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第七章 コレは社員旅行ですか? 合宿にしか思えないのですが?
洗いっこしながら
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花火の帰り、オレたちは風呂に入っていた。屋台で散々食ったから、夕飯はない。
ちなみにここは、水着着用なら混浴も可能である。しかも今日は、貸し切りだ。
しかし、飯塚社長は「後で入る」と部屋にこもってしまった。
「いやいや花咲さん、ありえんでしょ」
岩風呂で、オレはマヒルちゃんから説教されていた。酒が入っているせいか、かなり刺々しい。目は据わり、口角も下がっている。
看板には各種効能が書かれているのに、何も効果が現れない。むしろ、身体が冷え切っていく気分だ。
「あれだけわかりやすーいお膳立てしてさぁ、盛り上がったじゃん。空は花火が打ち上がって、最高のシチュエーションじゃん。なのにヘタレかよ」
腕を岩場にもたれさせ、マヒルちゃんは呆れ返っている。眉間には深く、シワが寄っていた。
「まさか、あれをフラグと思えない人がいるとは」
「うちの子も空気を読んだかのようにクズリだしたので、これはチャンスと思っていたのですが」
「ですよね? ギャルゲーなら告白タイムですよね?」
梶原一家と、ぴよぴよ一家が盛り上がる。
「ちょっと待ってくれ。オレと社長が恋仲になるなんて、それこそありえないだろ?」
「はあ? この期に及んで何をおっしゃるっての?」
オレが反論すると、マヒルちゃんが眉間のシワをさらに増やす。
「見りゃわかりますっての。二人がいい感じなの」
「だって、オレはヒラ、イーさんは社長だぞ」
オレが社長と釣り合うなんて、とても思えない。
「いやー、マジかー。ないわー」
マヒルちゃんが、頭を抱えてしまった。
「あのさあ、クリス社長がそんなこと気にすると思うか?」
敬語すら排除して、マヒルちゃんが発言する。
「一番気にするところだろ?」
「全然! 一番気にしなくていいところっしょ! ガチであんたを平社員としか見ていないなら、こんな旅行も社交的な観光だけで終わるっすよ! ビジネスライクな態度で接するっすよ!」
ぐうの音も出ない。
「そうはいっても!」
「それより、あんたの気持ちのほうが大事なんだよ!」
バシャン! と、マヒルちゃんが湯を叩く。
「しょうもないプライド背負ってんのはあんたじゃん! 社長が、あんたをそんな色眼鏡で見てると思ってんのか? バカにすんな!」
はああ、とわざとらしくマヒルちゃんがため息をつく。
「アホだわ、マジで」
もう降参だと言わんばかりに、マヒルちゃんは話から離脱する。
「冷えたの飲んでくるっす。話し合っても解決しそうにないっすから」
ザバッと、岩風呂からハヒルちゃんが上がった。
「あんたなら、社長を救ってくれると思っていたのに」
意味深な言葉を残して。
「どういう意味だよ、マヒルちゃん!」
オレが呼びかけても、マヒルちゃんは振り返りもしない。
「もうちょっと、自分の心に正直かと思っていました」
「ええ。もっとご自身の強みを活かすべきだと」
他のメンバーも、次々と湯船から上がっていく。
なんだよ、みんなして。
オレはふてくされて、頭を洗い始めた。
社長がオレを? まさか。
しかし、あのときの社長の口調は、どう考えても……。
「いいや。やっぱりないない!」
疑念を振り払うように、オレはシャンプーまみれの頭をかきむしった。
ふと、背中に健康タオルが当たる。ごしごしと、オレの背中を誰かが洗ってくれていた。
「ああ、すいませ……って社長!?」
背中を流してくれていたのは、社長ではないか。
「ここではイーさん」
あ、そうか。
「イーさん、どうして?」
オレはてっきり、嫌われたと思っていたけれど。
「もう少しだけ、話したくなってな」
「ああ、オレもだ」
「いつもお疲れ様だな」
「それは、イーさんもだろ?」
背中をイーさんに預けながら、何を話せばいいのか考えていた。
ゴシゴシをオレの背中を洗いながら、イーさんも黙り込む。
強めに洗ってきたから、わずかながら痛みが走った。
そこで、ようやくオレの頭もクリアになっていく。
「イーさん、オレは」
「いいんだ。私はキミに恋愛対象と見られていなかったのは事実だ」
「だからオレは……あっ!?」
オレは振り返る。しかし、すぐに顔をそらす。
振り返ってはいけなかった。イーさんは、何も身につけていなかったから。バスタオル一枚だけで、オレと話している。
「水着はどうした、イーさん!」
「いいだろ、別に! 見られて困ることはない! 私はキミに一度、裸を見られたんだから!」
確かにそうだけれど!
「でも隠せよ! 勘違いするだろ!」
「しろよ勝手に! というか、してくれ!」
本気なのかよ、イーさん!? えらいこと言っているんだぞ?
「よせって! オレなんかにかまって。もっと自分を大切にしろよ!」
「している! その上で、私はキミと一緒になりたいと言っているんだ!」
こんな、なにもないオレなんかに関わっても、あんたのプラスになんかならない!
どれだけ走っても、オレはあんたには追いつけないんだ。
肩を並べて、一緒に手をつないでくれる相手じゃなきゃ!
