26 / 33
第26話 試練
しおりを挟む
家に帰った後、スッキリしたくて直ぐにお風呂に入って湯船に浸かった。
好きな入浴剤を入れてリラックスしようとした。
三浦さんとのキス、打ち明けられた想い。
事故だったけど、感触だけは残っている。
その時、風呂のドアが突然開いた。
橘さんが立っている──
「帰るのが遅い……」
「用事が長引いたんです。それよりお風呂にまで入ってくるのはどうかと思います」
「用事って?」
「……プライバシーの侵害です」
その後、お風呂のドアが閉まった。
言い方がそっけなかったかな……。
今はちょっと心が複雑すぎて橘さんに配慮できずにいる。
そしたらまた風呂のドアが開いた。
橘さんは服を着てなくて、そのまま湯船に入ってきた。
「何してるんですか!」
「白状させたくなった」
橘さんの行動は唐突だけど……肌が触れると安心する。
「何があった」
あまり言いたくはなかった。
「怒らないで聞いてくれるなら……」
「わかった」
「今日三浦さんに小説を返しに行ったんです」
「……会いに行ったのかよ」
橘さんの苛立ちと戸惑いの気持ちが伝わる。
「すみません。ちゃんとそこで終わらそうとしてたんです。でも、うまくいきませんでした」
「どういう事?」
「あの作品には私への想いがこもってるって言われました」
「……で?」
「それを告げたら彼は帰ってしまいました。翠川さんより有名になれるように頑張るって」
橘さんは暫く何も言わなかった。
「すみません……正直に言い過ぎました。嫌な思いさせてすみません」
「最悪な気分だ。色々言いたいが、美鈴の気持ちは?」
「私は橘さんと歩んでいきたいです。……あと、プラトニックを捨てる決心がやっとつきました」
「……そうか」
いい加減のぼせそうになって上がろうと思ったら、橘さんにキスをされた。
嫉妬と支配と欲望が混ざったようなものだった。
「じゃあ、新しい小説書かないとな」
橘さんの目が鋭い。
「……はい」
その後、お風呂から出て、二人とも着替えた。
「あの、橘さんお願いがあるんです……」
私はさらなる一大決心をしていた。
「何?」
「嫌じゃなければ……私に協力して下さい!」
「協力?」
私は勇気を振り絞った。
「私に物語の種をください!」
「種……?設定の事?」
「はい。プロの作家さんにお願いする事じゃないんですけど……。私と一緒に書いて欲しいんです。二人で物語を作りたいんです!」
それが私が一番書きたいと思える小説の書き方だった。
「種をやるのはいいが……ちゃんと花を咲かせて実を結べるか?」
私を試すように怪しげに笑む橘さん。
「頑張ります」
「じゃあ早速種をやる」
橘さんが考えている。
「会社で働く女が、バーで出会った男とホテルで一夜を過ごす。実はそれが憧れてた小説家だった」
「……それって、私と橘さんの事ですよね?」
「そう。美鈴の書く結末が知りた。」
「すみません、それは私には全く想像できないので、別のでお願いしたいです」
「ついさっきお願いしたのはどこの誰だ」
流石にその設定に結末は書きたくない。
というか、意地悪だ……。
でも……。
「わかりました。書きます。でも、『私』と『橘さん』ではないので、どうなっても怒らないでください」
「……やっぱり不安になってきたから設定を変える」
橘さんはまた考えていた。
「ある女は結婚したいと思っていた男がいる。結婚を夢見て付き合っていた。でもそれは偽りの関係だった」
「偽りの関係!?」
気になる。
「その男は既婚者だった」
「最低な男じゃないですか!!」
そんな物語……復讐しかない。
「女は憎む。でも、一緒にいると愛していた気持ちが込み上げる。憎んでるのに、愛しているから離れられない」
裏切られた女と、裏切った男の、物語……?
