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第四章 従弟
第50話
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朝日がやけに眩しい朝だった。
でも私の心はあの日の夜のままだった。
あの夜、先生は振り返らずに行ってしまった。
私は先生を傷つけてしまった……。
ちゃんと言う事を聞かなかった。
とにかく波風立てない事に必死だった。
ただ、二人で穏やかに過ごしたかった。
でもそれがよくなかった。
私は上手に嘘をつけない。
高校生の男の子にいいように利用されて、悔しい。
せっかく見つけたいいバイトも辞めざるを得なかった。
先生になんて連絡をしよう。
『ちゃんと言わなくてすみませんでした』
でもそれってなんか変。
私は先生のなんなんだろう。
私は確かにドジで鈍感で、先生が心配するのもわかるけど、もう子供じゃない。
私は自分でこの件を収めたかった。
ずっと先生の言う事を聞いて、先生の機嫌を取っていなきゃいけないの?
よくわからなくなってきた。
合格発表の日もだんだん近づいてきてる。
それに何とかして通りたい。
とりあえず今日は大学に行って、卒論を進めよう。
服を着替えて、髪を整えて少しメイクをして、先生からもらった首輪。
今日はつける気にならなかった。
大学に行って、資料を整理したり、友達と少し話したり、色々していたらあっという間に時間が過ぎた。
陽が傾いてきた。
うちに帰ろう。
今日は寄り道はしない。
電車に乗ってスマホを見た。
先生からは何も連絡がない。
何を言うのが正しいのかわからない。
駅に着いて、ただ暗くなる道を歩いていた。
先生は仕事が忙しい中でも、迎えにきてくれてた。
それを思い出すと、胸が苦しくなった。
その時、後ろから自転車のブレーキ音が聞こえた。
「白乃さん!」
振り返ったらそこには──
遼君がいた。
私は背を向けて足早に歩いた。
「待って!!」
遼君は自転車をその場に置いて走ってきた。
私に直ぐに追いついた。
「この前はごめん!バイトも突然辞めたって聞いて、何度も謝ろうとしたんだけど……」
私は遼君の番号を着信拒否していた。
「よく、私に会おうと思えるね」
心がドロドロになっていく。
「遼君の勝ちじゃない?君があんなことしたせいで、先生ともう連絡も取れない」
遼君は少し驚いていた。
私だってこんな事を自分が言う事に違和感しかない。
「よかったね。さようなら」
もうどうでもいい。
「待って」
遼君が目の前に立ちはだかった。
「俺は確かに夏雄に勝ちたかった。でも、全然嬉しくなかった」
は?
こんな子の気まぐれに振り回されて心底自分が嫌になった。
「あなたのプライドに私と先生を利用しないで」
「確かに利用してた。でも、今白乃さんが俺を完全に突き放した時、すごく辛かった」
弄べる相手が欲しかっただけだ。
本当に自分勝手。
「俺、もうこんな事しない。絶対もうしない。白乃さんを傷つけない。だから……」
遼君はとても寂しそうな目をして、私の頬に触れた。
「俺から離れないで」
自分で困らせておいて何言ってるんだよって思うのに、なぜか動けなかった。
その瞳に嘘を感じられなかったからかもしれない。
でも私の心はあの日の夜のままだった。
あの夜、先生は振り返らずに行ってしまった。
私は先生を傷つけてしまった……。
ちゃんと言う事を聞かなかった。
とにかく波風立てない事に必死だった。
ただ、二人で穏やかに過ごしたかった。
でもそれがよくなかった。
私は上手に嘘をつけない。
高校生の男の子にいいように利用されて、悔しい。
せっかく見つけたいいバイトも辞めざるを得なかった。
先生になんて連絡をしよう。
『ちゃんと言わなくてすみませんでした』
でもそれってなんか変。
私は先生のなんなんだろう。
私は確かにドジで鈍感で、先生が心配するのもわかるけど、もう子供じゃない。
私は自分でこの件を収めたかった。
ずっと先生の言う事を聞いて、先生の機嫌を取っていなきゃいけないの?
よくわからなくなってきた。
合格発表の日もだんだん近づいてきてる。
それに何とかして通りたい。
とりあえず今日は大学に行って、卒論を進めよう。
服を着替えて、髪を整えて少しメイクをして、先生からもらった首輪。
今日はつける気にならなかった。
大学に行って、資料を整理したり、友達と少し話したり、色々していたらあっという間に時間が過ぎた。
陽が傾いてきた。
うちに帰ろう。
今日は寄り道はしない。
電車に乗ってスマホを見た。
先生からは何も連絡がない。
何を言うのが正しいのかわからない。
駅に着いて、ただ暗くなる道を歩いていた。
先生は仕事が忙しい中でも、迎えにきてくれてた。
それを思い出すと、胸が苦しくなった。
その時、後ろから自転車のブレーキ音が聞こえた。
「白乃さん!」
振り返ったらそこには──
遼君がいた。
私は背を向けて足早に歩いた。
「待って!!」
遼君は自転車をその場に置いて走ってきた。
私に直ぐに追いついた。
「この前はごめん!バイトも突然辞めたって聞いて、何度も謝ろうとしたんだけど……」
私は遼君の番号を着信拒否していた。
「よく、私に会おうと思えるね」
心がドロドロになっていく。
「遼君の勝ちじゃない?君があんなことしたせいで、先生ともう連絡も取れない」
遼君は少し驚いていた。
私だってこんな事を自分が言う事に違和感しかない。
「よかったね。さようなら」
もうどうでもいい。
「待って」
遼君が目の前に立ちはだかった。
「俺は確かに夏雄に勝ちたかった。でも、全然嬉しくなかった」
は?
こんな子の気まぐれに振り回されて心底自分が嫌になった。
「あなたのプライドに私と先生を利用しないで」
「確かに利用してた。でも、今白乃さんが俺を完全に突き放した時、すごく辛かった」
弄べる相手が欲しかっただけだ。
本当に自分勝手。
「俺、もうこんな事しない。絶対もうしない。白乃さんを傷つけない。だから……」
遼君はとても寂しそうな目をして、私の頬に触れた。
「俺から離れないで」
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その瞳に嘘を感じられなかったからかもしれない。
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