8 / 31
第二章 ひかしぼう! (我慢しているのに中々ウエイトが落ちず、将来を悲観して絶望!)
怪しい占い師 カメリエ・ゾマ
しおりを挟む
セリスに手を引かれてやってきたのは、占いの館だった。
大量の豆が入ったカゴが、ズラッと並んでいる。
豆は売れているようだが、占いの方はさっぱり人が来ていない。
「魔女様、豆をくださいませんか?」
入り口の先には、水晶玉が載った台と、それを覗き込む怪しい少女がいた。
丸メガネ越しに、紫色をした視線がこちらに注がれる。
「おやおや、セリス様じゃありませんか」
老婆のような口調だが、随分と若い。
「そちらのご婦人方は?」
「ライガ・ゲンヤといいます。旅のモンクです」
続いて、テトもお辞儀をして名乗った。
「これはご丁寧に。ワシはウォーロックのカメリエ・ゾマという。魔術の研究を行っておる。予言者とも呼ばれておるわい」
ウォーロック、魔法使いか。
どうりで強力なプラーナを放っていると思った。
研究者が多いと聞くが、魔法使いが予言まで行うとは。
「いい状態の豆ですね。おいくらですか?」
「言い値でいいわい。まあ一律、だいたいこれだけじゃわい」
言いながら、カメリエはそろばんを弾く。
ライカは豆を吟味しながら、袋へ詰めていった。気持ち多めに、代金を払う。
「まいどあり。あと、お時間があれば占いはいかがかな? 金は取らんから」
「魔女様は、予言もなさるのです」
セリスは言うが、見るからに怪しい。ライカは誘われている。
魔導の類に引っかかるライカではないが、女性からはただならぬプラーナを感じた。
「予言など研究の副産物よ。確実性はないぞよ」
こちらの考えを見透かしたかのように、返答が返ってきた。
「ほう、聖女様の指導員とはそなたか?」
一発で、ライカの素性を見抜かれた。
「なぜ、それを」
聖女のダイエット計画は秘匿されているはずだ。
「知っているも何も、魔王復活とセリス殿の聖女覚醒を言い立てたのは、私じゃぞ?」
確かに、カメリエは一番事情を知っている人じゃないか。
「どうやらお困りのようで。何でも申しつけてみよ」
カメリエと名乗ったウォーロックは、テーブルの上に手を組んで、身を乗り出す。
うっ、と思わず身を引いてしまう。
「実はですね、とある御婦人の世話をしているんですが、好き嫌いが多いのです。トマトやピーマンなど、野菜が中心です。何とか食べさせたいのですが」
体質改善は着実に進んでいるが、懸念材料はあった。セリスの好き嫌いだ。
セリスは、トマトなど酸味のある野菜や、ピーマン、ナスなどの苦い野菜、キノコ類を嫌う。
「あうう」と、セリスはつぶやく。
対して、テトの方は着痩せするタイプだった。
「テトさんは好き嫌いはないどころか、逆に食べ過ぎているくらいですね。気がついたら、酒に視線が向いています」
「気づかれていたか」
甘いものより、テトは酒のアテになるようなものを好む。食事制限でどうにかなるだろう。
そこまで聞いて、カメリエは水晶ごしに、ライカの顔を覗き込む。
カメリエと同じように覗き込み返す。
水晶から見ると、カメリエの顔が、魚眼レンズのように歪む。
「秘策はある。明日の午後、この地図を頼りに我が屋敷へ」
カメリエから一枚の紙を渡された。屋敷に続く簡単なルートが書かれている。
「では、続きは屋敷にて」
「ありがとうございます」
ライカが頭を下げた。
「何をされるのでしょう?」
「わかりませんね。とにかく明日、魔女様のお屋敷へ行ってみます」
◇ * ◇ * ◇ * ◇
たっぷり食材の入ったカゴを、キッチンテーブルにドンと置く。
セリスはホッと息をつき、テトはグルグルと両肩を回す。
「どうされました。筋を違えたとか?」
「いいえ。ちょっと肩こりが」
苦労しているのだろう。テトの顔からは疲労の色が窺えた。
「夕食も、二人に作ってもらいます」
ライカが出した提案は、セリスとテトによる料理だ。
この屋敷では、主にミチルが料理を担当していたという。だが、ミチルは身ごもっている。
料理担当はテトでも十分なのだ。
が、この調理にはもう一つ意味があった。
「セリスに何を食べているか把握させること」である。
料理を自分で作る事で、どういった食材を食べているのか、どれだけの調味料が使われているか。
