ダイヤの首輪─先生の歪んだ愛に囚われて─

七転び八起き

文字の大きさ
62 / 83
第六章

第62話

しおりを挟む
 とうとう遼君は引っ越して、本格的に一人暮らしいを始めた。

 先生は遼君の事を私のおかげだと言ったけど、先生が間に入っていなかったら、彼は家にいたまま、また危険な事をしていたと思う。
 嫌がりつつも、助けていた。

 遼君のせいで、もう先生との関係がダメになると思っていたけど、私達はまた同じ場所に立っている。

 教員採用試験の合格発表はもうすぐだ。

 本当の意味で同じ場所に立てるのかわからないけど、どんな結果でも私は私の道を進みたいと思った。

 今日は大学で卒論を進めて、バイトをしたついでに本屋にも行って、読んでみたかった小説を買って帰ろうとした。
 そしたら先生からメッセージがきた。

『俺の家の近くの駅で待ってて』

 今日は先生の家に行けるのかな?
 遼君が出ていってしまったから、先生寂しいのかな?
 そんな訳ないか。

 先生の家の最寄駅に着いて、駅のロータリーの近くで買った小説を少し読んでいた。

「すみません、ちょっと聞きたい事があるんですが」

 突然話しかけられて振り返ったら、中年の女性が立っていた。
 スラッとして綺麗で、どこか見た事がある面影。

「はい、何でしょうか?」

 その人は小さな紙を出して見せてきた。

「この住所なんだけど、どの辺かわからなくて……。大体の位置とかご存知かしら」

 綺麗な文字で書かれた住所を見た時、思考が止まった。

 その時、先生の車がロータリーに見えた。
 先生が私に気がついて近くに来た時、先生の表情が固まった。

「夏雄!凄い偶然!」

 その女性と、先生はどことなく似ていて、なんとなくそれを察した。
 私はその時、とにかく逃げたかった。

 私が原因で、先生と志穂さんは婚約破棄になったわけで、バレたらヤバい!

「じゃあ私はこれで……」

 私はその場を立ち去ろうとした。
 先生にさりげなく、アイサインをした。

 先生は複雑な表情をして、その女性と話していた。

 その後、自分の家に向かおうとしたら、先生からまたメッセージが来た。

『後で迎えに行く』

 あの人が帰ってから?
 複雑すぎる!

 私は何も返事を返せないでいた。

 * * *

 遼も居なくなったから、白乃と家でのんびりしたかった。
 話したい事もあった。

 だから今日は、と思っていた。
 なのに、何故このタイミングで……。

 駅のロータリーに居たのは、白乃と母さんだった。

 何でここにいる?
 どこで住所を……。

 まあいい。
 ただ、今このタイミングで会いたくなかった。
 白乃も察して帰ろうとしている。

 あのまま三年何も連絡しなかったのに、何を今更?
 また見合いか?
 もうほぼ縁は切ったつもりだった。

 何を考えている?

「母さん、どうしたの?」
「お父さんがあの時カンカンに怒って、夏雄とちゃんと話せないままだったから……。何年も連絡こなくて、心配してたのよ」

 あの時、親父がキレ散らかして俺は連絡を絶った。
 母さんは戸惑っていて、何も言えないでいた。
 親父の前では言えなかったけど、ずっと心配してたのか。

「とりあえず、乗って」

 母さんを乗せて、俺の家に連れて行く事にした。
 親とも向き合わないといけないと思っていた。
 それが思ったより早まっただけだ。

 家に着いて、母さんを部屋に入れた。

「わー結構広いのね」

 母さんは色々部屋の中のものを見ていた。
 高校の生徒との写真もじっと見ていた。

 その時──

「あれ、この子、さっき駅に居た子に似ている」

 油断していた……。
 ちゃんと話す前にこんな形で。
 想定外だ。ここに来る事も。

「もしかして、あの子に会おうとしていたの?」

 なんて言えばいい。
 いや、もう隠す必要もないだろ。
 もう話すつもりでいた。

「そうだよ」

 どんな反応するのか全くわからなかった。

「あの子が……夏雄が、色んな代償を払って守りたかった子なのね」

 母さんの表情は、思ったより穏やかだった。

「あれからずっと一緒なの?」
「いや……あのあと、三年連絡取らなかった」

 母さんは頷きながら目線を逸らした。

「あら……?」

 母さんは、俺が白乃から借りたネックレスを見つけてしまった。
 しまっておけば良かった……。
 でもあいつ以外来ることなんて考えていなかった。

「あの子の忘れ物?」

 これは詮索されてるのか?

