
エビ天をソバに付けて、オレはズルズルとすすった。
「はわあ」と、蕩けそうな声が漏れる。高い店のソバだ。胃から全身に、味が染み渡っていく。オクラって、こんなにうまかったんだな。スーパーのオクラの味を、忘れてしまいそうだ。
「ぴよぴよさんって、社長とは大学時代からの付き合いなんですね?」
あまり、社長とのんびり話す機会も少ない。聞ける範囲で、過去を尋ねてみる。
「正確には、奥さんが兄の知り合いなんだ。奥さんは学生時代、兄のゼミにいたんだ」
社長は、青じその天ぷらを天つゆにつけた。
「ゼミって……まさか」
「そう。兄は大学教授だ」
ぴよぴよ夫妻は、お兄さんが顧問をしていたサークルを通して知り合った。同じサークルにいた縁で、社長は当時学生だった二人と仲良くなったとか。
「兄は、ぴよぴよ夫妻の仲人も勤めたんだぞ」
かやくごはんを頬張りながら、社長がお兄さんを自慢する。
「すごいですね」
「だが、そのすごさを、両親は私にも強要した」
「失礼ですが、ご両親のお仕事って」
「……ひとことで言うと、公僕だ。ウチは、国家公務員の一家なんだよ」
官僚のご両親は、娘にも公務員になってもらうか、どこか政治家の嫁になることを望んでいたらしい。
お堅い家柄なら、社長の柔軟性なんて理解できないだろう。
「彼らの支配も、ここまでだろう。ゆるふわ変人の兄さえ、コントロールできなかったから」
お兄さんが立ち回ることで、飯塚の家がちゃんと機能するのではないか。社長は、そう期待しているようだ。
シメのほうじ茶アイスも堪能し、食事を終える。
「さて、ごちそうさまでした」
「ありがとうございます。おいしかったです」
「気に入ってもらえてなによりだ」
オレたちはデパートを出て、ゲーセンに向かう。
辿り着いたのは、昔ながらの商店街である。ブティックやコロッケ屋さん、夜だけ営業する男装バーなどがあった。
商店街の片隅に、ひっそりと佇むゲーセンが。コンクリートの外壁も黒ずんでいた。良くも悪くも、昭和テイストな作りだ。しかし、内部は最新ゲームやレトロゲームなどが並ぶ。
「一階が全てガチャガチャとクレーンゲームなのは、最近のゲーセンも同じだな」
「お目当ては、二階ですね」
やや古めの大型筐体は、二階に集中している。三階は古めのシューティングとカードゲーム、四階はオール格ゲーゾーンだ。オレたちの楽しめる余地はなさそう。
「ありましたよ」
オレは、真っ赤な大型筐体を指す。
「あーっ! このゲーム知ってるぞ! たしか、伝説のクソゲーではないか!」
そう。オレがイーさんに見せたかったのは、この筐体だった。
二人プレイができるガンシューティングである。ゾンビやクリーチャーを、銃で撃退するシナリオだ。
最初は、家庭用として登場した。あまりの出来の悪さにクソゲー呼ばわりされたのだが、カルト的な人気を博す。今では、ゲーセンの大型筐体にまでなっていた。
稼働当初は二〇〇円だったが、この店は一〇〇円でプレイできる。
「せっかくだから、私は赤い銃を持ったキャラを選ぼう!」
「おっと、うかつに触るんじゃねえよ。舌を出してくるかもしれないぜっ!」
社長と共に、ゲーム内の有名なセリフを投げつけ合う。
「さて、ゲームスタートだ」
始まって早々、オレはイーさんをかばってゾンビに噛まれた。
「アーオウ、ファッ○!」
オレの持ちキャラである「ゲリラ越後」が、悪態をつく。アフロでグラサンの日本人オッサンだ。しかし、やられるとなぜか色っぽい西洋風のあえぎ声を出す。
「ぎゃーわーっ」
銃を乱射しながらも、イーさんは楽しげである。
「これのどこがクソゲーなんだ? めちゃくちゃ楽しいではないか!」
「調整したんだよ。昔はバグだらけだったんだが、ちゃんとした会社にリメイクを頼んだら神ゲーになった」
やはり、「早すぎる名作」と言われただけあった。技術が追いつきさえすれば、間違いなくいいゲームといえる。
『この邪気は……』
「フフフ、この邪気は……フフフ!」
噴きながら、イーさんはゲリラ越後の声真似まで始めた。
早々と全滅してしまったので、コンティニューする。四〇〇円は使ったかもしれない。それでも全ステージの半分も越せずに、ゲームオーバーになってしまった。
「いやー、楽しかったぁ。ありがとうハナちゃん」
「イーさんにどうしても、見せたくてな」
その後、最新のガンシューも触ってみたが、動きが速くてワンプレイでくたびれてしまう。
「酔ったな。休憩しよう」
オレも、立っているのが疲れた。休める場所が欲しい。かといってレストルームは、立つタイプの喫煙コーナーだ。座りたい。
「一旦出ようぜ」
ゲーセンを出て、適当にぶらつく。
ついてきてくれたお礼にと、やや高めのランチをご馳走になった。これも初の経験である。