把握することで、どんな味付けが成されているのかを自分で考えて欲しかった。
「テトさん、ご指導よろしくお願いします」
「うむ」
セリスが頭を下げると、テトは早速エプロンを着けてあげる。
「では、セリス殿。棚の上にあるボールを取っていただけませぬかな?」
テトに頼まれて、セリスはボールに手を伸ばす。
「うーん、うーん」
どんなにつま先立ちしても、棚に指が届かない。
業を煮やしたセリスは、側にあった木箱を台の代わりにして、ボールを取った。
「では、レタスをボールに入れて、オリーブオイルを垂らして下され」
「はい」と、セリスはレタスにオイルをかけて混ぜる。
続いて、ほうれん草を炒め始めた。
「コショウは、振りすぎないで。食材からも味が出ますし、豚肉があります。味が物足りなければ一緒に食べればよいでしょう。おいしくなりますゆえ」
「は、はひ」
ぎこちないながらも、セリスはフライパンを扱う。
その姿勢には、食べる人に対する誠意が込められているように思えた。
さすがに花嫁修業をしていただけあって、セリスは段々と手際がよくなっていく。
調理の方は言う事がないようだ。
今日のメインは、ソーセージの盛り合わせである。
サイドには、ほうれん草とキノコのソテー、パンは雑穀の混ざった物を使用した。
レタスサラダには、茹でた貝を合わせてある。
食卓の準備をしていると、屋敷のドアが開く。
「こんばんはー」
二人組のカップルが、来客してきた。
一人は大きなお腹を抱えている。
「あれ、ミチルさん? お兄様も」
突然の来訪者に、セリスがその場で硬直した。
「入院してたんじゃ?」
「セリスお嬢様がお料理を作ってくれるって、お義母さまが。だったら、行かなきゃです」
ミチルが言うと、隣に立つ男性が帽子を脱ぐ。
「はじめまして。セリスの兄です」
「ライカと申します」
セリスの兄も、妹が心配な様子だ。
二人が席に着いたところで、食事が始まる。
「ダイエットの方は、順調?」
ミチルは、貝を殻ごと口に入れた。口の中で身を取り出して殻を出す。
「まだ始まったばかりですから、何とも」
しかし、やせる体質作りは滞りなく行われているはずだ。
下手にいきなり減量を始めると、その過酷さから断念してしまう人も少なくない。
身体を運動になれさせること、運動を好きになってもらうことの方が、今後において、減量よりずっと大事だ。
「そうね。あなたの教え方は、そうよね」
「あの、お二人に質問があるんですが、どうしてミチルさんはやせようとしたんですか?」
夫からの質問に、ミチルが照れ臭そうにため息をつく。
「あー、言いにくいんだけど、私、子供の頃に大失恋したの」
「もう五年前になるんですよね」
ミチルの思い人が、他の女性と結ばれてしまった。
その後、やけ食いした結果、ミチルは激太りに。
「近所にあった寺院がダイエットを教えているって聞いて。そこで修行していたライカに、手取り足取り減量方法を教えてもらったってワケ」
その甲斐あって、三ヶ月で一〇キロ減に成功した。
「三ヶ月で、一〇キロも」と、テトが青ざめる。
だが、ミチルはブンブンと頭を振った。
「あなたたちはマネをしてはダメよ。当時は私をフった奴を見返したくて必死だった結果よ。無理して減量したから、体調も崩しかけて、ライカに注意されたんだから」
ミチルが当時の思い出を語る。
無理な減量で食欲をなくしたミチルは、ライカが作った粥しか食べられなくなった。
あの時ほど、ダイエットが危険だと思ったことはないと、ミチルは当時を振り返る。
「でも、嫁ぎ先がいい方たちばかりで、今は幸せよ」
旦那も微笑みながら頷く。
「素敵です」
ロマンチストなのか、セリスは目を輝かせて手を胸で組む。
「これって運命です。うちの庭で、恋の花が咲いたわけですから」
「ありがとう、セリス嬢」
「妹に祝福してもらって、うれしいよ。本当に、すばらしい妹に育った。昔から優しい子だったけど」
幼い頃から、セリスはどんくさかった。
運動はダメ、剣術の稽古もロクにできない。
攻撃魔法も覚えられず。
両親は、セリスに戦闘技術の習得は不可能だと見切りをつけて、花嫁修業にシフトした。
それでも失敗続き。