「だったら何?」

 母さんの表情は特に変わらなかった。

「あの子と話してみたくなったの」

 それは何を意図してるかわからなかった。
 ただ、もうあいつの事を隠すのはやめたかった。
 もっと堂々としたい。
 俺が貫いた想いを、示したかった。

 その後、母さんを実家の近くまで送って、それから白乃に連絡した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

優しい雨が降る夜は

葉月 まい
恋愛
浮世離れした地味子 × 外資系ITコンサルのエリートイケメン 無自覚にモテる地味子に 余裕もなく翻弄されるイケメン 二人の恋は一筋縄ではいかなくて…… 雨降る夜に心に届いた 優しい恋の物語 ⟡☾·̩͙⋆☔┈┈┈ 登場人物 ┈┈┈ ☔⋆·̩͙☽⟡ 風間 美月(24歳)……コミュニティセンター勤務・地味でお堅い性格 雨宮 優吾(28歳)……外資系ITコンサルティング会社勤務のエリートイケメン

【続編】ダイヤの指輪─先生と私の歩む未来─

七転び八起き
恋愛
◇こちらの作品は以下の作品の続編です。 「ダイヤの首輪─先生の歪んだ愛に囚われて─」https://www.alphapolis.co.jp/novel/306629704/557024090 ◇あらすじ 主人公の水島白乃(みずしましの)と、婚約者の夏雄先生のその後の物語です。 まだちゃんとした夫婦になってない二人はどうなるのか。 そして、先生の従弟の遼が出会った不思議な女の子、篠山あやめ。彼女は遼にどう影響を与えるのか。 それぞれの未来が動き出す。 ◇前作のあらすじ◇ 主人公の水島白乃(みずしましの)は、高校三年生の時の担任の夏雄先生に恋をした。 卒業して再会した夏雄は別人のようだった。 夏雄の歪んだ愛、執着に翻弄される中、白乃はさらに夏雄に惹かれいく。 様々な困難を乗り越え、二人は結ばれた。

溺婚

明日葉
恋愛
 香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。  以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。  イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。 「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。  何がどうしてこうなった?  平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?

「好き」の距離

饕餮
恋愛
ずっと貴方に片思いしていた。ただ単に笑ってほしかっただけなのに……。 伯爵令嬢と公爵子息の、勘違いとすれ違い(微妙にすれ違ってない)の恋のお話。 以前、某サイトに載せていたものを大幅に改稿・加筆したお話です。

同期に恋して

美希みなみ
恋愛
近藤 千夏 27歳 STI株式会社 国内営業部事務  高遠 涼真 27歳 STI株式会社 国内営業部 同期入社の2人。 千夏はもう何年も同期の涼真に片思いをしている。しかし今の仲の良い同期の関係を壊せずにいて。 平凡な千夏と、いつも女の子に囲まれている涼真。 千夏は同期の関係を壊せるの? 「甘い罠に溺れたら」の登場人物が少しだけでてきます。全くストーリには影響がないのでこちらのお話だけでも読んで頂けるとうれしいです。

旦那様の愛が重い

おきょう
恋愛
マリーナの旦那様は愛情表現がはげしい。 毎朝毎晩「愛してる」と耳元でささやき、隣にいれば腰を抱き寄せてくる。 他人は大切にされていて羨ましいと言うけれど、マリーナには怖いばかり。 甘いばかりの言葉も、優しい視線も、どうにも嘘くさいと思ってしまう。 本心の分からない人の心を、一体どうやって信じればいいのだろう。

Promise Ring

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
浅井夕海、OL。 下請け会社の社長、多賀谷さんを社長室に案内する際、ふたりっきりのエレベーターで突然、うなじにキスされました。 若くして独立し、業績も上々。 しかも独身でイケメン、そんな多賀谷社長が地味で無表情な私なんか相手にするはずなくて。 なのに次きたとき、やっぱりふたりっきりのエレベーターで……。

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

処理中です...