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1、新しい生活
しおりを挟む教会の朝は早い。
5時30分には起きて身支度を整え礼拝堂に入る。しばらく瞑想をして心を整える。
6時30分からミサが始まる。
7時10分 朝の祈り
7時30分 朝食後掃除
それからも祈りは続き21時まで途中休憩を挟みながら祈りを捧げる。
開いた時間を利用して奉仕作業も行われるし慰問も行う。
この辺りはその辺の修道院と同じだろう。しかしこの大教会は他とは違いこの国を守る【大聖女】を輩出するための教会である。
その力を存分に出すために全国から集められた聖女たちは髪の毛を切り、残った毛髪を剃ることを義務付けられていた。
なので全ての聖女候補たちは皆な「ウインパル」と言う頭部を隠すためのベールのようなものを被り生活している。
しかし、どこにでも力任せの例外はあるものでここに来た貴族の娘たちは剃髪を嫌がり、ウインパルがあるのを良いことに髪は長いままである。
「・・・・・・・・・ねぇオフィーリア、あの貴族の例外って一体なんなのかしらね?奴らここに何のために来てるのさ???」と愚痴をこぼすのはオフィーリアと同じ平民出身のマリーであった。今は一日の中で少ない自由時間である。
もちろんウインパルを外したその下は青々とした丸い頭である。
「まぁそんなこと言っても仕方がないんでしょ?もう私、諦めちゃったわ。それに彼女たちなーんにもしないからねぇ~~。実際お家でやったことが無い事がここに来て急にできるとも思えないし」
「でも私覚えてるよ。オフィーリアって私より後からここに来たでしょ?初めてオフィーリアを見たとき、なんて綺麗な子が来たんだろうって思った。髪も大して何もつけてなかったと思うんだけどサラサラして光を浴びてとても綺麗だった。それこそここの貴族の娘たちの髪よりよっぽど綺麗だったよ?」とその時を思い出したのかうっとりした表情を見せた。
「もぅマリーったら言い過ぎよ?そんなに褒めても何も出ませんよ~だ」
「いやいや、そんな事ないって」マリーはそう話すとさっとオフィーリアの頭を撫で、「だってオフィーリアって頭の形も綺麗なんですもん。私の頭って後ろが絶壁なのに~。この差は何だろう??」と自分の頭を撫でながらくすくす笑っていた。
「でも私の頭って痣があるんでしょ?ちょうど私からは見えないんだよね。ねぇ?私の痣ってどんな形なの?」
「う~ん、どんな形って言われても。難しいよ。ちょっと待ってて。いま紙に書いてあげる」そう言ってスラスラと手元にあった紙で星型のような何とも言えない形を描いてくれた。
「何よこれ?マリー、悪いけどこれでは何も分からないわ。この話はここまでにしてそろそろ休みましょうか?寝坊するとお貴族様たちがうるさいわよ?」
「そりゃそうだね。じゃあオフィーリアお休みなさい」
「お休みなさいマリー」
オフィーリアがこの教会に来て三年ほど経っていた。
今は十八歳になった。同室のマリーは十五歳である。初めて会った時から意気投合しお互い辛く苦しい時も乗り越えてきた。妹のラサーナと同じ歳だったのでその辺りも親しみが湧いたのかもしれない。
ベッドに横になりながらオフィーリアは考えていた。
(・・・・何度も家族に手紙を送っているのに一度も返って来ないって何かあったんだろうか?マリーを始め他の人たちは家族から手紙が届いていると言うのに・・・・。
どうしてなの?どうして私だけ返事が来ないの?)横で眠るマリーを心配させないようこっそり溢れた涙を拭いた。
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