「何をしてもうまくいかないセリスは、ある日、家を飛び出したんだ。辛いことがあったら、丘の上で夕陽を見るのが習慣だったよね」
「もうっ、お兄さまったら」
セリスが照れ笑いをする。
「では、お二人を送りましょう。本日はありがとうございました。ミチルさん」
ミチル夫婦を家まで送った。
「いいなあ。わたしも、もう一度あの子に会いたいです」
セリスにも、想い人がいるらしい。
「兄が話していた丘の上に、一人の少年がいたんですよ」
誰も知る人がいないはずだった丘の上で、セリスは一人の少年と出会った。
丸々と太った、ヤマンド人風の少年だったらしい。
「その時に会った男の子がくれたのが、甘納豆でした。『これをあげるから、泣かないでください』って渡されて、一口食べたら、勇気が湧いてきたんです」
それ以来、セリスは泣き言を言わずに、花嫁修業に勤しんだという。
どうりで家事が得意なはずだと、ライカは思った。
「そ、そうですか。なるほど」
なるほど。そういうことか。
「どうかなさいましたか、ライカさん?」
「いいえ。なんでも」
慌てて、ライカは首を振る。
大量の豆が入ったカゴが、ズラッと並んでいる。
豆は売れているようだが、占いの方はさっぱり人が来ていない。
「魔女様、豆をくださいませんか?」
入り口の先には、水晶玉が載った台と、それを覗き込む怪しい少女がいた。
丸メガネ越しに、紫色をした視線がこちらに注がれる。
「おやおや、セリス様じゃありませんか」
老婆のような口調だが、随分と若い。
「そちらのご婦人方は?」
「ライガ・ゲンヤといいます。旅のモンクです」
続いて、テトもお辞儀をして名乗った。
「これはご丁寧に。ワシはウォーロックのカメリエ・ゾマという。魔術の研究を行っておる。予言者とも呼ばれておるわい」
ウォーロック、魔法使いか。
どうりで強力なプラーナを放っていると思った。
研究者が多いと聞くが、魔法使いが予言まで行うとは。
「いい状態の豆ですね。おいくらですか?」
「言い値でいいわい。まあ一律、だいたいこれだけじゃわい」
言いながら、カメリエはそろばんを弾く。
ライカは豆を吟味しながら、袋へ詰めていった。気持ち多めに、代金を払う。
「まいどあり。あと、お時間があれば占いはいかがかな? 金は取らんから」
「魔女様は、予言もなさるのです」
セリスは言うが、見るからに怪しい。ライカは誘われている。
魔導の類に引っかかるライカではないが、女性からはただならぬプラーナを感じた。
「予言など研究の副産物よ。確実性はないぞよ」
こちらの考えを見透かしたかのように、返答が返ってきた。
「ほう、聖女様の指導員とはそなたか?」
一発で、ライカの素性を見抜かれた。
「なぜ、それを」
聖女のダイエット計画は秘匿されているはずだ。
「知っているも何も、魔王復活とセリス殿の聖女覚醒を言い立てたのは、私じゃぞ?」
確かに、カメリエは一番事情を知っている人じゃないか。
「どうやらお困りのようで。何でも申しつけてみよ」
カメリエと名乗ったウォーロックは、テーブルの上に手を組んで、身を乗り出す。
うっ、と思わず身を引いてしまう。
「実はですね、とある御婦人の世話をしているんですが、好き嫌いが多いのです。トマトやピーマンなど、野菜が中心です。何とか食べさせたいのですが」
体質改善は着実に進んでいるが、懸念材料はあった。セリスの好き嫌いだ。
セリスは、トマトなど酸味のある野菜や、ピーマン、ナスなどの苦い野菜、キノコ類を嫌う。
「あうう」と、セリスはつぶやく。
対して、テトの方は着痩せするタイプだった。
「テトさんは好き嫌いはないどころか、逆に食べ過ぎているくらいですね。気がついたら、酒に視線が向いています」
「気づかれていたか」
甘いものより、テトは酒のアテになるようなものを好む。食事制限でどうにかなるだろう。
そこまで聞いて、カメリエは水晶ごしに、ライカの顔を覗き込む。
カメリエと同じように覗き込み返す。
水晶から見ると、カメリエの顔が、魚眼レンズのように歪む。
「秘策はある。明日の午後、この地図を頼りに我が屋敷へ」
カメリエから一枚の紙を渡された。屋敷に続く簡単なルートが書かれている。
「では、続きは屋敷にて」
「ありがとうございます」
ライカが頭を下げた。
「何をされるのでしょう?」