「美鈴、俺はお前を裏切った男だ。お前に『いつか結婚しよう』と言っていた。でも俺には妻も子供もいる」
橘さんが真横に来た。
「美鈴ならどうする?」
「許しません……」
「じゃあどうする?俺と別れる?」
橘さんが私の目をじっと見つめた。
『俺は君を一番愛してる。信じて』
橘さんはズルい……。
そんな目で見つめられたら、まともな判断ができない。
もし、橘さんが本当にそうだったら……私は別れられるの?
「俺を憎んで、その男だと思って。突き放してみて」
橘さんを突き放す……?
そんな事できるわけがない。
だって、私を満たしてくれるのは世界でこの人だけだから。
私は泣いてしまった。
「今回は無理かもしれません……」
「俺は種をあげただけだから、書くかは美鈴次第だよ」
自信がない。
でも自分から頼んだのに投げ出すのは嫌だった。
今回もらった種を、私は咲かせる事ができるのか……。
◇ ◇ ◇
橘さんが寝たあと、私は少し書いてみた。
とにかくやってみるしかない。
私なりに。
好きな入浴剤を入れてリラックスしようとした。
三浦さんとのキス、打ち明けられた想い。
事故だったけど、感触だけは残っている。
その時、風呂のドアが突然開いた。
橘さんが立っている──
「帰るのが遅い……」
「用事が長引いたんです。それよりお風呂にまで入ってくるのはどうかと思います」
「用事って?」
「……プライバシーの侵害です」
その後、お風呂のドアが閉まった。
言い方がそっけなかったかな……。
今はちょっと心が複雑すぎて橘さんに配慮できずにいる。
そしたらまた風呂のドアが開いた。
橘さんは服を着てなくて、そのまま湯船に入ってきた。
「何してるんですか!」
「白状させたくなった」
橘さんの行動は唐突だけど……肌が触れると安心する。
「何があった」
あまり言いたくはなかった。
「怒らないで聞いてくれるなら……」
「わかった」
「今日三浦さんに小説を返しに行ったんです」
「……会いに行ったのかよ」
橘さんの苛立ちと戸惑いの気持ちが伝わる。
「すみません。ちゃんとそこで終わらそうとしてたんです。でも、うまくいきませんでした」
「どういう事?」
「あの作品には私への想いがこもってるって言われました」
「……で?」
「それを告げたら彼は帰ってしまいました。翠川さんより有名になれるように頑張るって」
橘さんは暫く何も言わなかった。
「すみません……正直に言い過ぎました。嫌な思いさせてすみません」
「最悪な気分だ。色々言いたいが、美鈴の気持ちは?」
「私は橘さんと歩んでいきたいです。……あと、プラトニックを捨てる決心がやっとつきました」
「……そうか」
いい加減のぼせそうになって上がろうと思ったら、橘さんにキスをされた。
嫉妬と支配と欲望が混ざったようなものだった。
「じゃあ、新しい小説書かないとな」
橘さんの目が鋭い。
「……はい」
その後、お風呂から出て、二人とも着替えた。
「あの、橘さんお願いがあるんです……」
私はさらなる一大決心をしていた。
「何?」
「嫌じゃなければ……私に協力して下さい!」
「協力?」
私は勇気を振り絞った。
「私に物語の種をください!」
「種……?設定の事?」
「はい。プロの作家さんにお願いする事じゃないんですけど……。私と一緒に書いて欲しいんです。二人で物語を作りたいんです!」
それが私が一番書きたいと思える小説の書き方だった。
「種をやるのはいいが……ちゃんと花を咲かせて実を結べるか?」
私を試すように怪しげに笑む橘さん。
「頑張ります」
「じゃあ早速種をやる」
橘さんが考えている。
「会社で働く女が、バーで出会った男とホテルで一夜を過ごす。実はそれが憧れてた小説家だった」
「……それって、私と橘さんの事ですよね?」
「そう。美鈴の書く結末が知りた。」
「すみません、それは私には全く想像できないので、別のでお願いしたいです」
「ついさっきお願いしたのはどこの誰だ」
流石にその設定に結末は書きたくない。
というか、意地悪だ……。
でも……。
「わかりました。書きます。でも、『私』と『橘さん』ではないので、どうなっても怒らないでください」
「……やっぱり不安になってきたから設定を変える」
橘さんはまた考えていた。
「ある女は結婚したいと思っていた男がいる。結婚を夢見て付き合っていた。でもそれは偽りの関係だった」
「偽りの関係!?」
気になる。
「その男は既婚者だった」
「最低な男じゃないですか!!」
そんな物語……復讐しかない。
「女は憎む。でも、一緒にいると愛していた気持ちが込み上げる。憎んでるのに、愛しているから離れられない」
裏切られた女と、裏切った男の、物語……?
「美鈴、俺はお前を裏切った男だ。お前に『いつか結婚しよう』と言っていた。でも俺には妻も子供もいる」
橘さんが真横に来た。
「美鈴ならどうする?」
「許しません……」
「じゃあどうする?俺と別れる?」
橘さんが私の目をじっと見つめた。
『俺は君を一番愛してる。信じて』
橘さんはズルい……。
そんな目で見つめられたら、まともな判断ができない。
もし、橘さんが本当にそうだったら……私は別れられるの?
「俺を憎んで、その男だと思って。突き放してみて」
橘さんを突き放す……?
そんな事できるわけがない。
だって、私を満たしてくれるのは世界でこの人だけだから。
私は泣いてしまった。
「今回は無理かもしれません……」
「俺は種をあげただけだから、書くかは美鈴次第だよ」
自信がない。
でも自分から頼んだのに投げ出すのは嫌だった。
今回もらった種を、私は咲かせる事ができるのか……。
◇ ◇ ◇
橘さんが寝たあと、私は少し書いてみた。
とにかくやってみるしかない。
私なりに。
0
あなたにおすすめの小説
ワケあり上司とヒミツの共有
咲良緋芽
恋愛
部署も違う、顔見知りでもない。
でも、社内で有名な津田部長。
ハンサム&クールな出で立ちが、
女子社員のハートを鷲掴みにしている。
接点なんて、何もない。
社内の廊下で、2、3度すれ違った位。
だから、
私が津田部長のヒミツを知ったのは、
偶然。
社内の誰も気が付いていないヒミツを
私は知ってしまった。
「どどど、どうしよう……!!」
私、美園江奈は、このヒミツを守れるの…?
恋は襟を正してから-鬼上司の不器用な愛-
プリオネ
恋愛
せっかくホワイト企業に転職したのに、配属先は「漆黒」と噂される第一営業所だった芦尾梨子。待ち受けていたのは、大勢の前で怒鳴りつけてくるような鬼上司、獄谷衿。だが梨子には、前職で培ったパワハラ耐性と、ある"処世術"があった。2つの武器を手に、梨子は彼の厳しい指導にもたくましく食らいついていった。
ある日、梨子は獄谷に叱責された直後に彼自身のミスに気付く。助け舟を出すも、まさかのダブルミスで恥の上塗りをさせてしまう。責任を感じる梨子だったが、獄谷は意外な反応を見せた。そしてそれを境に、彼の態度が柔らかくなり始める。その不器用すぎるアプローチに、梨子も次第に惹かれていくのであった──。
恋心を隠してるけど全部滲み出ちゃってる系鬼上司と、全部気付いてるけど部下として接する新入社員が織りなす、じれじれオフィスラブ。
俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜
ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。
そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、
理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。
しかも理樹には婚約者がいたのである。
全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。
二人は結婚出来るのであろうか。
恋とキスは背伸びして
葉月 まい
恋愛
結城 美怜(24歳)…身長160㎝、平社員
成瀬 隼斗(33歳)…身長182㎝、本部長
年齢差 9歳
身長差 22㎝
役職 雲泥の差
この違い、恋愛には大きな壁?
そして同期の卓の存在
異性の親友は成立する?
