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3、暴力の果てに
しおりを挟むオフィーリアの力はますます磨きがかかっていた。それもそのはず、その理由の一つが・・・・・・。
貴族の娘たちは何ひとつ自分で行おうとしなかった事だった。実際に今この時でも・・・・・・
「神官長、その時間帯はオフィーリアさんに振ってくださらない?私、これから婚約者とお芝居を見に行きますのよ?この意味はお分かりですよね??」
「ジョアンナ、それは仕方ないことです。分かりました。この仕事はオフィーリアに任せましょう」
教会に治療に来た人たちも、ジョアンナたち貴族の女性が自分たちに都合の良い貴族の男だけしか治療しなかったので、女性や年寄りを始めとする国民からは不満が出ていた。
その不満の矛先を教会に向かうのを避けるためにオフィーリアやマリーたち平民出身の聖女に患者を押し付けたのだ。
もともと神聖力は人間の自己防衛本能から発揮される。
そう、力を使い果たせば果たすほど、それを上回る神聖力が体内で作られるようになる。
オフィーリアが抜群に神聖力が高いのはもちろんのこと、マリーも成長し続けてとうとう教会の中で3本の指に入るまでの神聖力を得ていた。
が、一方でジョアンナたち貴族の娘は修行もろくすっぽせず、治療行為もほとんどしなかったので、最初の力からほとんど神聖力を伸ばせていなかった。
その貴族の若い男たちに施す治療も神聖力不足のため治りが遅い。教会の神官長はそのあと始末さえ、オフィーリアたちにさせたのだった。
その結果『歴代最強』のレッテルが貼られるほどオフィーリアの力は増大した。もちろん親友のマリーもだ。
そんなある日「オフィーリア、後で私の部屋に来なさい。話があります」と夕食中のオフィーリアに神官長が声をかけた。
「分かりました。後ほどお伺いします」と返事を返し夕食後そそくさと神官長の部屋へ行った。
「失礼します」とオフィーリアが神官長の部屋に入るとなぜかジョアンナとその父親であるオリベルト侯爵が揃ってソファに腰掛けていた。
「よく来ましたねオフィーリア、折り行って話が有ります」と神官長がオフィーリアを見て話し出した。その表情はいつにも増して何を考えているのか掴ませない。
なぜかオフィーリアはこの話は聞いてはいけない!と言う気持ちになったが自分の身分では会話を断ることも出来ずそのまま立ちすくんでいた。
「オフィーリア、貴女は今日限りこの教会を辞めて頂きます」
「えっ、どうしてですか??私、何かしましたか?」
「いえ、貴女の日常は問題ありません。この度こちらのオリベルト侯爵家のご息女のジョアンナ様の影となる事が決まったからです。光栄に思いなさい」
「かっ、影って何ですか?一体何をするのでしょうか?」
「なに、簡単な事です。ジョアンナ様が神聖力を使う時は影から手助けをするのです。ジョアンナ様はこの先この国の皇后に立たれるお方。その方のお力になるのです」
「すいません、話がよく分かりません。私は大聖女になるためにここに来たのですが?」
そうオフィーリアが言った途端不機嫌な男の声が部屋中に響いた。
「さっきから話を聞いてれば煩い小娘だ。オフィーリアとか言ったな?お前はもともとうちの家がお前の両親から買い取ったんだ。うちの娘は幼い頃から王家の教育を受けてきてるんだ。聖女の修行まではとても時間が足りない」
・・・・・・家族が私をこの男に売ったなんて。そんなの嘘、嘘よ。
オフィーリアは血の気が引き、目の前が真っ暗になっていくのが分かった。身体中の力が抜けて立っているのがやっとだ。
「そこでだ。お前のような平民で神聖力が高い娘を買取り、影としてうちの娘につける事でよりこの国のためになるのだ。分かったか!」
・・・・・・嫌、そんなの嫌。私はずっと日陰で暮らしていかないと行けないの??
「嫌です。そんなの嘘です。今でも家族が待ってくれています」泣きたくなんてないのに涙が止まらない。
「ふん、そんな事はあるまい。実際に家族から便りの一通でも来たのか?来るまい?お前を売った金でお前の家族は隣の国へ引っ越し、わしの伝手でお前の父親は辺境警備隊の隊長に着いた」
「そっ、そんな・・・・・・」
「分かったか!分かったならとっとと荷物をまとめて来い」
「ーーーーそれでも嫌です。お断りします。私は大聖女になりたい!!」
「オフィーリア、もうここには貴女の居場所は無いのですよ?観念なさい」追い討ちをかけるように神官長の無慈悲な言葉が響く。
「嫌です!!」泣き叫びながら神官長に言い返した時、オリベルト侯爵が椅子から立ち上がりオフィーリアに近寄ると
「聞き分けのない小娘だな!!」を手を振り上げた。
「あっ!!」パァンと乾いた音が部屋に響き渡った。
オフィーリアは頬に激しい痛みを感じたあと、頭の中がグラグラと沸騰したように熱くなった。
「ひっ、ひい」と近くで女性の声がする。あれはジョアンナの声かしら?
オフィーリアは自分の意識がゆっくりと遠ざかっていくのを頭のどこかで感じていた。
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