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猫村沖雪。
夢見勝。
二人は対面し、座り直した。
「お前を林檎にするにはまず、ユーの協力が必要になる。出て来いよ、この会話も聞いてんだろ?」
勝は沖雪の瞳の奥を見た。彼には沖雪の奥にいる少女という存在に確証を得ていたが、本人である沖雪はそうではないらしく、
「ユー……聞いてるのか……?」
沖雪は勝のに対する反応に困りつつ、そう呟いていた。
己の中にいるかもわからない少女に。
「ユーはただの化物じゃねえ。戦い方に意思を感じた」
「それも、あの木で見れるの?」
先程から感じていた謎。勝の得られるはずのない情報が、勝の口から出てくるという事も、先程の通信手段の話を聞けば、よほどの謎というものでもなくなる。
「ああ、木というか、湯村の見たものを、湯村が通信木に共有したから、通信木を介して俺が見ただけだ。だからユーが発した湯村に対する悪意なんかも、表情からよく分かる」
悪意。そう、確かに、己の中に沸き立ったものはそういう悪感情だった。それが自分のものだったのか、ユーのものだったかは、今でも分からない。
あの暴走は、果たして、全てユーの起こしたものなのだろうか?
「ツウシンキ……通信機とかけてるの?」
現実逃避をするように沖雪は話を変える。
「俺のネーミングじゃねーからな」
今更なツッコミに、少し嫌そうな顔をした勝が腰の折られた話を立て直した。
「ユーは意思のある人間だ。だとしたらこの現状を打破出来るのは奴だけだ。お前の境遇は、ユーが暴れるだけ暴れて隠れたままであることが原因に始まってる。だが、奴が出てくれば話は変わってくる。正十字評議会で再び審判を下す必要が出てくるだろうな。ユーが今、何を考えてるかは知らねえが、ここに出てきて、無害なのを示せば、お前もユーも晴れてこちらの仲間入りだ」
「そうは言っても、ユーがこの会話も聞いてるって、なんで分かるんだ?」
「ユーの出てきたタイミングだ。実戦テストの目的は、力の覚醒を短縮させるためにある。正十字隊に所属するデストロイヤーなら、力の覚醒には時間が掛かるからな。だからこのテストで、正十字隊所属隊士の力を強制的に覚醒させる。だがお前みてーにボコボコにされるまで覚醒に時間がかかった事例はねえ」
危険インシデントと呼ばれる起因もここにある。と、勝。沖雪の苦い表情を無視し、そのまま話を続けた。
「となると、ユーが出て来たのには理由がある。お前を守るため、あるいは、お前を傷つけた湯村をぶっ殺すため。どちらにせよ、今わかってんのは──少なくとも、ユーはお前の敵じゃねえってことだな」
「……でも、あいつのせいで僕はこんな扱いを受けてるんだぞ? ユーが僕の味方だと? 信じられるかよ!」
「だから、これから確実な味方にさせるところだが──こうして話したところで簡単に出て来るわけでもねえようだな。世話のかかる女だ」
表に出ろ。と、勝は立ち上がる。
「表っつっても裏庭だけどな、広場がある。付いて来い」
「何を……」
「実戦テスト、ラウンドスリー」
夢見勝。
二人は対面し、座り直した。
「お前を林檎にするにはまず、ユーの協力が必要になる。出て来いよ、この会話も聞いてんだろ?」
勝は沖雪の瞳の奥を見た。彼には沖雪の奥にいる少女という存在に確証を得ていたが、本人である沖雪はそうではないらしく、
「ユー……聞いてるのか……?」
沖雪は勝のに対する反応に困りつつ、そう呟いていた。
己の中にいるかもわからない少女に。
「ユーはただの化物じゃねえ。戦い方に意思を感じた」
「それも、あの木で見れるの?」
先程から感じていた謎。勝の得られるはずのない情報が、勝の口から出てくるという事も、先程の通信手段の話を聞けば、よほどの謎というものでもなくなる。
「ああ、木というか、湯村の見たものを、湯村が通信木に共有したから、通信木を介して俺が見ただけだ。だからユーが発した湯村に対する悪意なんかも、表情からよく分かる」
悪意。そう、確かに、己の中に沸き立ったものはそういう悪感情だった。それが自分のものだったのか、ユーのものだったかは、今でも分からない。
あの暴走は、果たして、全てユーの起こしたものなのだろうか?
「ツウシンキ……通信機とかけてるの?」
現実逃避をするように沖雪は話を変える。
「俺のネーミングじゃねーからな」
今更なツッコミに、少し嫌そうな顔をした勝が腰の折られた話を立て直した。
「ユーは意思のある人間だ。だとしたらこの現状を打破出来るのは奴だけだ。お前の境遇は、ユーが暴れるだけ暴れて隠れたままであることが原因に始まってる。だが、奴が出てくれば話は変わってくる。正十字評議会で再び審判を下す必要が出てくるだろうな。ユーが今、何を考えてるかは知らねえが、ここに出てきて、無害なのを示せば、お前もユーも晴れてこちらの仲間入りだ」
「そうは言っても、ユーがこの会話も聞いてるって、なんで分かるんだ?」
「ユーの出てきたタイミングだ。実戦テストの目的は、力の覚醒を短縮させるためにある。正十字隊に所属するデストロイヤーなら、力の覚醒には時間が掛かるからな。だからこのテストで、正十字隊所属隊士の力を強制的に覚醒させる。だがお前みてーにボコボコにされるまで覚醒に時間がかかった事例はねえ」
危険インシデントと呼ばれる起因もここにある。と、勝。沖雪の苦い表情を無視し、そのまま話を続けた。
「となると、ユーが出て来たのには理由がある。お前を守るため、あるいは、お前を傷つけた湯村をぶっ殺すため。どちらにせよ、今わかってんのは──少なくとも、ユーはお前の敵じゃねえってことだな」
「……でも、あいつのせいで僕はこんな扱いを受けてるんだぞ? ユーが僕の味方だと? 信じられるかよ!」
「だから、これから確実な味方にさせるところだが──こうして話したところで簡単に出て来るわけでもねえようだな。世話のかかる女だ」
表に出ろ。と、勝は立ち上がる。
「表っつっても裏庭だけどな、広場がある。付いて来い」
「何を……」
「実戦テスト、ラウンドスリー」
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