「キミは、私のことは好きじゃないのか?」
「好きだよ!」
背を向けたままで、オレは思いをぶつけた。
ちなみにここは、水着着用なら混浴も可能である。しかも今日は、貸し切りだ。
しかし、飯塚社長は「後で入る」と部屋にこもってしまった。
「いやいや花咲さん、ありえんでしょ」
岩風呂で、オレはマヒルちゃんから説教されていた。酒が入っているせいか、かなり刺々しい。目は据わり、口角も下がっている。
看板には各種効能が書かれているのに、何も効果が現れない。むしろ、身体が冷え切っていく気分だ。
「あれだけわかりやすーいお膳立てしてさぁ、盛り上がったじゃん。空は花火が打ち上がって、最高のシチュエーションじゃん。なのにヘタレかよ」
腕を岩場にもたれさせ、マヒルちゃんは呆れ返っている。眉間には深く、シワが寄っていた。
「まさか、あれをフラグと思えない人がいるとは」
「うちの子も空気を読んだかのようにクズリだしたので、これはチャンスと思っていたのですが」
「ですよね? ギャルゲーなら告白タイムですよね?」
梶原一家と、ぴよぴよ一家が盛り上がる。
「ちょっと待ってくれ。オレと社長が恋仲になるなんて、それこそありえないだろ?」
「はあ? この期に及んで何をおっしゃるっての?」
オレが反論すると、マヒルちゃんが眉間のシワをさらに増やす。
「見りゃわかりますっての。二人がいい感じなの」
「だって、オレはヒラ、イーさんは社長だぞ」
オレが社長と釣り合うなんて、とても思えない。
「いやー、マジかー。ないわー」
マヒルちゃんが、頭を抱えてしまった。
「あのさあ、クリス社長がそんなこと気にすると思うか?」
敬語すら排除して、マヒルちゃんが発言する。
「一番気にするところだろ?」
「全然! 一番気にしなくていいところっしょ! ガチであんたを平社員としか見ていないなら、こんな旅行も社交的な観光だけで終わるっすよ! ビジネスライクな態度で接するっすよ!」
ぐうの音も出ない。
「そうはいっても!」
「それより、あんたの気持ちのほうが大事なんだよ!」
バシャン! と、マヒルちゃんが湯を叩く。
「しょうもないプライド背負ってんのはあんたじゃん! 社長が、あんたをそんな色眼鏡で見てると思ってんのか? バカにすんな!」
はああ、とわざとらしくマヒルちゃんがため息をつく。
「アホだわ、マジで」
もう降参だと言わんばかりに、マヒルちゃんは話から離脱する。
「冷えたの飲んでくるっす。話し合っても解決しそうにないっすから」
ザバッと、岩風呂からハヒルちゃんが上がった。
「あんたなら、社長を救ってくれると思っていたのに」
意味深な言葉を残して。
「どういう意味だよ、マヒルちゃん!」
オレが呼びかけても、マヒルちゃんは振り返りもしない。
「もうちょっと、自分の心に正直かと思っていました」
「ええ。もっとご自身の強みを活かすべきだと」
他のメンバーも、次々と湯船から上がっていく。
なんだよ、みんなして。
オレはふてくされて、頭を洗い始めた。
社長がオレを? まさか。
しかし、あのときの社長の口調は、どう考えても……。
「いいや。やっぱりないない!」
疑念を振り払うように、オレはシャンプーまみれの頭をかきむしった。
ふと、背中に健康タオルが当たる。ごしごしと、オレの背中を誰かが洗ってくれていた。
「ああ、すいませ……って社長!?」
背中を流してくれていたのは、社長ではないか。
「ここではイーさん」
あ、そうか。
「イーさん、どうして?」
オレはてっきり、嫌われたと思っていたけれど。
「もう少しだけ、話したくなってな」
「ああ、オレもだ」
「いつもお疲れ様だな」
「それは、イーさんもだろ?」
背中をイーさんに預けながら、何を話せばいいのか考えていた。
ゴシゴシをオレの背中を洗いながら、イーさんも黙り込む。
強めに洗ってきたから、わずかながら痛みが走った。
そこで、ようやくオレの頭もクリアになっていく。
「イーさん、オレは」
「いいんだ。私はキミに恋愛対象と見られていなかったのは事実だ」
「だからオレは……あっ!?」
オレは振り返る。しかし、すぐに顔をそらす。
振り返ってはいけなかった。イーさんは、何も身につけていなかったから。バスタオル一枚だけで、オレと話している。
「水着はどうした、イーさん!」
「いいだろ、別に! 見られて困ることはない! 私はキミに一度、裸を見られたんだから!」
確かにそうだけれど!
「でも隠せよ! 勘違いするだろ!」
「しろよ勝手に! というか、してくれ!」
本気なのかよ、イーさん!? えらいこと言っているんだぞ?
「よせって! オレなんかにかまって。もっと自分を大切にしろよ!」
「している! その上で、私はキミと一緒になりたいと言っているんだ!」
こんな、なにもないオレなんかに関わっても、あんたのプラスになんかならない!
どれだけ走っても、オレはあんたには追いつけないんだ。
肩を並べて、一緒に手をつないでくれる相手じゃなきゃ!
「キミは、私のことは好きじゃないのか?」
「好きだよ!」
背を向けたままで、オレは思いをぶつけた。
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