夜明けの旋律─二人の繋いだ手の先に待ち受けるもの─

七転び八起き

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新しい音2

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「まず持ち方から。こうやって」

 青柳さんが手本を見せる。
 くびれたボディを太ももに乗せて、体に密着させる。

「左手でネックを支えて、右手は──そう、その辺。力入れすぎないように」

 ピアノと違って、身体の使い方が全然わからない。
 緊張で肩が固まっているのを、青柳さんが笑いながら指摘した。

「ギターはね、体全体で音を感じるんだよ」

 ボディを軽く叩くと、ポン、と木の音が響いた。

「ほら、箱が鳴ってるでしょ。この振動が大事」

「なるほど……」
「左手はネックを押さえる手。親指は後ろ、人差し指から小指で弦を押さえる。こんなふうに」

 青柳さんの指が、俺の指を一本ずつ導いていく。

 唯川に指を直されたときの感覚が、一瞬、頭をよぎる。
 でも、違う。
 空気が軽い。距離が近いのに、息がしやすい。

「押さえてみて。最初は痛いけど慣れるから」

 言われた通りに押すと、指先が痛んだ。

「いたっ」
「あはは、みんなそうだよ。タコができるまではね」

 青柳さんが自分の指先を見せた。
 少し硬くなった皮膚。その小さな証が、なぜかかっこよく見えた。

「じゃあ、右手。親指で一番太い弦を弾いてみよう」

 真似してみる。
 ボン。鈍い音。

「いいね!音が出た!」
「ほんとですか?」
「うん、もっと強く」

 ボーン。音が広がった。

「そうそう!」

 青柳さんの声が明るい。
 その響きだけで、少し救われた気がした。

 ギターの構造、弦の順番、フレットの仕組み──
 丁寧に教えながら、青柳さんは笑っていた。

「ピアノやってるなら、覚え早いよ」

 そう言って、また俺の手を導く。

「Cコード。ドミソ、みたいなやつ」

 言われた通りに指を置いて、右手で弦を弾く。

 音が重なり、部屋がふわっと明るくなる。

「いいね、それがCコード」
「和音だ……」
「もう一回」

 褒められるたび、胸の奥が温かくなった。

「次、Gコード」

 また指を導かれ、弾く。
 さっきよりも深い音。

「これを交互に弾くだけで、もう曲になるんだよ」

 青柳さんが並んで弾き始める。
 俺の音に、青柳さんの音が重なった。

 二つの音が絡み合って、部屋を満たす。

 ピアノとも唯川とも違う。
 なのに、ちゃんと音楽だった。

 楽しい。

 でも──

 唯川だったら、この音をどう聴くだろう。

 その思考が、一瞬手を止めさせた。
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