憧れの小説作家は取引先のマネージャーだった

七転び八起き

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第3話 衝撃の再会

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 私は着替えて、ホテルを出て、自宅に一旦帰った。
 そして会社に行く準備をした。

 会社に着いて、仕事を始めて暫くしたら、上司に呼び出された。

「君に紹介したい人がいる」
「え、誰ですか?」

 そのまま上司に会議室に連れて行かれた。

「うちの取引先に新しくマネージャーに就任された人がいて、挨拶に来たんだよ」

 会議室の中に入ったら、知らない人が何人か座っていた。

「挨拶して」

 上司に促された。

「はい…!」

 私は気合いを入れた。

「神谷美鈴と申します。宜しくお願いします!」

 頭を下げた。

 その時、会議室のドアが開いて、また一人誰かが入ってきた。

「長島商事の橘です!遅くなりました、申し訳ありません。」

 あれ…この声…
 その人の顔を見たら…
 "あの"人だった。
 つい数時間前まで一緒だったはずの…。
 その人も私の視線に気づいてこちらを見た。
 彼は目を見開いた。
 お互いびっくりしすぎて言葉が出なかった。

「よ、宜しくお願いします…」

 お互い、よそよそしく挨拶をした。

「この人が新しくマネージャーに就任された橘さん」

 上司が私に横から声をかけた。
 取引先のマネージャー…!?
 まさか、そんな人だったとは…!
 どうしよう!!

 私は会議中その人の顔を全く見れないまま、パソコンで淡々と議事録を作っていた。

 ──

 会議が終わった後、自分のオフィスに戻ろうとしたら

「神谷さん」

 その声は…
 振り返ったら、
 夜に出会った、"取引先の橘さん"が立っていた。

「まさかこういう事になるとは思ってなくてかなり驚いたけど…宜しく」

 橘さんから名刺を渡された。
 本当に取引先の人なんだ…。

 私はなんて事をしてしまったんだろう!
 穴があったら入りたい…。

「あの、ご迷惑をおかけしてすみませんでした」
「迷惑だとか思ってない。あれもその場の勢いとかでもない」
「え?」

 段々とその時の事を思い出してきて、居ても立っても居られなくなった。

「電話番号見たよね?時間ある時に連絡が欲しい」
「はい、わかりした!」

 ふと、少し微笑んだ後、橘さんは行ってしまった。
 まさか、相手がそういう方だとは知らず、全てを曝け出してしまった後からの再会…からの、仕事…

 何でこんな事に…
 私の頭は大混乱だった。

 フラフラしながらデスクに戻ったら、後輩の女の子が嬉しそうに来た。

「取引先の橘さんって人、凄いカッコよくないですか!?前うちの会社に来た時にびっくりしちゃいました!テンション上がります~!」

 え、今日が初めてじゃないの??
 私が休んでた日に来たのかな。
 もしかして彼氏が熱出して倒れた時?
 何故か看病して欲しいからと会社を休まされたんだよねあの日…

「そうだね~。素敵な人だね~優しいし。」
「え!先輩橘さんと話した事あるんですか?」

 あ、ヤバい!

「さっき初めて会って、挨拶したの!」
「私も話したかったです~!!」

 後輩は不満そうに席に戻った。
 私はその後、余計な事を考えないように仕事に集中していた。

 しかし…ふと思い出す、夜の彼の視線が頭をよぎると恥ずかしくてなかなか難しかった。

 ──

 仕事が終わって、今日は真っ直ぐに家に帰ろうとした。

 彼氏からの通知は相変わらず凄い量。
 早く決着をつけよう。
 もう私は大丈夫。未練はない。

 家の近くに着いたら、人影が見えた。

 ──彼氏の陽介だった…

「美鈴!なんで無視するんだよ!!」
「そんな大声で騒がないで!」

 私は仕方なく家に陽介を入れた。

「もう別れよう。私達」

 私はすぐに答えを言った。

「は?なんで?」
「結婚するつもりもない人と付き合う程余裕がなくて…」
「俺の事好きじゃなくなったの?」
「それは…よくわからない」

 情で付き合ってる部分もあった。
 でも、ちゃんと未来を考えてくれてると信じてた。

「俺は美鈴のこと好きだよ。別れたくない。」

 どうしよう…
 でも、橘さんと重なったあの瞬間に、私の心はもう戻れなくなった。

「ごめん、もう無理なの。」

 忘れさせられてしまったんだ。

 その時陽介にその場に押し倒された。
 陽介は私の服を脱がしていく。

「やめて!」

 私は必死にバッグからスマホを取り出した。

「これ以上したら警察に電話する」

 私は110を入力した画面を見せた。

「…もうダメなんだな俺達」

 陽介は諦めて玄関の方に行った。

「幸せにできなくてごめん」

 陽介は振り返らなかった。
 本当の気持ちかはわからないけど、これで私達は終われたかな…。

 私はその後、気持ちが少し落ち着いてから、電話をかけた。
 暫くして通話になった。

『はい』
「あの…神谷です。」
『待ってた。電話』

 橘さんの声に安心した。

「あの…家の件なんですけど…私引っ越そうと思います」
『うん。わかった。次会った時に話そう』

 次…
 っていつだろう。

「はい、ありがとうございます…!」

 取引先のマネージャー様…!

『…プライベートの時はあまり仕事の事気にしなくていいから』
「はい、わかりました」

 電話を切った後、嬉しいと思った自分に、少し戸惑った。
 その後メッセージがきた。

『早くまた会いたい』

「会いたい…?」

 それは、どういう事??

 不思議な人──
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