天ぷら御膳が、運ばれてきた。少し早めの夏野菜とエビの天ぷら、から揚げである。社長はお吸い物とかやくごはんセットを、オレはソバのセットを頼んである。
エビ天をソバに付けて、オレはズルズルとすすった。
「はわあ」と、蕩けそうな声が漏れる。高い店のソバだ。胃から全身に、味が染み渡っていく。オクラって、こんなにうまかったんだな。スーパーのオクラの味を、忘れてしまいそうだ。
「ぴよぴよさんって、社長とは大学時代からの付き合いなんですね?」
あまり、社長とのんびり話す機会も少ない。聞ける範囲で、過去を尋ねてみる。
「正確には、奥さんが兄の知り合いなんだ。奥さんは学生時代、兄のゼミにいたんだ」
社長は、青じその天ぷらを天つゆにつけた。
「ゼミって……まさか」
「そう。兄は大学教授だ」
ぴよぴよ夫妻は、お兄さんが顧問をしていたサークルを通して知り合った。同じサークルにいた縁で、社長は当時学生だった二人と仲良くなったとか。
「兄は、ぴよぴよ夫妻の仲人も勤めたんだぞ」
かやくごはんを頬張りながら、社長がお兄さんを自慢する。
「すごいですね」
「だが、そのすごさを、両親は私にも強要した」
「失礼ですが、ご両親のお仕事って」
「……ひとことで言うと、公僕だ。ウチは、国家公務員の一家なんだよ」
官僚のご両親は、娘にも公務員になってもらうか、どこか政治家の嫁になることを望んでいたらしい。
お堅い家柄なら、社長の柔軟性なんて理解できないだろう。
「彼らの支配も、ここまでだろう。ゆるふわ変人の兄さえ、コントロールできなかったから」
お兄さんが立ち回ることで、飯塚の家がちゃんと機能するのではないか。社長は、そう期待しているようだ。
シメのほうじ茶アイスも堪能し、食事を終える。
「さて、ごちそうさまでした」
「ありがとうございます。おいしかったです」
「気に入ってもらえてなによりだ」
オレたちはデパートを出て、ゲーセンに向かう。
辿り着いたのは、昔ながらの商店街である。ブティックやコロッケ屋さん、夜だけ営業する男装バーなどがあった。
商店街の片隅に、ひっそりと佇むゲーセンが。コンクリートの外壁も黒ずんでいた。良くも悪くも、昭和テイストな作りだ。しかし、内部は最新ゲームやレトロゲームなどが並ぶ。
「一階が全てガチャガチャとクレーンゲームなのは、最近のゲーセンも同じだな」
「お目当ては、二階ですね」
やや古めの大型筐体は、二階に集中している。三階は古めのシューティングとカードゲーム、四階はオール格ゲーゾーンだ。オレたちの楽しめる余地はなさそう。
「ありましたよ」
オレは、真っ赤な大型筐体を指す。
「あーっ! このゲーム知ってるぞ! たしか、伝説のクソゲーではないか!」
そう。オレがイーさんに見せたかったのは、この筐体だった。
二人プレイができるガンシューティングである。ゾンビやクリーチャーを、銃で撃退するシナリオだ。
最初は、家庭用として登場した。あまりの出来の悪さにクソゲー呼ばわりされたのだが、カルト的な人気を博す。今では、ゲーセンの大型筐体にまでなっていた。
稼働当初は二〇〇円だったが、この店は一〇〇円でプレイできる。
「せっかくだから、私は赤い銃を持ったキャラを選ぼう!」
「おっと、うかつに触るんじゃねえよ。舌を出してくるかもしれないぜっ!」
社長と共に、ゲーム内の有名なセリフを投げつけ合う。
「さて、ゲームスタートだ」
始まって早々、オレはイーさんをかばってゾンビに噛まれた。
「アーオウ、ファッ○!」
オレの持ちキャラである「ゲリラ越後」が、悪態をつく。アフロでグラサンの日本人オッサンだ。しかし、やられるとなぜか色っぽい西洋風のあえぎ声を出す。
「ぎゃーわーっ」
銃を乱射しながらも、イーさんは楽しげである。
「これのどこがクソゲーなんだ? めちゃくちゃ楽しいではないか!」
「調整したんだよ。昔はバグだらけだったんだが、ちゃんとした会社にリメイクを頼んだら神ゲーになった」
やはり、「早すぎる名作」と言われただけあった。技術が追いつきさえすれば、間違いなくいいゲームといえる。
『この邪気は……』
「フフフ、この邪気は……フフフ!」
噴きながら、イーさんはゲリラ越後の声真似まで始めた。
早々と全滅してしまったので、コンティニューする。四〇〇円は使ったかもしれない。それでも全ステージの半分も越せずに、ゲームオーバーになってしまった。
「いやー、楽しかったぁ。ありがとうハナちゃん」
「イーさんにどうしても、見せたくてな」
その後、最新のガンシューも触ってみたが、動きが速くてワンプレイでくたびれてしまう。
「酔ったな。休憩しよう」
オレも、立っているのが疲れた。休める場所が欲しい。かといってレストルームは、立つタイプの喫煙コーナーだ。座りたい。
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