9 / 53
8、初めての商売
しおりを挟むその週末はあっという間に来た。
ジョゼフィーヌはエプロンをカバンに入れ両親に「アーカンソー教会へボランティアに行ってきます。」とひと言告げた。
「ボランティアはとても良い事よ。皆さんの邪魔にならない様に頑張って来てね。」とお母様が応援してくれた。
「はい、お役に立てる様頑張って来ますね。今日はお客様にお菓子を売るんですよ。」と簡単に内容も伝えておいた。
「ジョゼフィーヌ、独り歩きは危ないから馬車を出しなさい。」とお父様が申し出てくれた。
「ありがとうございますお父様。」とお礼を伝え屋敷からアーカンソー教会まで馬車に乗って行った。
近くまで来た時に御者の方に「すいません、ここで降ろして貰えますか?」と話し降ろして貰った。寄付をこれから募ろうとする者が馬車に乗って登場するのはどうか?と思ったのだ。
数分ほど歩いた。そうすると壁伝いにアーカンソー教会が見えて来た。歴史を感じさせる荘厳な教会だ。
そしてもうお客様が中へ入りうろうろしている。走ってアーカンソー教会の中へ入ると正面にステファン様が待っててくれた。
「おはようジョゼフィーヌ。今日はありがとう。すでに売店は作っておいた。後は宜しく頼む。」と言うと売店がある方へ歩き出した。
黙ってステファンに着いて行くと、赤と白の色彩を貴重にした可愛らしい売店が見えて来た。そこにはたくさんのお菓子も並んでいる。
私を玄関まで迎えに行く時は隣の方に頼んで店を見てて貰ったらしい。
「おはようございます。」とその隣の方にも挨拶をした。「私は今日初めてですので、慣れて無くてひょっとしてご迷惑をお掛けするかも知れません。その時は遠慮なくおっしゃって下さい。どうぞよろしくお願いします。」と礼をした。
隣の方は年配のおばちゃんで「まあまあそんなに硬くならずに。こちらこそ宜しくね。」とにこにこ笑っていた。
おばちゃんは手作りのハンカチやポーチを売っていた。なかなか商売が上手で隣で見ているだけで勉強になった。掛け声は真似して声を上げた。
最初はなかなか売れなかったが、お昼近くになると人出も増えて来て、次々と売れる様になって行った。子供さんが手に小銭を握って買いに来る子も何人か居た。
たくさん買ってくれた子にはちょっぴりサービスもした。
ステファンは品物が少なくなって来ると補充をしたりお釣りが無くなって来ると両替に行ってくれたりと割と動いていた。
1番助かったのはステファンが男前なのでそこに立っててくれるだけでお客様から寄って来てくれるのだ。これはありがたい。
お昼ご飯は交代で取りに行った。チキンを煮込んだ物とパン、そして水だった。
自然な素朴な味付けが何だか美味しく感じた。働いた後だったからかしら?
3時を過ぎる頃になるとバーゲンを始めた。隣のおばちゃんの知恵だ。
そして5時には何と完売した。これには大喜びしステファンとハイタッチして喜んだ。
そして取り置きして置いたお菓子を隣のおばちゃんに授業料として幾つか進呈させて貰った。
「ははは、気にしなくて良いのに。でも美味しそうだから有り難く頂いておくね。」とにこにこしていた。
「そうだ!私たちが出会った記念に。」とおばちゃんは売り物の手作りのペンダントをくれた。
紐にワイヤーでぐるぐる巻きにした綺麗な石を取り付けた物だ。
「えっ本当にこれ貰って良いんですか?」と思わず言うと、
「良いわよ~。私の手作りで申し訳ないけどね。」
「いやとても素敵です。大切にします。ありがとう。」とお互い手を差し出し握手を交わした。
その後はステファンと手分けして売店を片付けた。非常に疲れたがこんな疲れなら心地良い。
ステファンが「この売店は教会の持ち物なんだ。」と言うと教会の裏の物置きまで返しに行く事になり、2人で手分けして教会の裏まで運んだ。
とにかく重くて大変だったが、これをステファン1人でしたのかと思うと申し訳ない気持ちになった。
最後の1つのパーツまで物置きにしまって、2人の荷物が置いてある教会の事務所まで並んで歩いた。
歩きながら「今日完売できて良かった。ジョゼフィーヌ本当にありがとう。」と改めてお礼を言われた。
事務所で売上を精算して仕入れを抜いた金額を教会の方に渡した。
「お2人ともありがとうございました。このお金は子供達の為に大切に使わせて貰います。」と教会の方が感謝の言葉を言った。
「ジョゼフィーヌ、家まで送って行くよ。」とステファン様が言ったがステファン様のファンが恐ろしいので丁重にお断りした。
私まだ死にたく無いからね。せめて前世は越えたい。
そうしたら1人では危ないからと家から迎えの馬車が来るまで一緒に待ってくれた。
少し時間が経ったが馬車が到着したので「ステファン様今日はお疲れ様でした。ではまた学校で。」と挨拶すると屋敷へと帰った。
ああ疲れた。でも楽しかったな。商売もやってみても良いかもね。
家族に報告もそこそこに、この日は早く自室のベッドで休んだ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
378
1 / 3
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる