夜明けの旋律─二人の繋いだ手の先に待ち受けるもの─

七転び八起き

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ギター

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 バイトが終わり、いつもならすぐに祖母の家に行ってピアノの練習をしているのだが……

 今俺は青柳さんとファミレスにいた。
 飄々としている青柳さん。
 三歳しかかわらないが、とても大人に見える。

 平日の夜のファミレスは人がまばらで落ち着いていた。
 案内された席に座った。

「俺おごるから、いぶきくん好きなものたのんでいいよ」

「いや、でも、それは……」

「俺が誘ったんだから気にしなくていいよ」

 悩んだ。
 そして悩んだ末に注文した。

 この人と何を話せばいいか全くわからない。
 初対面だし年上。

「いぶきくんは将来なりたいものはあるの?」

 突然聞かれて我に帰った。

「いえ、特には」

「趣味は?」
「ピアノ……ですね」

「へぇ。習ってるの?」
「はい。友達に教えてもらってます」

「え、女の子?」
「いえ、男です」
「男かー」

 青柳さんは残念そうにしている。

「仲良いの?」
「はい。今年の夏になるまでは全然知らなかったけど、あいつのピアノを聞いたら、いつの間にか弾くようになってました」

「あいつ、ねぇ」
 青柳さんは怪しげな笑みを浮かべる、

 店員が来て注文したメニューがきた。

「いただきます」
 青柳さんに頭を下げる。

「めしあがれ~」
 余裕のある大学生。

「青柳さんは、バンドで何演奏してるんですか?」

 ハンバーグを飲み込んだ後、青柳さんはこっちを見た。

「ん、ギター」

「ギターなんですね。ギター弾くの大変そうですね」

「ピアノも同じでしょ」

「でも弦があるじゃないですか」

「鍵盤か弦の違い。楽譜見ればある程度同じものを弾ける」

「そうなんですね……」

「ギター弾いてみる?」

「え」

「ギター2本あるから貸せるよ」

 ピアノしかわかってないから、ギターも少し気になった。
 でもさすがに借りるのは……。
 しかも弾き方が全くわからない。

「すみません、借りても使えないと思うので、やめときます」

「なら教えようか」

 淡々と話す青柳さん。
 いつの間にかギターを弾く流れに。

 でも俺はまだピアノを習ってる最中で、ギターまでとなると…。

「ギター楽しいよ。弾き方も音も違う。場所も取らない」

 青柳さんの誘いにだんだんと心が揺れて…

「じゃあ、少しやってみようかな…」
「よかった。じゃあ次会った日に、やってみよう」
「…はい」

 なぜだろう。
 唯川に後ろめたさを感じている。

 食べ終わった後、青柳さんが会計を済ませて、二人で店の外に出た。
 冷たい風で一気に目が覚める。

「いぶきくん、連絡先教えてくれる?」
 青柳さんがスマホを出した。

「はい」
 連絡先を交換した。

「あ、バイト以外の日でも、予定合ったらギター教えてあげるよ」
「え」

 なぜこんなにこの人は俺に近づいてくるんだろう。

 青柳さんのことはよくわからないけど、何も持たなかった俺に唯川はピアノを教えてくれて、今度は青柳さんがギターを教えてくれようとしている。

 両方とも音楽だ。

 ピアノは楽しい。

 ただ──

 唯川がしっかりと未来を見据えて歩いている姿を見ているのが辛かったかもしれない。
 特別じゃない俺は、青柳さんの気軽さと自由さの方が、気楽に感じられた。
 唯川に罪悪感を抱えつつも、ただこのまま前に進めないままの自分が嫌だった。

 青柳さんと別れた後、急いで家に帰った。
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