「わかりませんね。とにかく明日、魔女様のお屋敷へ行ってみます」
◇ * ◇ * ◇ * ◇
たっぷり食材の入ったカゴを、キッチンテーブルにドンと置く。
セリスはホッと息をつき、テトはグルグルと両肩を回す。
「どうされました。筋を違えたとか?」
「いいえ。ちょっと肩こりが」
苦労しているのだろう。テトの顔からは疲労の色が窺えた。
「夕食も、二人に作ってもらいます」
ライカが出した提案は、セリスとテトによる料理だ。
この屋敷では、主にミチルが料理を担当していたという。だが、ミチルは身ごもっている。
料理担当はテトでも十分なのだ。
が、この調理にはもう一つ意味があった。
「セリスに何を食べているか把握させること」である。
料理を自分で作る事で、どういった食材を食べているのか、どれだけの調味料が使われているか。
把握することで、どんな味付けが成されているのかを自分で考えて欲しかった。
「テトさん、ご指導よろしくお願いします」
「うむ」
セリスが頭を下げると、テトは早速エプロンを着けてあげる。
「では、セリス殿。棚の上にあるボールを取っていただけませぬかな?」
テトに頼まれて、セリスはボールに手を伸ばす。
「うーん、うーん」
どんなにつま先立ちしても、棚に指が届かない。
業を煮やしたセリスは、側にあった木箱を台の代わりにして、ボールを取った。
「では、レタスをボールに入れて、オリーブオイルを垂らして下され」
「はい」と、セリスはレタスにオイルをかけて混ぜる。
続いて、ほうれん草を炒め始めた。
「コショウは、振りすぎないで。食材からも味が出ますし、豚肉があります。味が物足りなければ一緒に食べればよいでしょう。おいしくなりますゆえ」
「は、はひ」
ぎこちないながらも、セリスはフライパンを扱う。
その姿勢には、食べる人に対する誠意が込められているように思えた。
さすがに花嫁修業をしていただけあって、セリスは段々と手際がよくなっていく。
調理の方は言う事がないようだ。
今日のメインは、ソーセージの盛り合わせである。
サイドには、ほうれん草とキノコのソテー、パンは雑穀の混ざった物を使用した。
レタスサラダには、茹でた貝を合わせてある。
食卓の準備をしていると、屋敷のドアが開く。
「こんばんはー」
二人組のカップルが、来客してきた。
一人は大きなお腹を抱えている。
「あれ、ミチルさん? お兄様も」
突然の来訪者に、セリスがその場で硬直した。
「入院してたんじゃ?」
「セリスお嬢様がお料理を作ってくれるって、お義母さまが。だったら、行かなきゃです」
ミチルが言うと、隣に立つ男性が帽子を脱ぐ。
「はじめまして。セリスの兄です」
「ライカと申します」
セリスの兄も、妹が心配な様子だ。
二人が席に着いたところで、食事が始まる。
「ダイエットの方は、順調?」
ミチルは、貝を殻ごと口に入れた。口の中で身を取り出して殻を出す。
「まだ始まったばかりですから、何とも」
しかし、やせる体質作りは滞りなく行われているはずだ。
下手にいきなり減量を始めると、その過酷さから断念してしまう人も少なくない。
身体を運動になれさせること、運動を好きになってもらうことの方が、今後において、減量よりずっと大事だ。
「そうね。あなたの教え方は、そうよね」
「あの、お二人に質問があるんですが、どうしてミチルさんはやせようとしたんですか?」
夫からの質問に、ミチルが照れ臭そうにため息をつく。
「あー、言いにくいんだけど、私、子供の頃に大失恋したの」
「もう五年前になるんですよね」
ミチルの思い人が、他の女性と結ばれてしまった。
その後、やけ食いした結果、ミチルは激太りに。
「近所にあった寺院がダイエットを教えているって聞いて。そこで修行していたライカに、手取り足取り減量方法を教えてもらったってワケ」
その甲斐あって、三ヶ月で一〇キロ減に成功した。
「三ヶ月で、一〇キロも」と、テトが青ざめる。
だが、ミチルはブンブンと頭を振った。
「あなたたちはマネをしてはダメよ。当時は私をフった奴を見返したくて必死だった結果よ。無理して減量したから、体調も崩しかけて、ライカに注意されたんだから」
ミチルが当時の思い出を語る。
無理な減量で食欲をなくしたミチルは、ライカが作った粥しか食べられなくなった。
