夜明けの旋律─二人の繋いだ手の先に待ち受けるもの─

七転び八起き

文字の大きさ
29 / 50

終わらない音楽

しおりを挟む
会場がざわめいた。
ファンが嘆いている。

『メンバーで話し合って決めました』

衝撃的だった。

『──バンドは終わるけど、俺はこれからも音楽を続けます』

客席から、声が上がる。

ファンが泣いていて、それを見て青柳さんは少し笑った。

「じゃあ次の曲いきます──」

ギターを構える。

ゆっくりとした旋律が始まった。
聞いたことがある。

青柳さんの部屋で、聞いた曲だ。
あのラブソング。

その歌声は、大切な人に語りかけるようだった。

俺は、青柳さんのことを何も知らなかった。
ギターを教えてくれる、優しい人。
それだけだと思っていた。

でも、違った。
青柳さんは、ずっと音楽と一緒に生きてきた人だった。

最後の優しいアウトロが響き渡り、曲が終わる。

静寂の後、大きな拍手と歓声があがった。
青柳さんが、頭を下げた。

『じゃあ、次はクリスマスが近いから、クリスマスの曲』

次の曲が始まる。

それはよくクリスマスの時に街中や店で聞く曲だった。
歌詞は全部英語。
洋楽だ。

「ジョンレノンの曲だ。俺の好きな曲」

唯川が呟いた。
曲は知ってるがアーティストは知らなかった。
その曲がとても胸に響いた。

そして、次の曲で、青柳さんのバンド演奏は終わった。
メンバーでステージ前に並んで、観客にお辞儀をした。

大きな拍手と歓声。
俺も唯川も拍手をした。

青柳さんたちが、ステージを降りる。

「青柳さんって、凄い音楽好きなんだね」

唯川が言った。

「うん」

唯川にも伝わったんだ。

その後、ライブハウスを出た。

青柳さんにメッセージを送った。

『ライブ感動しました。色々また話したいです』

二人でそのまま暫く余韻に浸っていた。

「帰ろうか」
「うん」

駅に向かって歩く。
自然と手を繋いでいた。

「いぶき」
「ん?」
「また、一緒に音楽聴きに行きたい」
「うん。行こう」

駅に着く。
手が離れる。

「じゃあ」
「うん、また」

唯川が遠ざかる。
その後ろ姿をずっと見つめていた。

見えなくなった後、スマホに着信があった。
青柳さんからだった。

『今日は来てくれてありがとう。また話そうね』

青柳さんのライブでの姿を思い出す。

胸に熱いものが込み上げる。

自宅に向かって歩いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

放課後の旋律~君と僕の秘密の放課後~

七転び八起き
BL
高校生の柏木いぶきは、放課後に偶然聴いた美しいピアノの音に導かれ、音楽室で一人ピアノを弾く唯川悟史と出会う。「ピアノを習いたい」というまっすぐな言葉をきっかけに、悟史はいぶきにピアノを教え始める。 ピアノと悟史への憧れを抱くいぶき。過去に何かを抱え、人前で弾けなくなっていた悟史。週に二回のレッスンを重ねるうちに、二人の距離は少しずつ縮まっていく。 夏に響く二人の音。

雪色のラブレター

hamapito
BL
俺が遠くに行っても、圭は圭のまま、何も変わらないから。――それでよかった、のに。 そばにいられればいい。 想いは口にすることなく消えるはずだった。 高校卒業まであと三か月。 幼馴染である圭への気持ちを隠したまま、今日も変わらず隣を歩く翔。 そばにいられればいい。幼馴染のままでいい。 そう思っていたはずなのに、圭のひとことに抑えていた気持ちがこぼれてしまう。 翔は、圭の戸惑う声に、「忘れて」と逃げてしまい……。

【完】君に届かない声

未希かずは(Miki)
BL
 内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。  ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。 すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。 執着囲い込み☓健気。ハピエンです。

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

告白ごっこ

みなみ ゆうき
BL
ある事情から極力目立たず地味にひっそりと学園生活を送っていた瑠衣(るい)。 ある日偶然に自分をターゲットに告白という名の罰ゲームが行われることを知ってしまう。それを実行することになったのは学園の人気者で同級生の昴流(すばる)。 更に1ヶ月以内に昴流が瑠衣を口説き落とし好きだと言わせることが出来るかということを新しい賭けにしようとしている事に憤りを覚えた瑠衣は一計を案じ、自分の方から先に告白をし、その直後に全てを知っていると種明かしをすることで、早々に馬鹿げたゲームに決着をつけてやろうと考える。しかし、この告白が原因で事態は瑠衣の想定とは違った方向に動きだし……。 テンプレの罰ゲーム告白ものです。 表紙イラストは、かさしま様より描いていただきました! ムーンライトノベルズでも同時公開。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

守り守られ

ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師 患者 瀬咲朔 腸疾患・排泄障害・下肢不自由 看護師 ベテラン山添さん 準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん 木島 尚久 真幌の恋人同棲中

隣の席のイケメンに懐かれた

しょうがやき
BL
隣の席のイケメンに懐かれた平凡男子の話

処理中です...