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22、決勝戦に向けて

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「ねえ~、ブルックリン。確か次は決勝戦…何かこう…。アイデアとかあるの?」とフェアリーがブルックリンの部屋で、ぬいぐるみを抱えベッドでゴロゴロしながら、こちらをチラ見しつつ聞いている。その足元でケイトが図書室から借りている本を読んでいる。

 そのケイトの手元を見てみるとフムフム、「異世界転生☆♡もしかして純愛!!屋敷の近くの川にいるはずのないペンギンがいたら?」ってタイトルだ。

 タイトルを見た瞬間、ブルックリンの頭の中からフェアリーの質問はどこかへ行った。思わず「・・・・ねえ、ケイト。その本のどこが面白いの?」と質問してしまった。

ケイトは「ふっ、まだまだお子様ね、ブルックリン。――――このイケメンペンギンと伯爵令嬢の道ならぬ恋の行方が面白いのよっ!!このシリーズは累計100万部も売れてて、この話はスピンオフなのよね。」と唾を飛ばさんばかりこちらを向いて意見を述べると、引き続き読書に没頭し始めた。

「?――――そんなものかしら??」と思わず首を傾げた。嘘だ。聞いたことない。私聞いたことない。

「ねえねえ、ブルックリン~。」とブルックリンの話を聞きたいフェアリーはジトーとこちらを見ている。まあしゃあないか。

「まあ、正直言ってエドワードは火だからね。まだ、私もいい考えが思いつかないのよね・・・・・・」と少し俯いて話した。もちろんこれは本音だ。

――――奴は火属性でもトップクラスの実力の持ち主と聞いている。通常は攻撃に置いてはやはり火属性は有利に働くだろう。私の土魔法で出来る事。

 んー?一体何だろう??とは言っても後3日後には決勝戦だ。幸い、まだどの試合でも魔方陣は出していないから、恐らく奴は私の魔法陣の事を知らないと思う。魔法陣、ん?そうか!!その手があったか。



 次の日の放課後、決勝戦に使われるフィールドや大会関係者の利用するテント、観客席を調べるブルックリンの姿があった。
(――――私は火属性のような機動性のある攻撃はとても出来ない。奴の攻撃をしのいで時間を稼ぐ方法が幾つか必要だ。)

「ねえ~、ブルックリン。まだ寮に帰らないの?」遠くからブルックリンを呼ぶ、フェアリーとケイトの姿がある。

「―――うん、もう少し考えたいから先に帰ってて。」と2人に向かってそう叫ぶブルックリン。

この日は「・・・・ブルックリンさん、もうそろそろ寮の夕食の時間よ?」とローガン先生の声が掛かるまで、遅くまで学校で過ごすブルックリンの姿があった。



 当日は前日からの雨も上がり決勝戦日和?だ。フェアリー達と話しながらフィールドに向かうブルックリンは、ゆっくりと歩きながら、水が土にしみ込んだしめっぽい匂いを嗅いでいた。

 惚れ惚れする程の晴天で、空は雲一つない。ただ、さっきから少し南風が吹いている。今日はあんまり奴の風下には入らないようにしよう。

「ブルックリンさん」と背後からブルックリンに声が掛けられた。思わず振り返ってみるとリアム王子だった。

「今日は同じ土属性の者として応援してる。ぜひ頑張ってくれ。」とにっこり笑いながらサムズアップしている。

 ブルックリンも微笑みながら「はい、頑張りますね。」と答える。

「――――今日は悪いけど僕が貰うよ。」と横から声がした。エドワードだ。いつもは冷静な彼の瞳が興奮しているのか、今日はキラキラしている。(――ん?それは気のせいか?・・・・それか私の目が疲れてる?)

「――――ごめんなさい。残念だけど今日も私が貰うわね。」と申しなさげに奴の目を見て答えて置いた。(いやいやいや、私、絶対に負けないですけど?)

「おーい、2人ともそろそろフィールドに入って!!」と今日のフィールドの担当のエネル先生の声がした。この先生はけっこう男前の先生で女子生徒に大変人気がある。

 確かこの国でも指折りの治癒魔法のスペシャリストでもあったはず。

「「はい!!」」と2人とも答えると、フィールドに向かって並んで歩きながら所定の位置へ入って行った。

「ブルックリンさん、今日は君に引導を渡すよ。長かった競争にここで決着を付けよう。」とエドワードが手に杖を持ち、ブルックリンに杖先を向けていた。
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