ダイヤの首輪─先生の歪んだ愛に囚われて─

七転び八起き

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第七章

第76話

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 11月に入って、毎日がバタバタしていた。

 卒論の提出まであと二ヶ月。
 データをまとめながら、合間に研修資料に目を通す日々。
 今日も大学で卒論指導を受けた後、急いでカフェバイトに向かった。

「白乃ちゃん、お疲れ様」

 店長が心配そうに声をかけてくれる。

「最近忙しそうね」
「卒論と、教員の研修と……色々重なっちゃって」

 夕方の忙しい時間帯、レジを打ちながらぼんやりしていると、見覚えのある人が入ってきた。

 田中さんだった。

「こんにちは」
「あ、田中さん!」

 久しぶりに会えて嬉しかった。

「いつものブレンドコーヒーですね」
「ありがとう。白乃ちゃん疲れてない?」

 田中さんが心配そうに私を見ている。

「ちょっと忙しくて……でも大丈夫です」

 田中さんは いつもの席に座って、私を見守ってくれていた。
 バイトが終わる時間になって、田中さんがカウンターに来た。

「あの見学、どうだった?感想聞かせてもらえる?」
「えーと……」

 私は言葉に詰まった。
 あの日のことは、忙しさにまぎれて考えないようにしていた。
 でも、完全に忘れることはできなくて。

「複雑でした」
「そうよね」

 田中さんは優しく頷いた。

「ちょっと時間ある?お茶でも飲みながら話さない?」

 私は店長に挨拶をして、田中さんと近くの喫茶店に入った。

「先生になることに迷いが出た?」

 田中さんは核心を突いてきた。

「はい。先生が嫌いって言われて、ショックで」
「そうよね。でもね、白乃ちゃん」

 田中さんはゆっくりとコーヒーを飲んだ。

「もし興味があるなら、スクールカウンセラーという道もあるのよ」
「スクールカウンセラー?」
「学校にいながら、先生とは違う立場で子どもたちを支える仕事」

 田中さんは鞄から小さなパンフレットを出した。

「大学院で心理学を学んで、資格を取るの。私も昔はそうだった」

 パンフレットには、臨床心理士や公認心理師の説明が書かれていた。

「もちろん、今すぐ決める必要はないわ。ただ、こういう道もあるって知っておいてほしくて」

 田中さんの言葉は優しかったけど、頭がまとまらなかった。

「今は忙しくて、あまり考える余裕がなくて」
「そうよね。卒論大変でしょう?」

 田中さんは理解してくれた。

「このパンフレット、よかったら持って帰って。時間ができた時に読んでみて」

 私はパンフレットを受け取った。

「ありがとうございます」

 帰り道、パンフレットをカバンにしまった。
 今は考える余裕がない。

 卒論、研修、教員になる準備……。
 やることが山積みだった。

 でも、田中さんの言葉がずっと引っかかっている。

『学校にいながら、先生とは違う立場で子どもたちを支える』

 家に着いて、パンフレットを机の引き出しにしまった。
 今は見ないけど、いつか必要になる時が来るかもしれない。

 そんな予感がしていた。​​​​​​​​​​​​​​​​
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