美しい箱庭で愛する人と暮らしたい。義妹よ邪魔をしないで下さい。

釋圭峯

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リンゴの木の下で

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結局は図書館で1時間ほど過ごしたと思う。

何冊か手に取りイスに座ってパラパラと本を読んだり挿絵を眺めたり。殆ど外に出る事のないフローレンスには新鮮な経験だった。
興味深い分野の本を読んで得心するとハインツ様を探し始めた。

ハインツ様は医療関連の本棚にいた。何か考え込んでいる様だったがフローレンスに気がつくとにっこりと笑い「そろそろ帰りましょうか?」と声をかけて来た。

「はい、結構時間を過ごしてしまって気がつくとこんな時間でした。ハインツ様お時間の方宜しかったですか?」と聞くと「あぁ大丈夫ですよ。」と答えると腕を差し出して馬車乗り場までエスコートした。

フローレンスを馬車に乗せると「今日はお疲れ様でした。早く休んでください。」とフローレンスに言い、馬車の御者に無事に送り届けるよう話した。



その週末にシシリー辺境伯様から紹介して頂いた庭師の親子がやって来た。

サフィノワ家の庭園をさっと見ると幾つかのプランを示してくれた。中々斬新な物もあり話を聞いているだけでフローレンスは楽しくなった。

特に息子さんが新しい技術や流行りを取り入れお父様に提案をしている様だ。そしてお父様の方はやはり王宮の庭園作りにも参加されたと言う。

一度サフィノワ家の庭園を手がけて頂く事になり、次の機会に細かい所を詰めましょう。とこの日は一旦お開きとなった。


それから約1週間後王宮医療チームから検査結果が来た。


フローレンスの体はほかの人間に比べると多少虚弱体質の傾向があり、特に季節の変わり目や急激な温度変化に注意する事などを留意すればほぼ健常者と変わりなく生活が送れる。
リンダ医師のブライダルチェックの診察は特に問題は無いでしょうと言う事だった。


この結果を受けお父様が大変喜び「フローレンス、ゆっくりでいいからマナーや一般常識を身に付けて行こう。講師を雇い入れよう。」と決めてしまった。フローレンスは結婚できるかもしれない、子供が産めるかもしれないと考えると嬉しいような驚くような変な気持ちだった。

そしてこの結果がサフィノワ家に送られてきた次の日に、クリス侯爵様からハインツ様との婚約の打診が来たのだった。

これにはさすがにお父様がびっくりしてました。そしてフローレンスに「ハインツ様はここまでやるほどお前が欲しいんだよ。もうあきらめろ。父親としたら複雑だけどね。」と一言。

そして次の週の週末にはクリス侯爵様と奥様とハインツ様が揃ってサフィノワ家に訪問されました。

「いやいやいや~。ストーク伯爵急で申し訳ない。ハインツがどうしてもと言って聞かなくてね。」と応接室へ案内するなり開口一番そうおっしゃいました。

「それでフローレンス嬢どうだろうか?ハインツとの事少しは考えて貰えないだろうか?」とフローレンスに伺ってきました。

フローレンスは一呼吸すると「私はハインツ様をお慕いしております。」と一言言った。ハインツ様を見るとびっくりした顔でフローレンスを見つめている。

「ただ、先日もお父様と話をしたばかりなのですが、私自身が幼少の頃から病弱だったため普通のご令嬢が身に着けている事が何一つ身についておりません。マナー講師をお願いする方向でいる程です。もう少し待って頂けないでしょうか?」とクリス侯爵ご夫婦に向かってはっきりと言ったのだ。

このタイミングでマリーが丁度お茶を運んでくれて雰囲気が変わった。

周囲が一息ついたのを見届けると、フローレンスが「ハインツ様、気候も良いので少し外へ行きませんか?」と誘った。「分かりましたフローレンスさん。」とハインツが答えると2人とも庭園へ出た。

ちょうど庭園のチューリップが見ごろを迎えていた。


赤、白、黄色と目に楽しい色合いが並んでいる。その間をハインツ様と2人無言で並んで歩いて行く。

そして離れの方へ歩きながら「このレンガは私が気に入ってマリーと庭師とで並べた物なんです。雨に濡れても色が気に入ってて素敵なんです。」と下を向いて話した。ハインツ様は頷きながら聞いていました。

そして2人の歩みがリンゴの木の下に差し掛かるとフローレンスは歩みを止めハインツ様に向き合うと

「ハインツ様お待たせしてしまったかもしれません。こんな私を求めて下さりありがとうございます。」と話し、「ハインツ様が好きです。」とハインツを見ながらはっきりと告げたのだ。これにはハインツも直ぐに言葉が出なかった。

ハインツはゆっくりとフローレンスに歩み寄りフローレンスを抱きしめた。手を回し抱きしめ返すフローレンス。

フローレンスの頭上から「参りました。フローレンスさん。男の私が先に言いたかったのにフローレンスさんに先越されてしまいました。」
と声が聞こえた。そして、ハインツはフローレンスを見つめると

「フローレンスさん私も好きです。愛しています。待つのは少しだけです。本当なら今すぐにでも貴女と結ばれたい。」と熱っぽくフローレンスに告げた。

「あまりお待たせしない様に頑張ります。」と小さな声で申し訳なさそうに返事をするフローレンス。

リンゴの木の下で口づけする2人を、離れからお婆ちゃまがにこにこと笑って見ている気がした。
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