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【完結】貴方と永遠にこの美しい箱庭で暮らしたい。
しおりを挟む久しぶりにフローレンスと話すと、やはり自分にはこの人しか居ないと心が決まった。
父親に自分が所属している王家の医療チームでフローレンスの健康診断を受けさせたい。
父親からサフィノワ伯爵へそれとなく伝えてくれないか?と頼んだ。
恐らく私が話せばフローレンスは断ってくる気がしたからだ。
父親は早速その事をサフィノワ伯爵へ伝え是非とも。と返事をもらって来た。
次の日私は個人的にリンダ医師長を訪ねた。
「リンダ医師長お願いがあります。実は私に結婚を視野に入れている女性が居ますが、体調を理由に返事を渋られています。ここに連れて来ますので一度見て貰えないでしょうか?」と頼むと、
「君の口からそんなセリフが聞ける日が来るとわね。良いよ私が診よう。悪い様にはしない。任せて。」と引き受けてくれた。
この国で彼女以上のドクターは居ない。
この件は思った以上に良かった。
フローレンスを診察したリンダ医師長は、私が頼んでもいなかったブライダルチェックまでやってくれてたのだ。これには気を良くし取っておきの銘酒を献上した。
数日後リンダ医師長に呼び出された。とうとう来たか。
部屋へ入ると「まあ、掛けなよ。」とコーヒーとイスを勧められた。
「まぁ、ちょっと心臓の動きは気になる所はあるけど、気温差やストレスに気を付けておけば日常過ごすには差し支え無いし、お産にも耐えられると思う。ただ妊娠した時は絶対に無理はさせない事。この間だけは庭いじりはやめさせるんだな。もちろん夫婦生活もだ。」と言った。
「良かったな。まぁ幸せにしてやりな。」とハインツの肩をポンと叩くとリンダ医師長はそう締めくくった。
しっかりとリンダ医師長にお礼を言い、部屋から出た。もう頭がその事で一杯だ。
家に帰ると早速父親にフローレンスの健康診断の結果を伝え、自分はフローレンスと結婚したい意思を伝えた。
父親は自分と同じ趣味の人間が増えると喜んでいる。母親もフローレンスさんなら。と頷いていた。
大急ぎで婚約の申込みをサフィノワ家に送り、その週末に訪問したい旨も合わせて伝えた。
約束した週末に両親とサフィノワ伯爵家へ出向くと、フローレンス本人から少しだけ待って欲しいと言ってきた。
ハインツ様をお慕いしているから、これから講師を頼みひと通りのマナーや常識を身につけたいと私の両親を前ではっきりと言った。
ここで母親が1つ提案をした。
こちらの公爵家でずっと利用しているマナー講師がいる。こちらからその講師を派遣するから利用してはどうかと。何でも私が幼い頃から利用している方らしい。この辺は私はあまり記憶がない。
その意見に対してサフィノワ伯爵夫人も大いに同意した。その方から身に付けた方がこれから一緒に暮らしやすいだろうと。
そこでマリーと呼ばれるメイドがお茶のワゴンを持って入って来た。
慣れた手付きで全員にお茶を配り終えるとさっと出ていった。
皆がお茶を飲んでいると、フローレンスが外に出ませんか?と私に話しかけて来た。
その考えに同意したので2人揃って庭を歩き出した。レンガの話を嬉しそうにする所はフローレンスらしい。
そしてフローレンスがリンゴの木の下で立ち止まり私と目を合わせると
「ハインツ様が好きです。」とはっきりと言ったのだ。これには参った。私が先に言おうと思っていたのに。
そっとフローレンスを抱き締めると私の体を抱き締め返してくれた。私は既に胸が一杯になっていた。自分も同じ気持ちである。とはっきり言った。
そしてフローレンスの目を閉じさせるとゆっくりと口づけをした。
風を受けてかさかさと葉っぱを揺らすリンゴの木が祝福している気がした。
それからあっという間に、アンリエッタの結婚式がありサフィノワ家と共に参加した。もちろんフローレンスのドレスは私が選んだ物を贈った。