数々の壁を乗り越え、結ばれるまでの
二人の恋の物語
祖父の遺言で崖っぷちの私。クールな年下後輩と契約結婚したら、実は彼の方が私にぞっこんでした。
久遠翠
恋愛
広告代理店で働く仕事一筋のアラサー女子・葉月美桜。彼女の前に突きつけられたのは「三十歳までに結婚しなければ、実家の老舗和菓子屋は人手に渡る」という祖父の遺言だった。崖っぷちの美桜に手を差し伸べたのは、社内で『氷の王子』と噂されるクールな年下後輩・一条蓮。「僕と契約結婚しませんか?」――利害一致で始まった、期限付きの偽りの夫婦生活。しかし、同居するうちに見えてきた彼の意外な素顔に、美桜の心は揺れ動く。料理上手で、猫が好きで、夜中に一人でピアノを弾く彼。契約違反だと分かっているのに、この温かい日だまりのような時間に、いつしか本気で惹かれていた。これは、氷のように冷たい契約から始まる、不器用で甘い、とろけるような恋の物語。
地味系秘書と氷の副社長は今日も仲良くバトルしてます!
楓乃めーぷる
恋愛
見た目はどこにでもいそうな地味系女子の小鳥風音(おどりかざね)が、ようやく就職した会社で何故か社長秘書に大抜擢されてしまう。
秘書検定も持っていない自分がどうしてそんなことに……。
呼び出された社長室では、明るいイケメンチャラ男な御曹司の社長と、ニコリともしない銀縁眼鏡の副社長が風音を待ち構えていた――
地味系女子が色々巻き込まれながら、イケメンと美形とぶつかって仲良くなっていく王道ラブコメなお話になっていく予定です。
ちょっとだけ三角関係もあるかも?
・表紙はかんたん表紙メーカーで作成しています。
・毎日11時に投稿予定です。
・勢いで書いてます。誤字脱字等チェックしてますが、不備があるかもしれません。
・公開済のお話も加筆訂正する場合があります。
親愛なる後輩くん
さとう涼
恋愛
「神崎部長は、僕と結城さんがつき合っているのを知りながら彼女に手を出したんですよ」
雨宮一紗(33歳)。離婚して3年。
同じ会社に勤める元夫・神崎敦朗と復縁したくて、ある日食事に誘ったら、神崎から恋人がいると知らされる。相手は20代の部下・結城史奈だという。
さらに神崎のもうひとりの部下である蓮見閑《しずか》から、彼女(結城)を神崎に略奪されたと聞かされてしまい、大きなショックを受ける……。
あなたと恋に落ちるまで~御曹司は、一途に私に恋をする~
けいこ
恋愛
カフェも併設されたオシャレなパン屋で働く私は、大好きなパンに囲まれて幸せな日々を送っていた。
ただ…
トラウマを抱え、恋愛が上手く出来ない私。
誰かを好きになりたいのに傷つくのが怖いって言う恋愛こじらせ女子。
いや…もう女子と言える年齢ではない。
キラキラドキドキした恋愛はしたい…
結婚もしなきゃいけないと…思ってはいる25歳。
最近、パン屋に来てくれるようになったスーツ姿のイケメン過ぎる男性。
彼が百貨店などを幅広く経営する榊グループの社長で御曹司とわかり、店のみんなが騒ぎ出して…
そんな人が、
『「杏」のパンを、時々会社に配達してもらいたい』
だなんて、私を指名してくれて…
そして…
スーパーで買ったイチゴを落としてしまったバカな私を、必死に走って追いかけ、届けてくれた20歳の可愛い系イケメン君には、
『今度、一緒にテーマパーク行って下さい。この…メロンパンと塩パンとカフェオレのお礼したいから』
って、誘われた…
いったい私に何が起こっているの?
パン屋に出入りする同年齢の爽やかイケメン、パン屋の明るい美人店長、バイトの可愛い女の子…
たくさんの個性溢れる人々に関わる中で、私の平凡過ぎる毎日が変わっていくのがわかる。
誰かを思いっきり好きになって…
甘えてみても…いいですか?
※after story別作品で公開中(同じタイトル)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる