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59、お父さん、そして決戦の場へ

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「っ、エド。私が全部足を止める。一気にやれる??」杖を振るいつつエドに話す。

「わかった。さっさとやれ!」とエドが叫んだ。

「少しだけ耐えてね!」と呪文の詠唱を始めるブルックリン。




「いっくわよーー!!サンドチェーン!!」杖から一気に地中にエネルギーが流れる。

「エド、そして魔法騎士団の皆さん、今のうちに!!」

「あぁ任せろ!ファイアーフォックス!!」とエドが叫んだ瞬間、大部分の魔物が燃え上がった。

数匹は仕留め損ねたみたいだが、無事に魔法騎士団が始末した。

「エド、この魔物はこの中で発生させた物だわ。私の呪文でもう一度ここから防御の魔法陣を貼り直す。」そう言いながら呪文を唱えると、ビリビリとした空気が発生し、空気が一掃した。

「これでOK!」と言った次の瞬間、ブルックリンの顔色が変わった。空中から次から次へと魔物が湧いてきているのだ。


「っ!!きりがない。とりあえずエド、これをあげるわ。」と言って懐から紙を取り出した。



「私がつきっきりで作成した護符よ。一枚一枚に大地のエネルギーを練り混んであるの。これを体に身につけておいて。そして魔法騎士団にも渡して。私は今から魔法塔の屋上に上がり、魔物たちのエネルギーがどこから来るのかサーチをかけてみるわ。」と言ってエドワードの手に束になった護符を握らせた。そして箒を取り出し魔法塔のてっぺんに登りはじめた。


今日は風がなかったはずなのに今は気をつけないと風に流されていきそうなほど強い風が吹いている。

「くっ!!」と歯を食いしばり箒をコントロールする。途中、部屋の壁がぶち抜かれている場所があった。


ガブリエラ先輩とコリンズが戦っている場所だ。


ブルックリンは箒をコントロールしながら護符を2枚取り出すとアーチャーとガブリエラの所まで飛んでいくように呪文をかけた。2枚の護符は強風に負けじと二人がいる方角へ飛んでいった。


「少しは戦力になるといいんだけど・・・・」そう呟くと魔法塔のてっぺんに辿り着いた。



頭上に真っ黒な雲が迫ってきているように感じた。見るからに不吉そう。


ブルックリンは強風にあおられながら杖を取り出し「サーチ!!」と呪文を唱え「この悪しき力の源を教えたまえ・・・」と呟きながらひざまづいた。

目を閉じて自分の体から杖を媒体にして力を拡散させるイメージだ。




「ウソ!!そんなところから力が送られてきているの?」

ブルックリンは大きくため息をつくと悪しき力のエネルギーの道を確認するためにを見上げた。

「黒雲にエネルギーが貯めてあったとはね。さすがに思いつかないでしょ。でも分かったところでどうしようかしら?」あごに手を当てて考えてみる。



くるくるくるっと杖を回すと「うん、やった事ないけど試してみる価値はあるかもしれない。一か八かだ。」と言うと「変換魔法発動。ちょっと量が多いから私の力では全部は無理かもしれない。リンデンフラワーよ力を貸して?」


「ヘブンリーブスチェンジ、ニュートリエント。悪しき力を大地の力に!!」杖を高く掲げる。



ごうごうと音を立ててブルックリンの杖に吸い取られていく黒雲のエネルギーをブルックリンは自分の体で大地の力に変換していく。



この力は先ほどエドワードや魔法騎士団、アーチャーやガブリエラの護符を通じてそれぞれの魔力に変換されている。この術式を紙にするのに時間を要したのだ。

(・・・・最初からの真っ向勝負はあんまり考えてなかった。相手の力を利用するのよ。でも、くっ、苦しい。体がちぎれそう。私あんまり立っていられないかも知れない。)


脂汗が流れ足が震えてきた。
「ゴボッ」と口から血を吹き出した。

(お願い、持って・・・・・・・・・)


ブルックリンの視界から黒雲が無くなり元の青い空が現れた。その青い空を見た瞬間、ブルックリンの意識が落ちた。











暗闇の中
『ブルックリン、ブルックリン。起きなさい。』と声が聞こえる。


あれはお父さんの声だ。確かお父さんは死んだはずじゃ・・・・体が鉛のように重い。もう指先一つ動かすのも億劫だ。

『お父さん、もう疲れちゃったよ。私、とっても眠いの。』

『お前の大切な人たちが危ない。目を覚ませ。リンデンフラワーから力を借りて決着をつけろ。』


『えっ、そうなの?どうして?』

『それは今お前を必死で助けてくれている彼から聞きなさい。お前は強い子だ。なんと言っても俺の子だからな。お父さん、上から見てるぞ。お前なら出来る。』



パチリと目を覚ますと必死な形相でブルックリンを見つめているエドワードと目が合った。


「・・・・・・・・・良かったブルックリン。俺、もうダメかと思った。」エドワードが笑っていた。こんなエドの笑顔を見たのは久しぶりだ。

「起き上がれるか?本当はお前だいぶん無理をしたから寝かせてやりたいけど師団長たちが行方不明だ。南西方向の数キロ先にいるとローリーが言ってるが詳しくわかるか?」

「えっ、ローリー復活できたの?良かった。じゃあ私の魔法陣で探ってみる。」そう話すブルックリンの周りをローリーがふわふわと取り囲んでいる。復活出来たのがよほど嬉しかったのだろう。

「エド、分かったわ。ここから移動用の魔法陣で飛びましょう。」そう話してブルックリンが杖を使って魔法陣を描こうとしたとき『2人とも。私が連れて行く。力を温存して』とローリーが話しかけて来た。

「じゃあローリー頼みます。位置情報を送るわね、それっ!!」

『これだけ情報があれば大丈夫。では急ぎましょう。戦況はあまり良く有ないわ。』



「俺が移動用の魔法陣が出来れば良かったんだけど、俺、方向音痴でからっきしだしな。すまない。」とエドワードが苦笑いしていた。


「エド。悪いけど防御用の魔法陣を展開させといて。いきなり戦いの渦中に入るかもしれないから。」そう話すと目の前の景色がガラリと変わり、アーチャーたちがいる戦いの場についた。
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