式場でそのドレスを着たフローレンスは輝く様に美しく、やはり家に連れて帰りたくなった。
いやいや、いかん。でも今回はお楽しみがある。フローレンスからの提案でグラナダで描いた壁画を見に行かないかと誘いを受けたのだ。
フローレンスに教会の神父様を紹介され、実際に礼拝堂の壁画を見たときはそのスケールの大きさに感動した。これは大変だっただろう。
「この辺りは私がやったんですよ。」とフローレンスに教えられマリア様の下の方を見ると、実に彼女らしいタッチの絵が描かれていた。
微笑ましい。
その後は教会を出て、フローレンスが間借りしていたと言う子爵家へお邪魔した。
このお屋敷はサフィノワ家に良く似ている。上手く言えないが。
あぁ箱庭のせいか。
フローレンスが作っている程ではないがここも良く出来ている。
そこのご夫婦が作ったガゼボにお邪魔し、お茶を振る舞われた。苦労話やご主人の話などを聞き、長居するのもどうかと思われたので早々にお暇した。
さあ、これからだ。私はフローレンスに提案をした。こちらの地方で宿を押さえて有るから一緒に泊まらないか?と。嫌がるかとも思ったので無理な事はしたくなかった。恥ずかしそうに了解してくれた時は嬉しかった。
その夜はゆっくりと過ごした。
夕食に併設されていた食堂を利用したが、料理が安くて美味しかった。やはりここは海鮮が秀逸だった。新鮮な魚介類をたくさん食べ2人ともお腹がいっぱいになった。
部屋へ入るとフローレンスが緊張している様だったのでお茶を入れた。ゆっくりと2人でお茶を飲み明日の予定を立てた。
私が先に入浴を済ませると、フローレンスにも勧めた。そしてフローレンスが入浴を済ませた後は、フローレンスを抱きしめて耳元で囁いた。
「フローレンス、今日はしない。」
「ただ、一緒のベッドで休んで欲しい。」とだけ告げた。頷くフローレンス。
2人で同じベッドへ入ると再びフローレンスを抱きしめた。
「愛してるフローレンス。」と言うと
「私もです。ハインツ様。」と答えてくれた。
今はこれで良い。充分だ。
小さな体のフローレンスを抱き締め、この夜はぐっすりと眠った。
朝は私の方が早く目が覚めた。
フローレンスの寝顔を見ていた。こんな日が来るとは夢にも思わなかった。もそもそと動き出すフローレンスをこの腕に抱きしめた。
正直、フローレンスは気にしていたが私は子供はどちらでも良かった。
ずっと2人で生きるのも良いと思っていたぐらいだ。子供が出来れば嬉しいしもちろん大切に育てるだろう。
今はただこの腕の中の幸せに浸っていたい。
あのサフィノワ家の離れに関しては私に1つ考えがある。その事をフローレンスに告げたらびっくりするだろうな。
そして数年が経った。
サフィノワ家の離れにはハインツとフローレンスの夫婦が産まれたばかりの赤ん坊と一緒に住んでいた。
2人の結婚式までにハインツが改装を済ませたのだ。
ここが手狭になったら公爵家へ戻る。自分の両親にそう約束してあるし、週末には家族総出で泊まりに行きフローレンスは義父と庭を弄っている。
まだ誰にも話してないが、公爵家で子供が大きくなり独り立ちをしたらこの離れに戻るつもりでいる。フローレンス同様ハインツもこの箱庭が気に入っているのだ。
先日はとうとう朽ちてしまったリンゴの木を植え替えた。これにはハインツは感慨深い物があった。
10年、20年それからもお互いが白髪が生え、歯が抜け落ち、足腰が弱ってもずっと一緒に居たい。この箱庭で。
フローレンスもハインツもそう想っている。
終わり
◇◇◇◇◇◇
なぜかこの真夏に突発的に秋からクリスマスそして春の話を書きたくなり書き始めました。今でも何故書き出したのかわかりません。
読んで下さった方本当にありがとうございました。感謝、感謝です。
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