あの時ほど、ダイエットが危険だと思ったことはないと、ミチルは当時を振り返る。
「でも、嫁ぎ先がいい方たちばかりで、今は幸せよ」
旦那も微笑みながら頷く。
「素敵です」
ロマンチストなのか、セリスは目を輝かせて手を胸で組む。
「これって運命です。うちの庭で、恋の花が咲いたわけですから」
「ありがとう、セリス嬢」
「妹に祝福してもらって、うれしいよ。本当に、すばらしい妹に育った。昔から優しい子だったけど」
幼い頃から、セリスはどんくさかった。
運動はダメ、剣術の稽古もロクにできない。
攻撃魔法も覚えられず。
両親は、セリスに戦闘技術の習得は不可能だと見切りをつけて、花嫁修業にシフトした。
それでも失敗続き。
「何をしてもうまくいかないセリスは、ある日、家を飛び出したんだ。辛いことがあったら、丘の上で夕陽を見るのが習慣だったよね」
「もうっ、お兄さまったら」
セリスが照れ笑いをする。
「では、お二人を送りましょう。本日はありがとうございました。ミチルさん」
ミチル夫婦を家まで送った。
「いいなあ。わたしも、もう一度あの子に会いたいです」
セリスにも、想い人がいるらしい。
「兄が話していた丘の上に、一人の少年がいたんですよ」
誰も知る人がいないはずだった丘の上で、セリスは一人の少年と出会った。
丸々と太った、ヤマンド人風の少年だったらしい。
「その時に会った男の子がくれたのが、甘納豆でした。『これをあげるから、泣かないでください』って渡されて、一口食べたら、勇気が湧いてきたんです」
それ以来、セリスは泣き言を言わずに、花嫁修業に勤しんだという。
どうりで家事が得意なはずだと、ライカは思った。
「そ、そうですか。なるほど」
なるほど。そういうことか。
「どうかなさいましたか、ライカさん?」
「いいえ。なんでも」
慌てて、ライカは首を振る。
0
あなたにおすすめの小説
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?
タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。
白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。
しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。
王妃リディアの嫉妬。
王太子レオンの盲信。
そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。
「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」
そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。
彼女はただ一言だけ残した。
「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」
誰もそれを脅しとは受け取らなかった。
だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
辺境ぐうたら日記 〜気づいたら村の守り神になってた〜
自ら
ファンタジー
異世界に転移したアキト。 彼に壮大な野望も、世界を救う使命感もない。 望むのはただ、 美味しいものを食べて、気持ちよく寝て、静かに過ごすこと。 ところが―― 彼が焚き火をすれば、枯れていた森が息を吹き返す。 井戸を掘れば、地下水脈が活性化して村が潤う。 昼寝をすれば、周囲の魔物たちまで眠りにつく。 村人は彼を「奇跡を呼ぶ聖人」と崇め、 教会は「神の化身」として祀り上げ、 王都では「伝説の男」として語り継がれる。 だが、本人はまったく気づいていない。 今日も木陰で、心地よい風を感じながら昼寝をしている。 これは、欲望に忠実に生きた男が、 無自覚に世界を変えてしまう、 ゆるやかで温かな異世界スローライフ。 幸せは、案外すぐ隣にある。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる